Gatsby-20

このサイトは、英語で書かれた物語を一作品、最初から最後まで少しずつ読んでみようという試みです。

取り上げる作品は『The Great Gatsby』です。100年近く前に米国で出版された小説ですが、現代の日本人にも共感したり心を動かされるところが多々あると思います。

ぜひ一緒に、英語の原書を読んでみませんか。

(なお、このコンテンツはその著作者の解釈に基づくものであり、必ずしも正しいとは限らないことをご承知おきください。)

 

前回まで……トムの話にうんざりしていたらしいデイジーと「自分」がどうやら心通わせて、ベイカー嬢も加わって軽い小話に?興じたようでした――そうやって話しているデイジーの姿は、辺りの光景と相まって、どうやら見とれるほど?美しかったようです……トムみたいながさつで?空気読めなくて?傲慢で?偉そうな?のが夫なの?…というより、そんなトムの妻がデイジーみたいに(どうやら)素敵な?女性なの?……そう思われる向きがあっても不思議はない?ような……でも同時に、なんだかマイペースな傾向が強そうなところだけは、夫婦そろって似ているようでもあり……。さて、今回はがらりと展開が変わってきます……何が起こるのでしょうか?……さっそくみていきましょう。

 

原文はOne More Libraryの『The Great Gatsby』を使用します。

第20回の範囲は14ページ11行目から14ページ末尾から7行目まで(The butler came back and 〜から、I want to hear what happens."まで)をみていきます。

まず、今回の考えるヒントを上げます。

  • 14ページ16-17行目 I love to see you at my table, Nick. You remind of a — of a rose, an absolute rose. とはどういうことを言っているのか

 

なお、特に断っていなければ、基本的に次に上げる辞書の訳語や定義・意味に基づいて説明します。

主に使用する辞書

『リーダーズ英和中辞典(第2版)』(野村恵造)(研究社 2017)

『Pocket Oxford English Dictionary (Eleventh Edition)』(Maurice Waite) (Oxford University Press 2013)

『岩波国語辞典(第七版新版)』(西尾実 岩淵悦太郎 水谷静夫)(岩波書店 2017)

 

それでは今回の範囲をみていきましょう。

① The butler came back and murmured something close to Tom’s ear, whereupon Tom frowned, pushed back his chair, and without a word went inside.

「執事が(四人がいる夕食の席に)戻ってきた……そして小さい声で話した……何かを……どこかの近くで……じゃあどこかというと、トムの耳の近くで……そうやって執事がトムの耳の近くで何かを小声で話したとき、トムが顔をしかめた……それから押した……後ろに……トムの椅子を……それから、ひと言も話さずに……(夕食の席から)立ち去った……どこへかというと、屋内へ……」

The butler は、前回(13ページ末尾から8行目に)出てきた the butler を指すのではないでしょうか?

his は Tom を指すと思われます。

前回、屋内で電話が鳴って、執事が夕食の席で給仕をしていた手を止め、その電話を取りに屋内に向かっていました……その執事が、どうやら戻ってきたようです……電話に出て、誰かに伝言か、取り次ぎか……夕食の席にいた四人のうち、トムに、他の三人に聞こえないように、何か伝えたようです……で、執事の言葉を聞いたトムは、どうやら顔をしかめたようです……そしてどうも腰かけていた椅子を後ろに(がたんと?)押し下げて?立ち上がり?そして他の三人にひと言も断らずに、無言で、黙って、夕食の席を離れ、屋内へ向かったようです……たぶんふつうは、ちょっと失礼、とかなんとか、ひと言断ってから、座を立つ?んじゃないのかなあ…と思われませんか?……まあ、トムならいかにもありそうというか、別にトムなら意外でもなんでもないというか、たしかにそうかもしれませんけど、でもやっぱり、違和感?を感じませんか?……それに、顔をしかめているし……迷惑な電話?だったのでしょうか……。

 

② As if his absence quickened something within her, Daisy leaned forward again, her voice glowing and signing.

