Gatsby-23

このサイトは、英語で書かれた物語を一作品、最初から最後まで少しずつ読んでみようという試みです。

取り上げる作品は『The Great Gatsby』です。100年近く前に米国で出版された小説ですが、現代の日本人にも共感したり心を動かされるところが多々あると思います。

ぜひ一緒に、英語の原書を読んでみませんか。

(なお、このコンテンツはその著作者の解釈に基づくものであり、必ずしも正しいとは限らないことをご承知おきください。)

 

前回まで……たった一本の電話で、なんの話もできなくなってしまった晩――デイジーを怒らせたトムはすごすごと?引き下がり?ベイカー嬢の監視下で?「自分」を味方につけることも失敗に終わり?……一方、デイジーに同情した?らしい「自分」は、デイジーのフォローにまわり、完璧な?なぐさめ役を務めている?ようです……そんな「自分」の優しさに心がとけたデイジーが本音を?どうも話す?ようです……さっそくみていきましょう。

 

原文はOne More Libraryの『The Great Gatsby』を使用します。

第23回の範囲は16ページ1行目から16ページ末尾から19行目まで("We don’t know 〜から、a beautiful little fool."まで)をみていきます。

まず、今回の考えるヒントを上げます。

  • 16ページ末尾から21-19行目 And I hope she’ll be a fool — that’s the best thing a girl can be in this world, a beautiful little fool. とはどういうことを言っているのか

 

なお、特に断っていなければ、基本的に次に上げる辞書の訳語や定義・意味に基づいて説明します。

主に使用する辞書

『リーダーズ英和中辞典(第2版)』(野村恵造)(研究社 2017)

『Pocket Oxford English Dictionary (Eleventh Edition)』(Maurice Waite) (Oxford University Press 2013)

『岩波国語辞典(第七版新版)』(西尾実 岩淵悦太郎 水谷静夫)(岩波書店 2017)

 

それでは今回の範囲をみていきましょう。

① “We don’t know each other very well, Nick," she said suddenly. “Even if we are cousins. You didn’t come to my wedding."

「『デイジーと「自分」(ニック)は知らない……お互いを……あまりよくは……(そうでしょ)ニック』とデイジーが言った……そうやって言い出したのはいきなりだった……『たとえデイジーと自分が親戚(の間柄)であっても(お互いに相手のことをあまりよく知っているわけではない)。「自分」(ニック)は来なかった……デイジーの結婚式に……』」

前回の最後は、デイジーと「自分」が二人で正面玄関ポーチのベンチに並んで腰を下ろした場面で終わっていました。ですから、このセリフはおそらく、Nick と呼びかけていることからも、デイジーのセリフと思われます。そうすると……

We はすべて、デイジーと「自分」を指すのではないでしょうか?

she は、デイジーを指すのではないでしょうか?

You は、デイジーが話している相手ですから、「自分」を指すのではないでしょうか?

my は、デイジーを指すのではないでしょうか?

前回の最後に、「自分」はデイジーを気づかってデイジーの幼い娘の話を持ち出したようでした……で、「自分」がデイジーの幼い娘のことをいろいろ尋ねたのに対して、デイジーがいちいち律儀に応えたかどうかはわかりませんが、もしかしたら、「自分」の質問に答えるよりも、デイジー自身が言いたいことをしゃべっていた?かもしれません……それが、この①のセリフに?よく表れている?かもしれません……まあ、もともとマイペースなところはトムといっしょ?で前々からうかがわれていたようでしたから……で、デイジーは何を思ったのか、「自分」に向かって、親戚なのに親しくないよね、お互いのこと知らないもんね、結婚式にも来てなかったでしょ、みたいなことを言ったようです……なんでしょうねえ……「自分」に対する不満?も見える?……。

 

② “I wasn’t back from the war."

「『「自分」は戻っていなかった……戦争(第一次大戦)から……』」

①でデイジーから投げかけられた言葉に対して「自分」が応えているセリフなので、I は「自分」を指すのではないでしょうか?

the war は、おそらく第7回の最後(7ページ末尾から11行目)に出てきた the war と同じものを指すのではないでしょうか? ということは、第4回(5ページ末尾から11行目)で「自分」が説明していた the Great War を指すのではないでしょうか?

