Gatsby-8
このサイトは、英語で書かれた物語を一作品、最初から最後まで少しずつ読んでみようという試みです。
取り上げる作品は『The Great Gatsby』です。100年近く前に米国で出版された小説ですが、現代の日本人にも共感したり心を動かされるところが多々あると思います。
ぜひ一緒に、英語の原書を読んでみませんか。
(なお、このコンテンツはその著作者の解釈に基づくものであり、必ずしも正しいとは限らないことをご承知おきください。)
前回まで……「自分」の住むことになった西島の家の隣には、なんと!ギャッツビーの館がありました――それも壮大なお屋敷のようでした……。さて、いよいよ本題に入るようです……物語の核心?となるらしい「あの夏の出来事」が、ある人たちと会ったことをきっかけに始まるようです……いったいどんな人なのでしょうか?――今回はその辺りが詳しく説明されていくようです。さっそくみていきましょう。
原文はOne More Libraryの『The Great Gatsby』を使用します。
第8回の範囲は7ページ末尾から9行目から8ページ10行目まで(Her husband, among 〜から、irrecoverable football game.まで)をみていきます。
まず、今回の考えるヒントを上げます。
- 8ページ7行目の but I didn’t believe it とはどういうことを言っているのか
なお、特に断っていなければ、基本的に次に上げる辞書の訳語や定義・意味に基づいて説明します。
主に使用する辞書
『リーダーズ英和中辞典(第2版)』(野村恵造)(研究社 2017)
『Pocket Oxford English Dictionary (Eleventh Edition)』(Maurice Waite) (Oxford University Press 2013)
『岩波国語辞典(第七版新版)』(西尾実 岩淵悦太郎 水谷静夫)(岩波書店 2017)
それでは今回の範囲をみていきましょう。
① Her husband, among various physical accomplishments, had been one of the most powerful ends that ever played football at New Haven — a national figure in a way, one of those men who reach such an acute limited excellence at twenty-one that everything afterward savors of anti-climax.
「デイジーの夫(つまりトム)は、いろいろ身体能力の面で数多くの実績を残したのだけれど、その中でも特に際立っているのが、イェール大学でアメリカンフットボールの選手としてエンドというポジションを担った歴代選手のうち最強のエンド・プレーヤーの一人にまでなったことで――それがどれくらいすごかったかというと、アメフト選手という一面では全国区でその存在が知られるほどの人物にまでなったほどで、わずか二十一歳でそこまで一気に抜きん出た稀な結果を残したのでその後は何もかもが尻すぼみ気味となってしまうような数少ない人物の一人になっていた」
Her は前回の最後に出てきた Daisy を指します。親戚ということで、もしかしたらデイジーの方が「自分」には身近に感じられているのでしょうか?
that は the most powerful ends を指して言いかえています。
those はどんな men なのかを後で説明するというサインのようなものです。そしてその説明は who 以降に出てきます。この who は men を指しています。
such はどういう程度なのかを表しており、それほどの程度だから that 以下で説明するような事態につながっていったということを示しています。
twenty-one は(年代ではなく)年齢を表しているのではないでしょうか? 大学時代に残した実績が際立っていたようなので年齢的にも一致します。
トムはすごい成績を残した全国に知られるほど有名なアメフト選手のようです。若くして偉業?を成し遂げた後はどうも冴えないらしいですが……デイジーはそういう人と結婚したようです……。
② His family were enormously wealthy — even in college his freedom with money was a matter for reproach — but now he’d left Chicago and come East in a fashion that rather took your breath away: for instance he’d brought down a string of polo ponies from Lake Forest.
「トムの家(族)は途方もないスケールのお金持ちだった――すでに大学にいたときからトムが制限なく思いのままにお金を使う様が問題視されて非難の的になっていた――もともと家が金持ちで大学でも金遣いが荒くて派手だったと説明したので、その後もまあその程度の路線の延長線上だったと思ったら大間違いで、華々しい活躍で有名になった後、(大学も卒業し、そしてたぶんデイジーと結婚した後シカゴにいたはずで……なぜなら自分が終戦直後にシカゴにいたトムとデイジーの二人のところで一緒に過ごしたと言っていたので)、その後1922年の初夏の時点ではシカゴを離れて東部にやって来ていた……どんな風にやって来ていたかというと、これがその様を知った人が驚きのあまり息ができなくなるほど度肝を抜かれるような有り様で……その具体的な例を上げると、トムがシカゴからはるばる連れてきていたものがなんと、ポロ競技に使うポニーという小型の馬で、それも自身の厩舎で飼っていた馬全部を丸ごとそのまま、レークフォレストにあったものを移したような格好だった」
His は①で出てきた Her husband デイジーの夫、つまりトムを指します。次の his も同様です。次の he も、そして最後に出てくる he も同じです。
that は直前の a fashion を指して言いかえています。
your は読者の立場に立った気持ちで使われているようです……読んでいる人もきっと知ったら驚くよ…みたいな気持ちではないでしょうか?