「例えていうならば、まるでトムが夕食の席からいなくなったことが、あることに火をつけた(勢いづけた)ような様子で……じゃあどんなことに火をつけたかというと、(具体的にはわからなくて)漠然と何かに火をつけた(何かを勢いづけた)ようで……その漠然とした何かはどこにあったかというと、デイジーの内面にあるものだった……デイジーは体を傾けた……前方に……(さっきもそうしたのと同じように)もう一度……デイジーの声は、感情が高まっているように聞こえ、なおかつ歌っているように聞こえた」

his は①で夕食の席から立ち去ったらしい Tom を指すのではないでしょうか?

her は直後にある Daisy を指すのではないでしょうか?

最後の her も、Daisy を指すと思われます。

①で執事が戻ってきてトムに何か耳打ちし、トムはしかめっ面で無言で夕食の席を離れたようでした……そうやってその場からトムがいなくなったことがきっかけで、デイジーの心境に何か変化が?起こったようです……なんでしょうねえ……なんだかちょっと見当がつきませんけれど、とにかく何か強い感情でも?起きたのでしょうか?……前回意気揚々と?「自分」に軽い小話?をしてくれたときのように、また体を「自分」の方に近づけた?のでしょうか……そして何かまた「自分」に話しかけた?のでしょうか……で、その声の様子が、感情が高まっている…ということは声に勢いが?あったのでしょうか?……加えて、歌っているようだった……ということは、やっぱり聞いていて心地よい?声?話しぶり?だったのでしょうか……いずれにしろ、トムの変化というか行動が、デイジーの心境や感情の変化を起こしているのは間違いないようです……夫婦喧嘩の真っ最中?だからこそ、余計に夫の何もかもが?気になる?気に入らない?のでしょうか……。

 

③ “I love to see you at my table, Nick. You remind me of a — of a rose, an absolute rose. Doesn’t he?" She turned to Miss Baker for confirmation: “An absolute rose?"

「『私はぜひやりたいことがある……それはあなたに会うこと……私の食卓で……ニック……あなたは思い出させる……私に……何をかというと、それは――そう、バラの花……完全無欠のバラの花……ニックは思い出させないか?……バラの花を(ベイカー嬢にも)……』デイジーが向きを変えた……ベイカー嬢の方に……何かを求めて……じゃあ何を求めたかというと、確認を……『完全無欠のバラの花を(思い出させないか)?』」

今回の考えるヒントに上げた箇所が出てきました。

②で最後にデイジーの声の様子が説明されていましたから、③はデイジーのセリフだと思われます。

I は②で出てきた Daisy を指すのではないでしょうか?

you は、話しかけている相手で、どうやら「自分」Nick を指すのではないでしょうか?

my は②で出てきた Daisy を指すのではないでしょうか? me も同様にデイジーを指すのではないでしょうか?