①でデイジーに結婚式に来てくれなかったと、責められた?ようにも聞こえる言葉を投げかけられて、②で「自分」は、そりゃ戦地にいたから無理だと、答えたようです……ただ、戦後戻ってきたときには、「自分」は故郷に戻る途中でシカゴに立ち寄り、新婚の?デイジーとトムの家に滞在したようでした……だから、責められる筋合いはないような……やっぱり「自分」は行き届いている?いつでもどこでも誠心誠意、まことを尽くしている?……。

 

③ “That’s true." She hesitated. “Well, I’ve had a very bad time, Nick, and I’m pretty cynical about everything."

「『デイジーの結婚式に来なかったのは「自分」が戦争から戻ってきていなかったからだというのは、そのとおりだ』(そう言った)デイジーが口ごもった。『えーっと、あのう、私はとても嫌な時期を過ごしている、(どうかわかってほしい)ニック……そうやってとても嫌な時期を過ごしているから、私はかなり疑い深くなっている……何もかもに関して……』」

That は、①でデイジーが You didn’t come to my wedding. と言ったのに対して、②で「自分」が I wasn’t back from the war. と答えた、一連のその内容を指しているのではないでしょうか?

She は①で口を開いた she と同じで、デイジーを指すのではないでしょうか?

I はどちらも、デイジーのセリフなので、デイジーを指すのではないでしょうか?

①で何を思ったのか、デイジーは「自分」に対して、デイジーの結婚式に来てくれなかった、どうしてよ、と責めるような?気持ちになったようでした……で、②で、「自分」がまっとうな答えを返したのに対して、そうだった、そのとおりだ、疑ったりして悪かった、ごめんなさい…みたいな気持ちで、③の最初のセリフが出てきた?のではないでしょうか……で、まあ、①で「自分」に対して投げかけた言葉は、普通に考えれば、「自分」に対して失礼だろうと、デイジー自身も気づいた?というより、そもそもわかっていながら、何やら屈折した思いでがんじがらめにでも?なっているのか?①のような言葉を言わずにいられなかった?のか……とにかく、もう言ってしまったわけで、②の「自分」の答えに申し訳ないような気持ちにさせられた?のではないでしょうか……それで、どう切り出すというか、口を開くというか、デイジーの複雑な心中――本音(泣き崩れたい?)と建前(毅然きぜんとしなきゃ?)で引き裂かれるような思い?――でぐるぐるといろんな思いが巡って葛藤かっとうする中?どう話したものやら…と迷った?のでしょうか……で、口ごもってしまった?ようです……が、ようやく?口を開き、言い訳がましく?デイジーの現在の境遇を遠回しに言葉にして説明し、そんな境遇にあるから何も信じられないような心境にまでなっているのだと、「自分」の理解を、どうか許してほしいと、そしてわかってほしいと、「自分」に求めている?のではないでしょうか?……要は、①で「自分」に八つ当たりした?上に、③で「自分」に甘えている?助けてほしい?なぐさめてほしい?と「自分」をあてにしている?という見方も?できるかもしれません……勝手といえば勝手ですが、デイジーの立場・境遇に立ったら、どうでしょうか?……そうせずにはいられない弱さが際立ってくる?かもしれません……。

 

④ Evidently she had reason to be.

「疑いなくデイジーが、何もかもに関してかなり疑い深くなる理由があった」

she は、①③と同じく、デイジーを指すのではないでしょうか?

to be の後には、③の最後にあった、pretty cynical about everything が省略されているのではないでしょうか?

③のデイジーの言い訳?に対して、④で「自分」がそのとおりだろうね、と理解を示しているようです……デイジーが疑い深くなっても当然だと……どうしてでしょうか?……そりゃ、トムに女が、夫が浮気をしていれば、何もかも疑心暗鬼になっても不思議ではないだろう……そういうことじゃないでしょうか?……。

 

⑤ I waited but she didn’t say any more, and after a moment I returned rather feebly to the subject of her daughter.

