Gatsby-22

このサイトは、英語で書かれた物語を一作品、最初から最後まで少しずつ読んでみようという試みです。

取り上げる作品は『The Great Gatsby』です。100年近く前に米国で出版された小説ですが、現代の日本人にも共感したり心を動かされるところが多々あると思います。

ぜひ一緒に、英語の原書を読んでみませんか。

(なお、このコンテンツはその著作者の解釈に基づくものであり、必ずしも正しいとは限らないことをご承知おきください。)

 

前回まで……とうとうトムとデイジーの不仲の原因がベイカー嬢の口から明かされました――トムに女がいると……「自分」には寝耳に水?……酔っ払っていることもあって?頭がついていかない中、当のトムとデイジーが戻ってきました……追いかけて責めずにいられないデイジーに、聞く耳を持たずただ逃げ回るトム……このままトムが、真剣に訴えるデイジーの思いに向き合わなければ、デイジーが愛想を尽かして今の現実から逃げるきざしも?見える?……そんな中、間の悪いことにまたもや電話のベルが……トムの女に違いないと、とうとうデイジーがきれてしまい?……あらら、二人の仲に決定的な亀裂が?もはや修復不可能なところまできた?……妻が夫に愛想を尽かし、夫の後を追わなくなったらおしまい?……そんなデイジーの本心をつゆ知らず?トムは相変わらずデイジーをなめている?ようですが(まあ、トムの場合は、デイジーだけじゃなくて何もかも誰も彼もすべてをなめている?ようにも思えますが……)、デイジーがもし本気で、トム以外に救いを求めて動き出すとしたら……どうなるのでしょうか?……続きをみていきましょう。

 

原文はOne More Libraryの『The Great Gatsby』を使用します。

第22回の範囲は15ページ19行目途中から15ページ末尾まで(Among the broken fragments of 〜から、questions about her little girl.まで)をみていきます。

まず、今回の考えるヒントを上げます。

  • 15ページ末尾から16-17行目 Miss Baker, who seemed to have mastered a certain hardy scepticism とはどういうことを言っているのか

 

なお、特に断っていなければ、基本的に次に上げる辞書の訳語や定義・意味に基づいて説明します。

主に使用する辞書

『リーダーズ英和中辞典(第2版)』(野村恵造)(研究社 2017)

『Pocket Oxford English Dictionary (Eleventh Edition)』(Maurice Waite) (Oxford University Press 2013)

『岩波国語辞典(第七版新版)』(西尾実 岩淵悦太郎 水谷静夫)(岩波書店 2017)

 

それでは今回の範囲をみていきましょう。

① Among the broken fragments of the last five minutes at table I remember the candles being lit again, pointlessly, and I was conscious of wanting to look squarely at every one, and yet to avoid all eyes.

「あるものの中で……どんなものかというと、ばらばらに崩れた断片やかけらの中で……じゃあどういうもののばらばらに崩れた断片やかけらかというと、最後の五分間で……どんな最後の五分間かというと、その夜の夕食の席の最後の五分間で……そんなその夜の夕食の席の最後の五分間がばらばらに崩れた断片やかけらの中で、自分は覚えているものがあるのだけど……それはろうそくで……そのろうそくに火がつけられて……そうやってろうそくに火がつけられるのは二度目で……そうやってもう一度ろうそくに火がつけられたことを覚えていることには別に意味はなくて……そうやってもう一度ろうそくに火がつけられたことを覚えているのに加えて、自分はある意識を持っていたのだけど、それは何を意識していたかというと、あることをしたいという意識があったのだけど……じゃあ何をしたかったかというと、目線を向けることで……どんなふうにかというと、まともに目線を向けることで……誰にかというと、(その夕食の席の)それぞれみんなで……そうやってそれぞれみんなにまともに目線を向けたいという意識があったのと同時に、逆に避けたいという意識もあった……何を避けたいのかというと、(その夕食の席の)みんなの目線を……」