②でトムが無言で夕食の席を立ち去ったことをきっかけに、デイジーの心境や感情に変化が起こった?らしい……そして③で口にした言葉が、まず、デイジーはぜひあなたに会いたいのだけど、それはデイジーの食卓だと……どういうことでしょうか?……要は、以前、この夕食の席に「自分」を招いたのはトムだけでデイジーにとって「自分」は招かれざる客?らしいとみましたが、ここでは、「自分」の律儀で?誠実な?様子にデイジーの心が次第にほぐれていき?、そしてとうとうデイジー自らが「自分」を食事の席に招待したいという思いで今いると、「自分」に言葉にして伝えているのではないでしょうか?……しかも、わざわざ「ニック」と名前を呼んで「自分」に呼びかけてまで……これはデイジーには「自分」に対する最大限の歓迎の言葉?なのではないでしょうか……トムと夫婦喧嘩の真っ最中で、どうやらトムの方が味方につけようと「自分」を夕食に呼ぼうと言い出した?のではないか……で、トムのそんな魂胆こんたんをおそらく見透みすかしていたデイジーにしてみれば、そんな客はおもしろくないし迷惑なだけではないでしょうか?……で、いやいや応じた?のか、とにかく同席したわけです……で、「自分」と実際に同席してみたら、なんと、トムの思惑とは裏腹に?「自分」はトムになびかない?というかトムが期待したような反応は示さなかった?というか、それでトムに対する敵対心から?「自分」にまで喧嘩腰?な気分が最初はあったかもしれなかったものが、「自分」の真っ白な心?や素直で?純粋な?対応などに、すっかり心を許す?気持ちにまで変わった?のではないでしょうか……端的に言えば、トムは悪い、でもニックは悪くない……デイジーはそういう判断というか結論を出した?のではないでしょうか……そして続けた言葉が、ニックはデイジーにあるものを思わせると……で、何を思わせるのかというと、なんとバラの花だと……しかも、ただのバラの花ではない、完全無欠なバラの花だと……欠点やあらが一つも見つからない、花びら一枚一枚にほんの少しの汚れも傷も見あたらず、花全体の開き具合や形も申し分なくすばらしい、この上なく美しいバラの花だと、そう言っている?のではないでしょうか……さて、どうしてデイジーは、「自分」をバラの花にたとえたのでしょうか?……思い出してください――「自分」がトムとデイジー夫妻の邸宅を訪れて最初に案内され通された空間も(第11回 9ページ12-13行目 a bright rosy-colored space)、その後夕食の席が設けられていた場所も(第15回 12ページ7行目 a rosy-colored porch)、どちらもバラ色でした……そして、どうもそうした邸宅の趣きはデイジーの好み?が強く反映されている?のではないかと……だとしたら、デイジーはきっと、"バラ"が大好き?なんじゃないでしょうか?……邸宅のあっちこっちがバラ色?じゃないかという気さえしませんか?……それくらい、"バラ"が何よりも好き?なんじゃないでしょうか?……で、もしそのとおりなら、そのバラの花に「自分」を例えるなんて、デイジーにはこれ以上ないくらい、最高のめ言葉?なんじゃないでしょうか……しかもただのバラじゃない、完全無欠で申し分ない、すばらしい、この上なく美しい?バラだと言っている?……どんなに言葉を尽くしても、デイジーにはきっとこれ以上の褒め言葉は出てこない?――それくらいもう手放しでべための褒め言葉ではないでしょうか?……そして、デイジーの「自分」に対する思いは、その褒め言葉からうかがわれるとおり最大限賞賛せずにはいられない、最初に「自分」が来たときとはまったく違うものに変わっているのではないでしょうか?……。

he は、Doesn’t he? という言葉を向けた相手が「自分」Nick ではなくなったので、he に変わっている……つまり、この he は「自分」Nick を指しているのではないでしょうか?  また、(Doesn’t he) remind you of an absolute rose? が省略されているのではないでしょうか?……で、この場合の you はベイカー嬢を指しているのではないでしょうか?……そして、デイジーの最初のセリフは、まず「自分」に向けてかけた言葉で、この最後の言葉は、ベイカー嬢に向けて問いかけたものではないでしょうか?

She は②で出てきた Daisy を指すと思われます。

②でトムがいなくなった――電話に出るために屋内へ向かった?のでしょうか――ことで、デイジーの心境や感情に大きな変化が起こったようです……その変化が起きたデイジーの声は、テンション高め?で歌うようだったらしい……その声で何を言ったのか――デイジーなりの最大限の歓迎の言葉?……もしかしたら、最初はすげなく?食事中も冷ややか?だったりしたことを申し訳なく思う気持ちもあったり?したかも?しれなかったりする?……そうしたものもすべて含めて、今「自分」に対してどう思っているのか、その最大限の賞賛の気持ちを精一杯、どうもデイジーが大好き?大のお気に入りらしい?"バラ"の花に「自分」を例えることで、表そうとしている?ように思われないでしょうか?……しかも、ただ「自分」に対してそうした言葉を伝えるだけじゃない……そばにいるベイカー嬢にも、「自分」は本当に最高に素敵な紳士だよね?あなたもそう思うでしょ?と同意を求めて問いかけている?のではないでしょうか……そういう気持ちを込めて、もう一度 “an absolute rose" という言葉を繰り返しているのではないでしょうか?……こんなふうにベイカー嬢に話しかけることで、「自分」をデイジーとベイカー嬢の二人で歓迎する気持ち?二人の仲間?に認める?ような気持ち?も表している?のではないでしょうか……。

 

④ This was untrue. I am not even faintly like a rose.