「自分は(そのまま何も言わずに)待った……自分がそうやってそのまま何も言わずに待っていたから、普通に考えたらデイジーが③の続きを何か口にしそうなものだけれど、実際にはそうはならなくて、デイジーは③の言葉の他には何もそれ以上言わなかった……そうやって、自分がデイジーが話すだろうと思って待っていてもデイジーが何も話さなかったので、少し時間が経ったところで、自分は前の話題に戻った……(押し付けがましくなったりしないように)かなりさりげなく……デイジーの娘の話題に……」

she は、①③④と同じく、デイジーを指すのではないでしょうか? her も同様ではないでしょうか?

③のデイジーの言葉に④で理解を示した「自分」は、そのまま⑤でじーっとまたデイジーが話し出すのを待ったようです……なんでも話したいことを話させてあげよう、聞いてあげよう……そう思ったのでしょうか?……やっぱり、a perfect rose?……ところが、案に反して、いつまでたってもデイジーは口を開かない……困ったな…どうしよう…こっちからしゃべってみるか…どうするかな…さっきいた幼い娘さんの話、また訊いてみるかな…それなら差しさわりないよな…いいよな…そんなことを?思いながら、おそるおそる「自分」は口を開いてみた?のでしょうか……デイジーの様子をうかがいながら?……。

 

⑥ “I suppose she talks, and — eats, and everything."

「『「自分」が想像するのに、デイジーの娘さんはしゃべったり、……(沈黙)……(食べさせてもらわなくても)食べたり、(そういう日常の生活を)何でもするのだろう(ね)……』」

⑤の最後に、「自分」が前の話題に戻ったと言っていたので、⑥は「自分」のセリフと推測されます。ですから、I は「自分」を指すと思われます。

she は、⑤で returned to the subject of her daughter と言っていたので、her daughter つまりデイジーの娘を指しているのではないでしょうか?

⑤で最後に説明していたとおり、「自分」はデイジーの娘の話を⑥で持ち出したようです……第13回(10ページ末尾から4行目)で三歳だとデイジーが説明していたので、「自分」は、三歳って小さいけど、一人前にけっこうしゃべれたり、小さいなりに日常の基本的なこととかするんだろうね…と、デイジーの幼い娘の話をデイジーにふったようです……「自分」の精いっぱいの誠を込めて?……春に米国東部に出てきて、まだ二か月弱?…その間、「自分」がやろうとする債券を扱う仕事に必要な勉強で頭がいっぱい?だったりしていなかったでしょうか?……新天地に新生活、新たな出会いに新たな人間関係……「自分」だっていろいろ手一杯?だったに違いないはず?ですが、そうした中で、「自分」なりにデイジーに寄り添おうと精いっぱい、真心を尽くしている?ように思われませんか?……もう、これからは「自分」(Nick)は、(a) perfect rose と呼んだ方がよくないでしょうか?……素敵すぎませんか?……。

 

⑦ “Oh, yes." She looked at me absently. “Listen, Nick; let me tell you what I said when she was born. Would you like to hear?"

「『ああ、そのとおり』(と言った)デイジーが「自分」に目を向けた……その様子はぼんやりとしていた。『聞いて、ニック……私に伝えさせてほしい……あなたに……何をかというと、私が言ったことを……いつ言ったことかというと、デイジーの娘が生まれたときに言ったことで……あなたに聞く気持ちがあるか(あなたに聞いてもらえるか)?……』」

⑥の問いかけに対して、デイジーが応じたセリフではないでしょうか? ですから、最初の She はデイジーを指すのではないでしょうか?

次に、セリフの中の me は、デイジーが話していると思われるセリフなので、デイジーを指しているのではないでしょうか?

you は(すべて)、デイジーが話している相手なので、「自分」を指しているのではないでしょうか?

I は、デイジーのセリフなので、デイジーを指しているのではないでしょうか?

she は、⑥で「自分」が話題に出した she つまりデイジーの娘を指しているのではないでしょうか?