前回、電話のベルがまた鳴って、デイジーがきれて、誰も口をきかなくなった、というより口をきけなくなって、終わっていました……静まり返った?無言の?場……本来みんなで談笑しているはずだったのに……デイジーがきれて、トムはどんな心地だったでしょうか?……ベイカー嬢は何を考えたでしょうか?……そして「自分」はどんな思いになったでしょうか?……生きた心地がしないとまではいかないにしても、相当気まずい?異様な?空気だったのは間違いない?のではないでしょうか……デイジーとトムの夫婦喧嘩にはまるで関係のない(はずの)「自分」にしてみたら、いきなりおかしな事態?展開?にはからずも巻き込まれた?……やばい?どうしよう?……いや、そんなものじゃなかったのでは?ないでしょうか……で、なんの関係もない「自分」がなぜか、テンパった?……おかしな話です……理不尽極まりない……でも、それが事実?……だから、デイジーがきれた後、夕食の席がどんな状況になったのか、「自分」はほとんど覚えてない?……記憶が定かじゃなくて、何がどうなったのかわからない……ただ、なぜか確実に覚えていることがひとつあって……それが、またろうそくの火がつけられたと……そして、「自分」は、みんなの目を見てその様子をうかがいたいけど、でも同時に、みんなの目線を避けたいという意識があったと……そう説明しているようです……第16回(12ページ10-11行目)でデイジーが消したろうそくの火――なぜまたつけられたのでしょうか?……たしか、トムが用意させたろうそくのようでした……形勢逆転?……たしかに誰も何も口を開かなくなったのでしょうが、でも無言のまま、デイジーとトムの戦い?は続いていたはずです……だからこそ、「自分」は周りの様子をうかがいたかった……だけど、一方的に相手の目を盗み見るのならいいけど、それを相手に気づかれるのは嫌だった……そういうことじゃないでしょうか?……。

 

② I couldn’t guess what Daisy and Tom were thinking, but I doubt if even Miss Baker, who seemed to have mastered a certain hardy scepticism, was able utterly to put this fifth guest’s shrill metallic urgency out of mind.

「自分はできなかったことがある……それは推測することで……じゃあ何を推測するかというと、どんなことをデイジーとトムが考えていたかということで……デイジーの思いはどんなだろうか、トムは何を考えているのか、自分には見当もつかなかった……そのときはそうだったのだけど、今落ち着いた状態では別のことも思うのだけど……それは自分が疑いを持っていることがあって……じゃあ何に疑いを持っているかというと、(マイペースで自分を譲らず盗み聞きでも平気でやるくらい冷静で動じない)ベイカー嬢でも、(「自分」の感じたところでは)あることをしていたように思われたのだけど……それは何かというと、そのとき抑えた状態でいたように思われた……じゃあ何を抑えていたかというと、はっきり言葉にはしないけれどどういうものか分かっている、それ以外の可能性を考えにくい疑念で……そんなほぼ間違いなくきっとこうじゃないかという疑念(がありながらもそうした疑念を)抑えていたように思われたけれど、それでも、あることをできていたかどうか(「自分」は)疑いを持っているのだけど……じゃあ(ベイカー嬢が)何をできていたか(という疑いを持っているか)というと、完全にできていたかどうか……何をかというと、あるものをどこかに置くことで……じゃあ何をどこかに置くかというと、さっきの電話をかけてきた五人目のお客の悲鳴のような金属が鳴るような音が知らせる緊迫感を、ある場所の外に置くことで……じゃあどこの外かというと、頭や心の外で……」