「完全無欠なバラの花というのは嘘だ……自分はそうではない……ほんのわずかであっても違う……自分を例えるものがバラの花というのは……」

This は③でデイジーが「自分」を例えた an absolute rose を指すのではないでしょうか?

③でデイジーが「自分」をべた褒め?したようでした……それに対して、「自分」は否定しているようです……まあ、28歳?の男性をバラの花に例えるというのはあまり普通ではないし聞かないような気もします……でも、デイジーの真意は、"バラの花"でなければ表現できなかったのではないでしょうか?……ただ、「自分」としては、ここはきっぱりと否定しておかないと…という気持ちがあった?のかもしれません……いやいや、「自分」がバラの花なんて絶対に違うと……。

 

⑤ She was only extemporizing, but a stirring warmth flowed from her, as if her heart was trying to come out to you concealed in one of those breathless, thrilling words.

「デイジーはそのときどういう状態だったかというと、ただただ、その場しのぎで考え出していただけだった……そんなふうにその場しのぎで考え出していただけだったから、これから言うことは普通ならありえないと思われるだろうけど、実際にはこれから言うことがあったんだけど……じゃあそれは何かというと、こちらを感動させるような温かさが流れてきた……どこからかというとデイジーから……その様子は別の言い方をすれば、デイジーの心があることをしようと一生懸命だったのだけど……じゃあ何をしようと一生懸命だったかというと、踏み出して近づこうと……デイジーが向き合っている相手の方に……そうやって向き合っている相手の方に踏み出して近づこうとしていたデイジーの心が、目には見えないけどあるところに含まれて(込められて)いた……それはどこかというと、あの(例の)呼吸を止めて聞いてしまうぞくぞくするような声で話す言葉だった」

She は③で出てきた Daisy を指すのではないでしょうか? her もすべて同様に Daisy を指すのではないでしょうか?

you はデイジーが向き合っている相手?を指すのではないでしょうか? 今ここではもちろん「自分」ですが、今に限らず、デイジーの声に魅力があるのは、その声に込められた?デイジーの心?こそが、その理由ではないか?……「自分」はもしかしたらそう思っているからこそ、ここであえて you を使っている?のではないでしょうか?……誰が聞いても、デイジーが向き合っている相手はみんな、デイジーの声に魅力を感じているはずで、その理由は、その声を通じてデイジーが向き合っている相手に届けようとするデイジーの心?にあるのではないか?……「自分」はそう言いたい?のではないでしょうか?

those は「あの」「例の」と特定のものを指しているのではないでしょうか?

concealed は、何がどこに隠されているのか?目には見えないけど含まれているのか?が問題になりますが、those breathless thrilling words が第13回の前半部分(10ページ17-26行目)で詳しく描写されていた、デイジーの声を指しているのではないでしょうか?……そうすると、デイジーの声に、目には見えないけど含まれている?隠されている?ものとは何か?と考えると、her heart デイジーの心?ではないでしょうか?……デイジーの声には、デイジーの心が込められていた?……そしてその心が、デイジーの声を通じて、デイジーが向き合っている相手の心に?届こうと?していた?のではないでしょうか……