⑥の「自分」の問いかけに対して、さらっと?そっけなく?デイジーは応じた?ようです……というより、話しかけられて、目線を「自分」に向けはしたけれど、ぼんやりした様子だったようなので、そもそも、もしかしたら無意識に口にしてしまっているだけ?という可能性も?あるでしょうか……⑤で「自分」は③の続きを何かデイジーが話すものと待っていたけど、デイジーが何も話さなかったと言っていました……デイジーは何も話さなかったとき、いったい何をしていたのでしょう?というより、何を思っていたのでしょうか?……デイジーの頭?心?の中でぐるぐるとめまぐるしく?いろんな思いが湧いては溜まり?沸いては積もり?していき、それらを整理したりまとめたりする余裕などあるはずもなく?ますます頭の中も心の中もぐちゃぐちゃに?なる一方?……そんなとりとめのない思いに引きずられて振り回されてあれやこれやと思いを巡らし考え込んでいた?かもしれない?……そこへ、⑥で「自分」に声をかけられて、⑦でおざなりな返答になってしまった?……だから、声をかけられたから、声をかけた「自分」の方に目線を向けはしていたけれど、心は「自分」の方に向いていはいなかった?から、ぼんやりとした様子だった?のでしょうか……そして、「自分」に声をかけられたことで、デイジーのそばには、今話を聞いてくれそうな「自分」がいることに気がついた?……それで、思い切って話してみようかと、デイジーの頭や心のなかで一番引っかかっている?こと、誰かに聞いてもらって、共感してもらいたい?なぐさめてもらいたい?助けてもらいたい?どうにかしたい?ことを、話してみようかと、(大げさな言い方ですが)意を決した?かもしれない?……で、次に出てきた言葉が、わざわざ、聞いてほしいことがあると、Nick と名前まで呼びかけて、切り出しているようです……さあ、デイジーが何よりも聞いてほしいと思っていることとは?――デイジーの娘が生まれたときにデイジー自身が言った言葉のようです……ほ〜……何と言ったのでしょう?……と、その前に、聞いてもらえるかと、「自分」に許しを得ている?ようです……見方によっては、「自分」にデイジーの救いになってくれるか?と、「自分」に甘えさせてもらってもいいか?と、頼りにしてもいいか?と、尋ねているようにも?見えるでしょうか
……こういう状況で断られるとか拒否されるとか、そういう展開は想定しづらい、ということをわかった上で、デイジーも最後の言葉を口にしているのでしょうけれど――いわば社交辞令に近いようなもの?……それでも、まあ一応ひと言断っていると……(この辺は、トムとは全然違いますね……ひとつには、世間の人付き合いとか社交とかの常識?みたいなものをデイジーは心得ている?ということでしょうか……当然相手の印象も全然変わってくるでしょうし……)……。

 

⑧ “Very much."

「『(「自分」に聞く気持ちが)とても大いにある(ぜひ聞かせてほしい)』」

I would like to hear (very much) となるところを、簡略化して、ごく軽く、デイジーに負担にならないように気づかって? 大いに聞きたいね、と「自分」が応じているのではないでしょうか?

⑦の最後の問いかけに対する答えのようです……この返答も、a perfect rose じゃないでしょうか?……素敵すぎませんか?……そして、デイジーも心の中で手を合わせて感謝している?かもしれない?……。

 

⑨ “It’ll show you how I’ve gotten to feel about — things. Well, she was less than an hour old and Tom was God knows where. I woke up out of the ether with an utterly abandoned feeling, and asked the nurse right away if it was a boy or a girl.

「『デイジーの娘が生まれたときにデイジーが口にした言葉は、(きっと)あなたに示すはずだ……どんなふうに私が(以前とは)変わって感じるようになったのかを――いろんな物事に関して……えーっと、あのう、デイジーの娘が、年齢が一時間未満のときで(生まれてから一時間以内で)、その間にトムがどうしていたか、どこにいたかというと、誰も知らない(神のみぞ知る)状態だった……私は目を覚まして麻酔薬が切れた状態になって、完全に見捨てられた気持ちでいた……その後、すぐに看護婦に尋ねた……生まれた赤ん坊が男かそれとも女かと……」

It は、⑦で出てきた what I said when she was born を指すのではないでしょうか?

you は、デイジーのセリフで話している相手を指すので、「自分」を指すのではないでしょうか?