余談ですが、「自分」は米国中西部の出身だと言っていましたが、もしかしたらトムはシカゴが地元?なのか、少なくともその近辺?つまり米国中西部の出身?かもしれないのでしょうか……。それならどうしてシカゴにいたのか、という疑問もすんなり解けるように思われます……。
トムはどんな家庭の出なのかが説明されています。そして現在のトムが経済的にどんな様子なのか、うかがわれるエピソードが披露されています。金持ちの息子で、エリート大学の超エリートスポーツ選手で、若くして(実家をはるかにしのぐほど?の)大金持ちになったようです……。そして、「自分」と同じように、(シカゴのある)米国中西部から東部に出てきている……。
③ It was hard to realize that a man in my own generation was wealthy enough to do that.
【One More Library の原書データでは小文字(it)で始まっていますが、Scribnerの書籍によれば大文字(It)が正しいようですので、訂正しておきます。】
「これから言うことは事実として受け入れるのが容易ではない……それはどんなことかというと、自分と同じ年代の男が前文で説明したようなスケールの大金持ちであると感じさせるようなお金の使い方が実際にできるほどの大金を持っているという事実だった」
It は後に出てくる that 以下の内容 a man in my own generation was wealthy enough to do that を指しています。
最初の that は「これから文が続く」ことを示しています。
最後の that は②に出ていた具体的なお金を使う有り様を、a fashion that rather took your breath away だったり、he’d brought down a string of polo ponies from Lake Forest を指しています。
あくまでもトムみたいなのは特殊で、自分と同年代の20代後半(〜30代前半も?)の男子はふつう、そんなことはできないと言っているようです……。そういういわば選ばれし特別な人と言ってもいいようなトムと、デイジーは結婚しているようです……。
④ Why they came East I don’t know.
「どうしてトムとデイジーの二人が東部に来たのか、自分は知らない」
they は前回の範囲に出てきた the Tom Buchanans つまりトムとデイジーの二人(の夫婦)を指しています。
第4回でみたように「自分」が東部に来た目的は、債券の仕事をするためでした。それではトムとデイジーの二人はどうして東部に来たのでしょうか?……自分にはわからないようです……。
⑤ They had spent a year in France for no particular reason, and then drifted here and there unrestfully wherever people played polo and were rich together.
「トムとデイジーの夫婦は一年間フランスで過ごしたようだったけれど、その理由は別に特別何もなかったようだった……そうやってフランスで一年間過ごした後は、あちらこちらをさまようように転々と移動していたようだったけれど、その様は落ち着きがなく(見ていて)疲れるような感じだったけれど、(そうした移動先にも)ただ一つだけ条件があって、それはポロ競技をやっている人がいて、なおかつその人たちがお金持ちであるという条件を満たしていることだった」
They は④の they と同じものを指します。
トムとデイジーの夫婦がフランスにいたことがあると言っています……東部に来る前なのは間違いないでしょうが、フランスに行ってそれから転々としてその後シカゴに住んでいた時期があるのか?それとも逆にシカゴに住んでいた時期があってその後にフランスに行ってそれからさらに転々としたのか?……その辺りはわからないようです……。いずれにしても、②でポロ競技の小馬の話が出ていましたが、お金持ちでポロ競技をやる人を求めて延々と際限なく旅を続けていた?のでしょうか……お金持ちの優雅な道場破り???
⑥ This was a permanent move, said Daisy over the telephone, but I didn’t believe it — I had no sight into Daisy’s heart, but I felt that Tom would drift on forever seeking, a little wistfully, for the dramatic turbulence of some irrecoverable football game.
「前文で説明したようにひとところに落ち着くことなくポロ競技をやるお金持ちを探し求めてあちらこちらをさまようように転々と移動するというトムとデイジーのいわば生活スタイルというものは、いつ終わるとも知れない移動の連続なのだとデイジーが電話(の向こうで)言っていた……デイジーのその言葉を素直に受けとめるかというと…そうではなく、自分はデイジーの"いつ終わるとも知れない移動の連続なのだ"という説明を信じていなかった――自分にはデイジーの心の中は見えなかった……それならばわかるはずもないだろうと思われるだろうけれど、実は違って、自分にはこうではないかと感じられることがあったのだけど、それはトムがこれからもこのままずっと今と同じような調子で変わることなくさまよい続けるだろうと、そしてトムがもう多分ないのだろうなと半分諦めの気持ちが混じったような思いにさいなまれながらもやっぱり恋しくてやめられずに探し求め続けるのだろうと、何を探し求め続けるのかというと、漠然としていながらも同時に大切なものであったもう二度と取り戻せないアメフトの試合でしか実現しない怒涛の展開やひっちゃかめっちゃかの乱闘などだ」
This は⑤の後半部分 and then drifted here and there unrestfully wherever people played polo and were rich together を指します。
今回の考えるヒントに上げた箇所 but I didn’t believe it が出てきました。
it は This was a permanent move を指します。「こんな旅暮らし?みたいな生活を(トムとデイジーは)ずーっと続けるの」とデイジーは「自分」に対して説明したようです。それに対して自分は電話越しに聞かされたデイジーのそういう説明を真に受けなかった……と言っているのではないでしょうか?