what は本来 Daisy and Tom were thinking の後に来るはずが、前に引っ張られて出ています。

who は直前の Miss Baker を指して言いかえています。

今回の考えるヒントに上げた箇所が出てきました。certain はここでは、具体的にこういうものという意識が話者の頭の中にあるけれども、それをあえて言葉にしないという気持ちで使われているのではないでしょうか? hardy は、どんな状況や条件にも耐えて生き残る……つまり、どうやっても消えずに残ってしまう、というニュアンスで使われているのではないでしょうか? では、certain scepticism とは、どんな疑念でしょうか?……前回の最後の電話――デイジーはトムの女がかけてきたに違いないと思ったようでした……ということは、ここでいう疑念とは、トムの女が電話をかけてきたのではないか、という疑念ではないでしょうか?……それでは、どうして certain を使って、あえて言葉にしないという気持ちを示しているのでしょうか?……それは、口にするのがはばかられるからではないでしょうか?……おそらく、その最後の電話がかかってくるほとんど直前に、トムに女がいるという話を聞かされた「自分」も含めて、ああ、あの二度目の電話もきっとトムの女だなと、その場の四人全員が、そう思ったのではないでしょうか?……でも、そんなこと誰も口にできるはずがありません……だから、certain を使って、その場のそうした空気を表したのではないでしょうか?……そして hardy scepticism とは、どういうことか?……もうすでに一度電話がかかってきていて、その電話に出るために屋内に行ったトムを追いかけてデイジーも屋内に向かい、そして二人の言い合う声が聞こえ……という前回の展開を考えたら、その場の状況を踏まえれば、どう考えても、トムの女以外の可能性が考えられない、どうやってもトムの女が電話をかけてきたのだろうという疑念が残ってしまう……そういう意味で使われているのではないでしょうか?

①では、デイジーがきれて、静まり返った夕食の席で、もう何がどうなったか、ほぼ記憶がないと、「自分」は説明していたようです……そして、ただならぬ場の空気に、どうやらとにかく神経をすり減らして?いたようでした……そうやってどうしようもない空気の中でどうしたものかと考えあぐねながら、②の最初で説明しているとおり、そりゃいたたまれないような状況で何も考えられなかった?というのが本当のところでしょうか?……当然冷静になどいられたはずもないのでは?……で、その場にいたときの「自分」にはとうてい無理だったのだけど、今落ち着いてこうして文章に表していると、別の思いが浮かんでくると……それはどんな思いかというと――たぶんあの状況でもベイカー嬢はもしかしたら冷静で落ち着いていたんじゃないか?と……で、そうやって冷静で落ち着いていたのではないかと推測されるベイカー嬢のことを思い出してみると、口にするのははばかられるけどどう考えても消えない疑念を抑えていたように思える……たしかに、そんな疑念をベイカー嬢は(見たところ)抑えていたように思えたけれども、それでも、夕食の席にはついていないけど電話という形で割り込んできた五人目のお客が鳴らす悲鳴のような金属の鳴るような音が告げる緊迫感を頭や心の外に追いやる、つまり考えないようにすることが完璧にできていたかといったら、それは怪しいのではないか、できていなかったのではないか……ベイカー嬢でもあの電話の音と、その電話のせいでその場に生じた緊迫感が頭から離れなかった、気にせずにはいられなかったのではないか……「自分」は今そう思うと説明しているようです……要は、ベイカー嬢の見た目はしらっと平然としているようにしか見えなかったけど、内心は違ったんじゃないか、「自分」と似たりよったりだったんじゃないか……そう言っているのではないでしょうか?……。

 

③ To a certain temperament the situation might have seemed intriguing — my own instinct was to telephone immediately for the police.

「具体的には言わないけれど特定の気質(を持った人)にとっては、その(話ができる空気ではない)状況は、頭を抱え込ませるようなものに思われていた可能性がある――(実際)自分自身の直感は、ある状態だったのだけど……電話すること……それも直ちに……誰に対してかというと、警察に……」

certain は、今度は口にするのがはばかられるのではなく、まあ読者に察してほしい、読者に考えてほしい、という意図で使われている?のかもしれません……どんな気質であれば、その話ができる空気ではない場の状況を前にして、やばいな、まずいぞ、などと感じたり?気づいたり?するでしょうか?……まあ、こんなに重苦しい場に遭遇したら、たいていの人は、あちゃー、どうする?……みたいに感じると思いますが……。