I は(すべて)、デイジーのセリフですから、デイジーを指すのではないでしょうか?

she は、⑥で「自分」が話題に出したデイジーの娘を指すのではないでしょうか?

it は、デイジーが産んだ赤ん坊を指すのではないでしょうか? どうも麻酔をかけて出産した?のでしょうか……麻酔薬が切れて目を覚まして、デイジーは自身が産んだ赤ん坊が男か女か誰かに聞かなければわからなかったようです…… 男なら he、女なら she、のはずですが、どちらかわからない(し、生まれたばかりだから)it が使われている?のではないでしょうか……。

right away という表現がわざわざ使われているのは、もしかしたら、asked the nurse if it was a boy or a girl という行為がデイジーにとって何よりも大切?気になる?確かめたいこと?だと読者に伝えるため?ではないでしょうか?……普通に考えて、まあ誰でも(女性は)、生まれてきた子どもが男女どちらか気になって当然で、誰でもまず一番に尋ねることだろうとは思いますが、ここでは、もしかしたら、ごく普通のケースとは異なる、何か特別な含みとか意味合いとかが込められている?かもしれない?……。

⑦でデイジーが聞いてほしいと伝えた言葉――それはデイジーの娘が生まれたときにデイジーが口にした言葉のようでした……その言葉が明かされる……かと思いきや、いきなりズバリ明かすわけではないようです……まずは、その言葉を口にした状況説明から始めるようです……デイジーの出産、それも初めての……普通なら、誰か家族が?付き添うもの?……ところが、トムがいなかったようです……デイジーが赤ん坊を産んでから一時間ほど……それで、デイジーは目を覚ましたとき、当然誰よりも?トムにいてほしいのに、いてくれないから、まるでトムに見捨てられたような気持ちになったようです……おそらく他に誰も話す人がいなかったのでは?ないでしょうか……仕方なく担当の?看護師に話しかけたようです……デイジーの産んだ赤ん坊は、男かそれとも女か、と……それにしても、トム(の馬鹿野郎?)いったいどこで何をしていたのでしょう?……このデイジーの口ぶりでは、真っ当な理由があって、デイジーの出産に立ち会わなかったようではない?ように聞こえませんか?……まあ、ポロ競技ばかりやって放浪してるだけで、他に大したことやってなさそう?だし、妻の初めての出産ぐらい立ち会ったら?みたいなこと、普通の人なら誰でも?考えそう?にも思えますが……なにしろ誰よりも"俺様が一番偉い"何でも思うがままのトムですから、理由があろうがなかろうが、俺様がやりたくないことはやらない……ただそれだけでしょうか?……なんだか、比較になりませんけど、a perfect rose の「自分」に比べたら、トムって完全にクズのダメ男?としか思えなくもないような……行けたはずなのに?妻の初めての出産にも立ち会わず、今は妻以外の女がいる、と……どうなんでしょう?人として?男として?……デイジーが荒れるのも当然?……さて、デイジーの娘が生まれたとき、デイジーはどんな言葉を口にしたのでしょうか?……。

 

⑩ She told me it was a girl, and so I turned my head away and wept. 'All right,’ I said, 'I’m glad it’s a girl. And I hope she’ll be a fool — that’s the best thing a girl can be in this world, a beautiful little fool.’

【One More Library の原文データでは、’all right,’ と小文字で始まっていますが、Scribner の書籍によれば、’All right,’ と大文字で始まるのが正しいようですので、訂正しておきます。また、最後の a beautiful little fool." (ダブルクオテーション)が、Scribner の書籍によれば、 a beautiful little fool.’ とシングルクオテーションになるのが正しいようですので、訂正しておきます。】

「デイジーが産んだ赤ん坊は男かそれとも女かと尋ねた看護師は、私に教えてくれた……デイジーが産んだ赤ん坊は女の子だと……そうやって看護師からデイジーの産んだ赤ん坊が女の子だと聞かされて、看護師に尋ねた答えが(男の子ではなく)女の子だったから、私は私の頭の向きを変えて看護師を遠ざけるようにし、それから泣いた。『けっこう』と私は言った……『私は嬉しい……私の産んだ赤ん坊が女の子で……私は赤ん坊が女の子で嬉しいと喜んだ上で、こうあってほしいと思うことがあるのだけど……それは私の産んだ女の子の赤ん坊が将来バカな娘(女性)になることだ――バカな娘(女性)が、最も好ましい人の姿だ……女の子がこの世でなりうるものでは……美しいきれいなかわいい愛らしいバカな娘(女性)に(なってほしい)……』」

⑩は、⑨でデイジーが話しだしたセリフの続きです。

冒頭の She は、⑨の最後でデイジーが尋ねた相手の看護師を指すのではないでしょうか?

me は、デイジーのセリフですから、デイジーを指すのではないでしょうか? I や他の me も同様ではないでしょうか?

it は(すべて)、⑨の最後で出てきた it と同じで、デイジーの産んだ赤ん坊を指すのではないでしょうか?