③のデイジーのべた褒めの言葉に、④で「自分」は違うとまず全否定?し、そして⑤で、まずはデイジーの言葉はその場しのぎにすぎないだろうと「自分」の考えを明らかにしているようです……そう言った上で、その場しのぎにすぎない言葉だろうとは思うけど、それでも、あることに気づいたのだけど、それは③の言葉を口にしたデイジーが「自分」を感動させるような温かいものがデイジーから「自分」に向かって流れてくるのを感じたと、言っているのではないでしょうか?……その温かいものがデイジーから「自分」に向かって流れてくる様を別の言い方で言えば、デイジーのあの例の呼吸を止めて聞いてしまうぞくぞくするような声で話す言葉の中に込められたデイジーの心が、デイジーが向き合っている相手の心に届こうと必死だった?ように思えたと、言っているのではないでしょうか?……要は、デイジーの「自分」を表した言葉はその場しのぎだから的はずれだと、でも、言葉そのものは的はずれでも、その言葉を発する声に込められたデイジーの心…思いは、間違いなくデイジーが向き合っている相手になんとか届きたい、そしてその心…思いは、それを向けてもらった相手が感動するほど温かいものを感じさせる……と言っているのではないでしょうか?……うわつらの言葉じゃない、デイジーの心…思いは本物だ……そういうことじゃないでしょうか?……デイジー、素敵じゃないですか?……

 

⑥ Then suddenly she threw her napkin on the table and excused herself and went into the house.

「それから(③の言葉を言った後)突然、デイジーは放り投げた……何をかというと、デイジーの(使っていた)ナプキンを……どこにかというと、テーブルの上に……そうやってテーブルの上にナプキンを放り投げた後、一言断って中座した……そうやって中座した後、その場を離れてどこかへ行った……どこへ行ったかというと、邸宅の中へ(屋内へ)……」

she、her、herself はすべて、③の she と同じ、②で出てきた Daisy を指すのではないでしょうか?

④と⑤では③のデイジーの言葉に対して「自分」の感じたことが説明されていたようでした……そして、⑥では、デイジーが③のセリフを口にした後、何をしたのかが説明されているようです……デイジーは…何を思ったのか…突然、たぶん膝の上に置いていたナプキンを手に取り、テーブルの上にポンと?放り投げた?ようです……そして、「自分」とベイカー嬢の二人に一言断って中座したようです……椅子から立ち上がり、屋内へと入っていった……①でトムがすでに屋内へと入っていきましたから、トムに続いてデイジーも、まるでその後を追うように?屋内へと入っていった?ようにも思えなくもありませんが……そういえば、電話に出て戻ってきた執事がトムに耳打ちしてトムが難しい顔?をして無言で夕食の席を離れ屋内へと向かった後、デイジーになにか大きな変化がありました……もしかして、デイジーはトムにかかってきた?電話の件?で何か気になることでも?あるのでしょうか……本当は、トムの後をすぐにでも追いかけていきたかった?可能性がある?…だけど、そもそもトムの無礼が…無言で、お客(様)である「自分」に、トムが招いたはずの「自分」に、ひと言も断らずに夕食の席を中座した…そのトムの無礼が、腹立たしい思いももしかしたらあったかも?…でも今なすべきことは、「自分」に対するトムの無礼をびる思いも込めて、トムの数々の失礼を平然と?やりすごしてくれている?「自分」に精一杯の礼を尽くすこと?…そういう思いもあって、③の言葉を口にしていた?かもしれない?……というわけで、デイジーなりにできるかぎり精一杯「自分」への誠意を尽くしてから、おもむろにトムの問題に向き合うべく、屋内へと向かった?のかもしれません……なんだかこう、スポーツしか能がなくて社交上の礼儀を何も知らないトム?と、社交上の礼儀とかそういった常識?みたいなものをちゃんと?心得ているらしいデイジー……で、そういう夫に困っている妻……そういう夫婦の姿が浮かび上がってきたり?するでしょうか……デイジーがナプキンを思わず?放り投げたときの気持ち……どんなだったでしょうねえ……読者の方々は、どう思われますか?……。

 

⑦ Miss Baker and I exchanged a short glance consciously devoid of meaning.