前回の最後に、話ができる空気ではなくなり……その様は①で説明しているとおり「自分」が気が動転して?ほとんど覚えていないほど重苦しいもので……②では今思い返してみてこうではないかという考えを「自分」が付け加え……そして③ではその様子を簡潔にまとめて説明している?ように思われませんか?……空気が読める?人なら、いったいどうしたものかと考え込んでしまうような?状況でしょうか……で、「自分」はどうだったか――直感的に、今すぐ電話した方がいい、警察に……そう思った、感じたようです……別に暴力沙汰になっているわけではありませんし、本当に警察に連絡する必要があるというわけではなく、あくまでも例えとして、警察呼んだ方がいいんじゃないかと、それくらい切羽詰まっている?尋常じゃない危機感?を感じさせるものが、その場の空気にあった?のではないでしょうか……少なくとも、「自分」はそう感じたようです……見方を変えれば、「自分」の手にはとても負えない……それが「自分」の本音?ではないでしょうか……。

 

④ The horses, needless to say, were not mentioned again.

「(トムの)馬(の話)は、言うまでもないが、話に出されなかった……二度三度は……」

The horses は前回の最後(15ページ16行目・18行目)に出てきた the stables にいる馬を指すのではないでしょうか?

前回の最後に、トムが「自分」を厩舎に連れて行きたいと誘っていましたが、屋内でまた電話が鳴って、その話は消えたようでした……で、①②③で話ができる空気ではなくなった場の様子について、「自分」の記憶や感じたところを説明して、少し話がそれたような?感じになったので? 夕食の席が設けられたベランダの場面に読者の意識を戻す目的で? 「馬」の話を持ち出し、なおかつ、当然誰でも推測がつくとおり…と断った上で、二度とその話は出されなかったと、繰り返している?のではないでしょうか……(すでに前回の最後で、厩舎の話は目に見えない空気にとけこんで消えてしまった…と説明しているので、同じことを別の言い方で繰り返しているのではないでしょうか?)……そうやって、読者に、冷え冷えとした空気のテーブル席に四人がついている場面に戻ってもらった上で、その後の展開を説明していく?……。

 

⑤ Tom and Miss Baker, with several feet of twilight between them, strolled back into the library, as if to a vigil beside a perfectly tangible body, while trying to look pleasantly interested and a little deaf, I followed Daisy around a chain of connecting verandas to the porch in front.

「トムとベイカー嬢は、数フィート(約1メートルほど?)の薄闇をトムとベイカー嬢の間に置いた状態で、ぶらぶらと歩いて(屋内の方へと)戻り、本が揃えてある書斎に入った……その様子はまるでその目的が監視することで、(ベイカー嬢の)近くに間違いなく触って確認できる(トムの)体がある位置(距離)を取っていた……トムとベイカー嬢の二人がそうやって屋内の書斎に行った一方で同時に、「自分」とデイジーはどうしていたかというと、「自分」は感じのよいふうよそおい、デイジーと一緒にいたいような風を装い、なおかつ少し耳が遠いような(鈍くて気づいていないような)風を装おうと努めながら、「自分」はデイジーについて行き、ずらっとひと続きにつながっているベランダをぐるりと回って通り、正面玄関のポーチに出た」

them は Tom and Miss Baker を指すと思われます。

a perfectly tangible body というのは、トムの体を指していると思われますが、どうして perfectly tangible という言葉で説明されているのでしょうか?…… tangible というのは、手で触れて確認できるという意味があるようです……そうすると、ここではつかず離れずとでも言うのでしょうか? トムとベイカー嬢の距離が、いつでもベイカー嬢が手を伸ばせばトムの体に触れる距離にあったことを、perfectly tangible という表現で表しているのではないでしょうか?