that は「これから文が続く」ことを示しています。
some は「漠然としたもの」であることを表すと同時に、「大切な、重要なもの」であることも表しているのではないでしょうか? どのアメフトの試合か特定はできないのだけど、と同時におそらくトムにとってはどのアメフトの試合も大切なものだったのではないでしょうか?
⑤で説明したように転々とさまようように続けていた旅暮らし?をデイジーは permanent いつ終わるとも知れないのだ、と説明していました。どうして、どんな思いでデイジーがそんなことを言ったのか、「自分」には何も見当がつかなかったようです……ですが、トムがそうやってさまよい続ける理由には、思い当たることがあったようです……それが、きっとトムの人生最高の絶頂期と言ってもいい時代である大学時代のアメフト選手だった頃のことのようです……。①でアメフト選手として偉業を成し遂げた後は冴えないらしい…と言っていましたから、トムにしてみれば自身が一番輝いていた?時期を恋しく思い、できることならまたあのときのような達成感や満足感?を味わいたいと思うのは当然かもしれません……。
ところで、トムについてはいろんな話が出てきましたけど、デイジーの方はあまり……。夫に合わせる生活というか人生?…夫唱婦随?ということなのでしょうか?
おつかれさまでした。
前回の最後に出てきていたトムとデイジー夫妻、その主に夫のトムの方についていろいろ書かれていました。お金持ちの息子が(もちろん努力もしたのでしょう)有名なスポーツ選手になって(自分の力で)大金持ちになって、財産はあるけれど今はあまり冴えない感じで、もしかしたら心には何か空虚なものでも?抱えているかもしれない……今やっているポロ競技で対戦相手を求めてあちこち渡り歩いているのはそんな思いのせい?……そういう男と結婚して、そういう男の心のままに慌ただしく転々と旅を続けるような生活に黙って?従っているらしい女……の姿が見えてきたでしょうか?……
今回の考えるヒントに上げたお題 「8ページ7行目の but I didn’t believe it とはどういうことを言っているのか」 ですが……⑥で説明したとおりです。デイジーが何を考えているのかわからない、と「自分」がお手上げみたいな状態で他には何も情報がないので、デイジーがどんな人物なのか、それも手がかりが少なすぎてまだよくわかりません。
さあ、次回はいよいよ「自分」がトムとデイジー夫妻宅を訪れて二人に再会します。どんな様子なのでしょうか? そしてお金だけはたっぷりあり余るほど?持っているらしいトムが妻のデイジーと住んでいる家は?いったいどんな豪邸?なのでしょうか……。そのあたりを見ていきたいと思います。ぜひまた一緒に読んでみてください。
第9回の範囲は8ページ11行目から8ページ末尾から9行目まで(And so it happened 〜から、enormous leverage — a cruel body.まで)をみていきます。
次回の考えるヒントは……
- 8ページ末尾から10行目(の最後)-9行目にかけて It was a body capable of enormous leverage — a cruel body. とはどういうことを言っているのか
次回も夫妻宅や人物の描写が続きます……だから、読むのが面倒だったりしんどいところもあるかもしれません……が、短めの文もけっこう出てきますし、ぜひ一緒にみていってください。
最後に、物語を読むときに心にとめたいポイントをまとめます。
・どうして作者はその言葉を使用したのか
・それぞれの登場人物に作者はどんな役割を割り当てているのか
・それぞれの登場人物のセリフや物語の展開を通じて作者は何を言おうとしているのか
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なお、今回の範囲の訳文を有料(700円)で掲載いたします。この連載はだいたい250回くらいになる予定なので、毎回訳文を購読いただいた場合には30回で2万円を超え、トータルでは18万円近くになることをご承知おきください。またいかなる場合も返金には応じられません。また購読いただいた訳文にご満足いただけるとは限らないことをあらかじめご承知おきください。なお、問い合わせなどはご遠慮ください。お断りいたします。