さて、今回の考えるヒントに上げた箇所が出てきました。(が、その前に……)

最後の she は、直近の it’s a girl、デイジーの産んだ赤ん坊を指すのではないでしょうか?

that は、直前の a fool を指すのではないでしょうか?

そして this は、デイジーも含めてすべての人の身近にある世界、つまりこの世を指す意味で使われているのではないでしょうか?

デイジーの産んだ赤ん坊は男かそれとも女かと尋ねたら、看護師の答えは女の子だったと……それで、デイジーは、おそらく看護師の方に向けていた顔を、看護師の顔が見えない方向に向きを変えて、看護師に見えないように?泣いた?ようです……赤ん坊が女の子だったから、泣いた……どうもそういうことではないでしょうか?……ということは、デイジーは赤ん坊が女の子であってほしくなかった?ということでしょうか……しかも泣くほどに……そこまでするほど赤ん坊の性別が重要な問題?だった……(だから、⑨で right away という表現が使われていた?……)……でも、どうして?……とにかく、女の子に生まれてきたものは仕方がない、だったら、それはそれで、そういう前提でやっていく?応じていく?しかない……という思いが All right という言葉に?なった?……もう、半ばやけくそ?……だとすると、I’m glad という言葉を額面通りには受け止められない?……むしろ本心は真逆?……ああそうかい、そうですか、それならそれでやってやろうじゃないか…みたいなけんか腰?……じゃあ、女子に生まれてきたものはもう致し方ないので、デイジーはどう対処していこうというのでしょうか?……

女子なら女子でかまわないわよ、ただの女子にならなきゃいいんだから、バカな娘(女性)になればいいんだから――そうよ、バカな娘(女性)が、この世で女の子がなりうる最も好ましい人の姿だわ、それも、ただのバカな娘(女性)ではなくて、美しいきれいなかわいい愛らしいバカな娘(女性)になればいいんだわ……と、デイジーは言ったそうです……デイジーの娘が生まれたときに……デイジーが娘を産んで麻酔が切れて目を覚ましたらトムがそばにいなくて一人で担当の看護師さんに赤ん坊が男か女か尋ねたら女の子だという答えが返ってきたときに……。この言葉からわかることは、まず、とにかくデイジーが女子であること、女性であることをどうも全否定?しているようだということでしょうか……次に、女子、女性として生きざるをえないのであれば、じゃあ、バカがいいと……バカな女子が一番だと……そう言っているようです……裏を返せば、バカじゃなかったら女子じゃないほうがいいと……バカじゃないということは、何かはわかりませんけれど、いろんな物事がわかる?ということでしょうか……でも、バカだったらわからない?……どうもそういう理屈?のようです……ただし、ただのバカではありません……美しいきれいなかわいい愛らしいバカです……ということは、容姿端麗?……でも、才色兼備は要らない?……というのが、デイジーの考えのようです……見方を変えれば、デイジーはバカじゃない?……少なくとも、デイジー自身は自らがバカではないと思っている?のではないでしょうか?……それは、デイジーがわからなければよかったと思う物事をわかっている?からでしょうか?……バカ=わからない=幸せ……バカじゃない=わかる=不幸せ……どうもデイジーはそう思っているらしい?……デイジーは、今、幸せでしょうか?それとも不幸せでしょうか?……デイジーは、いったい何をわからなければよかったと思っているのでしょうか?……デイジーは、いったい何をわかってしまった?のでしょうか……たぶん、今のデイジーにとって一番の問題は――夫のトムの浮気?ではないでしょうか?……ということは?夫の浮気がわからなければよかった?と思っている?のでしょうか?……そして、娘が生まれたときに、娘の幸せを思って、母親のように不幸にはなってほしくないと、思ったからこそ、デイジーの出した結論は、バカな娘(女性)になってほしい、そうすれば不幸にはならないはずだから……そう考えた?のではないでしょうか?……で、ただのバカじゃなくて、美しいきれいなかわいい愛らしいバカになってほしいというのは、たぶん女子は容姿に恵まれている方が幸せになれると、デイジーが思ったからではないでしょうか?……デイジーなりに、どこまでも娘のことを想っている……それにしてもトムの馬鹿たれ?が、デイジーにこんな思いまでさせて、ふざけるなよ……などと思われた読者の方がいらっしゃるかも?……。