さて、トムの女?からかかってきた電話の音で、場の空気が一変し、話ができる空気ではなくなってしまった後、四人はいったいどうしたのでしょうか?……それがこの⑤で説明されているようです……まずトムとベイカー嬢の二人が、屋内へ戻り書斎に入ったようです……その戻るときの様子が、ちょっと普通ではない?……おそらくトムが先に立って歩いていたのではないでしょうか?……その少し後をベイカー嬢がついていったのではないでしょうか?……いつでも手を伸ばしさえすればトムの体に届いて触れられる距離を置いて……どうしてそんな距離感だったのでしょうか?……まるで、ベイカー嬢がトムの行動を監視しようとしているように見えたと…説明しているようでした……要は、少なくともこの時点では、トムとデイジーは完全に決裂した状態でしょうから、デイジーに代わって?ベイカー嬢がトムの一挙手一投足に一言一句の何もかもすべてを逃さず把握しておこうと、トムから絶対に離れずに監視でもしているように見えたと、言っているのではないでしょうか?……その一方で、じゃあ残った二人、「自分」とデイジーはどうしていたかというと、本っ当に好青年?じゃないでしょうか?……「自分」はデイジーを気づかって、デイジーに気まずい思いをさせないように、感じ良く振る舞い、「自分」はデイジーと一緒にいたいからついていっているようなふりをして、なおかつ、その場の異変に何も気づいていないような、デイジーとトムの様子におかしなとこなど何もないような顔をして、デイジーの後について、どうもぐるりとひと続きにつながっているらしいベランダを通って正面玄関のポーチまで歩いて行ったようです……まあ、どちらにしろ、いずれは夕食の席が設けられたベランダからどこかへ移動したのでしょうけれど、前回の最後に、電話のベルがまた鳴ってデイジーがきれたようでしたから、怒りのあまりひと言もものも言わなくなった妻を前にして、じゃあ夫はどうするか、といったら、黙ってどこかへ退散する…というのが、よくあるお決まりのパターン?でしょうか……ただ、普通でないのは、トムの場合は一人で退散はできないらしい……なぜなら、ベイカー嬢が監視の目も手も緩めないから……で、夫のことはどこまでも頼りになるベイカー嬢に任せて、デイジーの方は、そのままその場にいるのはいたたまれないでしょうから、やはりデイジーもその場を離れるらしい……で、本っ当にどこまでも?心優しい?「自分」は、そのデイジーをどこまでも?気づかって、いわばデイジーに付き添ってやっている?でしょうか……「自分」が人から、誰からも?信頼されるのは当然?という気持ちになったりしませんか?……これなら、誰でも、思わず「自分」になら、他の人なら言わないことでも打ち明けてみようか…なんて思ったりするかもしれません……「自分」は、ただ辛抱強いだけじゃなくて、こんなふうにどこまでも誠実?誠心誠意、まことを尽くして?相手に向き合う?…だから、信頼されるのではないでしょうか?……あくまでも相手を思いやる心と行いに、この人なら信頼して打ち明けられる……そんなふうに相手に思わせてしまう人なのではないでしょうか?……。

 

⑥ In its deep gloom we sat down side by side on a wicker settee.

「正面玄関ポーチのところは闇の暗さが濃い中、デイジーと「自分」は腰を下ろして並んだ状態になった……小枝で作られた(背もたれのある)ベンチに……」

its は⑤の最後に出てきた the porch in front を指すのではないでしょうか?

we は⑤の後半で説明されていた「自分」とデイジーを指すのではないでしょうか?

⑤でトムとデイジーがそれぞれ別行動を取る中、それに合わせるようにしてベイカー嬢と「自分」もそれぞれ別行動となったようでした……で、⑥では、デイジーの後についてきた「自分」の目線から、その様子が語られるようです……まず、正面玄関ポーチの辺りは暗かったようです……その暗い中、どうもベンチがあったようで、そこに二人並んで座ったようです……これまた洒落しゃれたベンチ?でしょうか……小枝で作ってあると……ここでもまた、デイジーのイメージだと思いませんか?……トムじゃあ、壊れないでしょうか?……。

 

⑦ Daisy took her face in her hands as if feeling its lovely shape, and her eyes moved gradually out into the velvet dusk.