「ベイカー嬢と自分は、交わした……何をかというと、短くちらっと見合う行為を……それぞれに短くちらっと見合うという意識を持って……ただそういう意識は持っていたけれど、あるものがまったくなかった……それは何かというと、目的意識で……」

さて、トムに続き⑥でデイジーまで屋内に入っていったので、テーブルの席にはベイカー嬢と「自分」の二人だけが残されてしまいました……初対面の二人で、「自分」の方はベイカー嬢に興味津々?のようでした……が、ベイカー嬢の方は?……そういえば、③でデイジーがベイカー嬢に声をかけたとき、ニックって最高に素敵な紳士じゃない?という趣旨の問いかけに対して、ベイカー嬢は無言でいた?のでしょうか……少なくとも、ベイカー嬢が何をしたのかは何も書いていないので、ベイカー嬢の思いははかりがたいのですが……なんとなく、第15回とかの様子からすると、もしかしたらベイカー嬢の反応というか思いは、デイジーとは違う?ような気がしたり?しませんか?……「自分」の思いに何か気づいている?としたら、すんなりデイジーと同じようにはもしかしたら思えなかったり?したりする?かもしれません……で、残された二人がお互いに相手に目をやった瞬間が?あったようです……たしかにお互いに相手に目をやったのだけど、だからといって、別に何か意図というか目的とかがあったわけではないと……だけど、こういう状況で残された初対面の二人って、どうしたものかと、目のやり場にも困ったり?何話したらいいんだろ?とか、どうやって時間つぶす?をもたせる?みたいないろんな葛藤が心に浮かぶ?でしょうか……

 

⑧ I was about to speak when she sat up alertly and said “Sh!" in a warning voice.

「自分は口を開いて話そうとした……そのときにベイカー嬢がきちんとすわった……注意を怠らずに……それから言った言葉があるのだけど、それは『シーッ!』という言葉で……その言葉を言ったのは、警告を発する声だった」

she は⑦に出てきた Miss Baker を指すのではないでしょうか?

⑦でベイカー嬢と目が合って、黙っているのも?と思ったのか、何か話した方がいいと気を使った?のか、「自分」が口を開こうとした、そのタイミングで、ベイカー嬢が何にかわかりませんが何かに注意を払いながら?意識を向けながら?姿勢を正して?椅子にきちんと座った状態で?シーッと言ったようです……どうやら「自分」に向かって……話さないようにと警告した?のではないでしょうか?……声を出さないようにと……たぶんほとんど上から目線で?指図した?のではないでしょうか?……おーっ、なんとまあ……。ところで、ベイカー嬢の仕草だったり話しぶりとか話し方だったり、すべてあの例の有名な英国の探偵を思わせるような……というより、作者はきっと、あの探偵を意識した仕草や話しぶり、話し方などをベイカー嬢にさせている?ように思われませんか?……そのあたりも意識して?頭において?読んでいただけたら、もしかしたらもっと?楽しんでいただける?かもしれません……。

 

⑨ A subdued impassioned murmur was audible in the room beyond, and Miss Baker leaned forward unashamed, trying to hear.

「(なにか)押し殺したような、それでいて熱のこもったブツブツ言う声が聞こえた……どこでかというと、部屋で……どこにある部屋かというと(今いるベランダの)向こうにある部屋で……そんな声が(今いるベランダの)向こうにある部屋で聞こえた状態で、ベイカー嬢が上体をかがめるようにして……どちら側にかというと前側に……その様子はあつかましく平然としていた……そうやって前側に上体をかがめるようにしてあることをしようとしていたのだけど、それは、そうやって(今いるベランダの)向こうにある部屋で聞こえていた声を聞き取ろうとしていた」