 

おつかれさまでした。どうでしたか?

そもそも、現在進行中のトムの浮気にとどまらず、すでに三年前の出産のときから、デイジーはトムに泣かされていた?……"俺様が一番偉い""自己中(心)"のトムならさもありなん?……ところで、⑧で、ぜひ聞かせてほしいと答えてから「自分」は、ひと言も口をはさまずに、ただ黙ってデイジーの話を聞いてやっているようです……デイジーの話を聞きながら、どんなことを思ったのでしょうねえ?……三年前の出産のときにも何かあったんだな……トムってそういうところがある?そういう奴?なんだな……そうなのか……デイジーはつらい思いをしたんだな……などと思ったかどうかはわかりませんが……a perfect rose なら、どんな話でも安心して聞いてもらえる?のかもしれませんねえ……。

今回の考えるヒントに上げたお題 「16ページ末尾から21-19行目 And I hope she’ll be a fool — that’s the best thing a girl can be in this world, a beautiful little fool. とはどういうことを言っているのか」 ですが……⑩で説明したとおりです。デイジーもずいぶんと極端?一人でもんもんと抱え込んで行き詰まっている?……でも、そこまでつらいからこそ、ベイカー嬢がほとんどつきっきり?でデイジーの力になっている?のでしょうか……トムみたいなどうしようもないのは、ベイカー嬢ぐらいでないと太刀打ちできない?(事実、第14回では、トムの方がベイカー嬢にしてやられて?カリカリきていた?ようでした……)……でもそれも、対症療法的というか、根本的な解決にはなっていない?ようです……。

さて、次回もまだ、デイジーの話が続くようです……ぜひ一緒にみていってください。

 

第24回の範囲は16ページ末尾から18行目から16ページ末尾から5行目まで("You see I think 〜から、she and Tom belonged.まで)をみていきます。

次回の考えるヒントは……

  • 16ページ末尾から13行目 “Sophisticated — God, I’m sophisticated!" とはどういうことを言っているのか

次回は、じーっと、黙ってデイジーの話を聞いていたら……なんだか様子がおかしい?――これだから打ち明け話ってのは当てにならない?うんざりだ?と「自分」が思ってしまうようなことが起こる?……ぜひまた一緒に読んでみてください。

 

最後に、物語を読むときに心にとめたいポイントをまとめます。

Point

・どうして作者はその言葉を使用したのか

・それぞれの登場人物に作者はどんな役割を割り当てているのか

・それぞれの登場人物のセリフや物語の展開を通じて作者は何を言おうとしているのか

 

注意!

このコンテンツはこのサイトでのみ公開いたします。

このコンテンツの著作権はすべて著作者が保有いたします。

このコンテンツは閲覧えつらん以外の利用をすべて禁止いたします。

 

【お願い】

このコンテンツは無料で閲覧いただけますが、このページ末尾にある"お心付け"ボタンからぜひお心付けをいただけませんでしょうか。100円からお願いしております。ご検討いただけましたらありがたく存じます。

 

なお、今回の範囲の訳文を有料(700円)で掲載いたします。この連載はだいたい250回くらいになる予定なので、毎回訳文を購読いただいた場合には30回で2万円を超え、トータルでは18万円近くになることをご承知おきください。またいかなる場合も返金には応じられません。また購読いただいた訳文にご満足いただけるとは限らないことをあらかじめご承知おきください。なお、問い合わせなどはご遠慮ください。お断りいたします。

今回の範囲の訳文を有料(700円)で掲載いたします。

Posted by preciousgraceful-hm