「デイジーはデイジーの顔をデイジーの両手で取るような仕草をした……その様子はまるで、デイジーの顔の美しい造りを手でなでて感じているみたいに見えた……そうやってデイジーの両手でデイジーの顔を取るような仕草をしてデイジーの顔の美しい造りを手でなでて感じているような仕草をした後で、今度はデイジーの両目が動いて徐々に両手で覆われていない状態になり指の間から目線が遠くへと移り、ベルベットの生地のように黒一色に染まった夕闇の戸外をじっと見た」

her はすべて Daisy を指すと思われます。

its は her face つまりデイジーの顔を指すのではないでしょうか?

⑥で正面玄関ポーチに置いてあるらしいベンチにデイジーと「自分」は腰を下ろすと、デイジーはどうやら両手をデイジーの顔に持っていったようです……その様子が、まるでデイジーの顔の美しい造りを手でなでて感じているように見えたと……「自分」にはそう見えたようですが、デイジーの心境はどうだったでしょうか?……率直に言って、久方ぶりに会った大して知りもしない旧知の親戚に、見られたくもない醜態しゅうたいをさらしてしまって、ただただ恥ずかしくもあった?かもしれないし、どうにもならないトムへの苛立いらだちもピークに達していた?かもしれないし、おそらくほんの数分前に夫と言い合いをして、その興奮も冷めやらず、しかもなんの解決のめども見通しもたっていなくて、精神的にギリギリのところまで追い詰められている?のに、それでも、自分をさらけ出して弱音をぶちまけて誰かに助けを求められるものなら求めたいのに、その本音とは裏腹に、お客(様)の手前もあり、あくまでも平然と平静を装う建前を通し、なんとか体面を保とうと必死でこらえていたのに、それなのに、追い打ちをかけるようにあの電話がまた鳴って……ああ、もう、どうしてこんなことになったのかしら……どうしてこんな思いを味あわなくちゃいけないの……いったいどうしたらいいの……この苦しみからどうやったら抜け出せるの……などと、いろんな思いが駆け巡っていた?でしょうか……もうとにかくいたたまれなくて、それで思わず意味もなく両手が顔にいった?……ただそれだけのことかもしれません……でも、「自分」の目には、デイジーがデイジーの美しい顔の造りを手でなでて感じているように見えたそうです……よっぽどデイジーが魅力があるから、そんなふうに思えた?のでしょうか……で、そうやって両手で顔をなでながら、もしかしたらデイジーはなにか気持ちにある程度整理をつけたのか、多少でも落ち着かせることができたのか、もしかしたら両手が顔にいっていた間、つむった状態だったかもしれない?両目をあけて、徐々に視線が、デイジーの足元?(内面?)から遠くへと(外面へと?)移っていった……そして目の前の黒一色の夕闇に視線を向けたようです……まるで、一筋の光も、希望も見出だせない、絶望的な現実に向き合うかのようにも聞こえませんか?……もしデイジーがそうやって、過酷な?現実に向き合ったら、その次に取る選択は?…いったいどんな決断を取るのでしょうか?……

 

⑧ I saw that turbulent emotions possessed her, so I asked what I thought would be some sedative questions about her little girl.

「自分が(デイジーのそんな様子を)見ていて気づいたことは、荒れ狂ういろんな感情がデイジーを捉えて飲み込んでいるように見えた……そうやってデイジーが荒れ狂ういろんな感情に飲み込まれているように見えたから、(その状態をなんとかしたい、良い方に変えてあげたいと思って)自分は尋ねてみた……何を尋ねたかというと、(あくまでも)自分がそうじゃないかと思ったことなのだけど……それは、何か気持ちをしずめるような質問内容にあてはまるのではないかと自分が思ったことで……具体的にはデイジーのまだ幼い娘のことを尋ねてみた」

her はどちらも、⑦で出てきた Daisy を指すのではないでしょうか?

what は asked 尋ねた内容を指すと思われます。じゃあ、どんな what 内容なのか、それが I thought 以下で説明されているようです。I thought は、what と would の間に入って、補足的な説明を加えているようです…… what の内容は、デイジーの荒れ狂う気持ちを鎮めるような質問内容だろうと自分が思ったことで、じゃあ具体的にどんなことをいたのかというと、第13回(10ページ末尾から5-1行目)でデイジーの方から話題にしていたデイジーの幼い娘のことを尋ねたようです。

⑦ではデイジーがデイジーの顔の美しい造りをなでて感じているように見えたなどと「自分」は言っていたので、デイジーのつらい思いにはあまり「自分」の意識は向かっていないのかと思ったら、どうやらそうでもなく、(ただ単に、あまりにデイジーがきれいで魅力があるから、ついそういうところに「自分」は目がいってしまうけれど…だから⑦のような説明になってしまうけれど……)、デイジーの様子を見ていて荒れ狂ういろんな感情がデイジーをおそっているのが「自分」にわかったようです……で、たぶん、かわいそうだ、気の毒だ、力になりたい、などと「自分」は思ったのではないでしょうか?……それで、デイジーに話しかけようと…じゃあ、何を話そうか…今たぶんあの電話のことで頭がいっぱいだろうな…それを忘れるような話で、デイジーの気持ちががらっと変わるような話がないかな…気持ちが落ち着くような話…そうだ、さっき三歳の娘がいるって言ってたぞ…よし、その話がいい…それならデイジーも気持ちが変わるだろ……そんなことを思ったのかも?しれません……「自分」のことを a perfect rose と言ったデイジーの気持ちがわかるような気がしませんか?……「自分」は心ばえが、a perfect rose だと思いませんか?……美しすぎる……デイジー、どんな気持ちだったでしょうか? そんな「自分」の思いやりを、真心を向けてもらって……やっぱり a perfect rose ?……

  

おつかれさまでした。どうでしたか?

相当深刻ですねえ……。こんなとこ、居合わせたくないですねえ……。気が滅入めいりますねえ……。

唯一の救いは、「自分」を a perfect rose にたとえたデイジーの言葉が、決して的はずれなどではなく、むしろこれ以上ないくらい、完璧に的を得た表現だったりしないでしょうか?……「自分」は単なる良識と良心のかたまりではなく、単に辛抱強いのではなく、何より相手を思いやる嘘偽りない真心、それこそが「自分」の本質というか、真骨頂?とでもいうか……そしてそこにこそ、誰もが「自分」を信頼して何もかも打ち明けてしまう理由があるのではないでしょうか?……「自分」は本当に素敵な人ですねえ……それにしても、そんな「自分」を a perfect rose にたとえさせるなんて、作者は粋なことを?しますねえ……。

さて、今回の考えるヒントに上げたお題 「15ページ末尾から16-17行目 Miss Baker, who seemed to have mastered a certain hardy scepticism とはどういうことを言っているのか」 ですが……②で説明したとおりです。どうやらベイカー嬢はずいぶん冷静沈着、感情に流されず、理性的に自身の考えをコントロールできると、「自分」に思われているようです……なんだかやっぱり、ここでも、あの英国の有名な探偵を思わせませんか?……あの探偵のキャラを女性にやらせたらどうだろう?どうなるだろう?……もしかしたら、作者はそんなことを?考えたかも?しれません……。

次回は、「自分」の気づかいや思いやりのおかげで心がほぐれた?デイジーが、「自分」に何やら心を開いて、打ち明け話まで?してしまう?……ぜひまた一緒に読んでみてください。

 

第23回の範囲は16ページ1行目から16ページ末尾から19行目まで("We don’t know 〜から、a beautiful little fool."まで)をみていきます。

次回の考えるヒントは……

  • 16ページ末尾から21-19行目 And I hope she’ll be a fool — that’s the best thing a girl can be in this world, a beautiful little fool. とはどういうことを言っているのか

次回も楽しい話とはいきそうにありませんが……デイジーの別の一面が見えたりする?……ぜひまた一緒にみていってください。

 

最後に、物語を読むときに心にとめたいポイントをまとめます。

Point

・どうして作者はその言葉を使用したのか

・それぞれの登場人物に作者はどんな役割を割り当てているのか

・それぞれの登場人物のセリフや物語の展開を通じて作者は何を言おうとしているのか

 

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今回の範囲の訳文を有料(700円)で掲載いたします。

Posted by preciousgraceful-hm