⑧で「自分」がベイカー嬢に気を使って?話しかけようとしたら、ベイカー嬢が声を出さないようにと「自分」に指図?したようでした……どうしてベイカー嬢は「自分」にしゃべらせなかったのでしょうか?……その理由が、⑨で説明されているようです……今「自分」とベイカー嬢のいる夕食の席が設けられたベランダの向こうにある部屋で、何やら声がしていたと……で、その声は押し殺したような小さな声でよく聞こえなかった?のではないでしょうか?……何やらブツブツと話しているらしいのはわかると……それもただ話しているのではないらしい?……なんだか熱のこもったやりとりが交わされているような気配が?押し殺したような小さい声でもわかった?のでしょうか……で、ベイカー嬢は、そのよく聞こえない声が何を話しているのか、それを聞きたいがために、「自分」にしゃべるなと、指図した?のではないでしょうか?……もっといえば、そうやってその部屋で押し殺した声で話をしているらしいのは、いったい誰なんでしょう?……ご想像のとおり、①で屋内に消えたトムと、その後を追うように⑥で屋内に消えたデイジーの二人?ではないでしょうか?……これまで見てきたとおり、二人は夫婦喧嘩の真っ最中?のようでした……しかも、けっこう深刻?楽観視できない感じ?なのかもしれない……①のトムはしかめっつらだったし、②と⑥のデイジーの様子からしても、決して心穏やかとはいえないように思われませんか?……だとしたら、この二人が屋内で、「自分」とベイカー嬢に聞かれてはまずいと声を押し殺しながら、でも、何をもめているのか?わかりませんが、これまでの二人の様子から考えても、つい感情的になって言い合いになっている?のではないかと容易に想像がつきませんか?……で、ベイカー嬢は、この二人が何を言い合っているのか、その話を聞こうとしているようです……声がくぐもってよく聞こえないのだけど、それでもなんとか何を言っているのかわからないかしら……そんなことをもしかしたら思っている?かもしれません……で、「自分」は、そんなベイカー嬢の姿を見て、unashamed なんとあつかましい、よくまあ平然とそんな真似ができるなと、あきれた?のではないでしょうか?……まあ、ベイカー嬢にしてみれば、あくまでもデイジーのために、情報収集?といったところでしょうか?……何が起きているのか、現状はどういう状況なのか、そうした事実が把握できなければ、デイジーのために何ができるのか、その対策を立てられない?でしょうから……しかし、ベイカー嬢のそうした思いや立場?、それにデイジーとベイカー嬢の関係?にまで「自分」が気づいたり察したりしていなければ、良識ある礼儀正しい「自分」の常識的感覚からすれば、ベイカー嬢の姿は非常識な姿にきっと映ったのでは?ないでしょうか……。

 

⑩ The murmur trembled on the verge of coherence, sank down, mounted excitedly, and then ceased together.

「(今いるベランダの)向こうにある部屋で聞こえたブツブツという声が、震えた……ある状態になる寸前で……じゃあどんな状態かというと、会話の内容が論理的に首尾一貫している状態(になる寸前)で……それからブツブツという声が低く弱くなった……その次にブツブツという声が高く大きくなった……その様は興奮しているようだった……それからブツブツという声がやんだ……(おそらく二人の人間の声が)同時に……」

The murmur は⑨に出てきた A subdued impassioned murmur を指しているのではないでしょうか?

⑧でベイカー嬢が「自分」に声を出さないように指図した?らしい理由が⑨で説明されていて……で、⑨の後半ではベイカー嬢が屋内の部屋から聞こえてくる声をなんとか聞き取ろうとしていたようでした……そして⑩では、そうやって聞き取ろうとした声が、どんな様子だったのかを説明しているようです……たぶん、⑨でベイカー嬢の様子にあきれた?らしい「自分」も、あえてベイカー嬢に歯向かうようなことはせず、言うとおりにおとなしく?していた?のではないでしょうか?……そうすると、自然ブツブツという声が「自分」の耳にも聞こえてくる……ということで、聞こえてきたブツブツという声の様子を、⑩で説明したのではないでしょうか?……何の話をしているのかはわからない……だけど、人が話をしているのはわかる……その会話の声が、興奮のあまり思わず抑えきれないほど大きくなった?……その大きさは、会話の内容が論理的に首尾一貫した筋の通ったものだとわかりそうなほどだった……つまり、会話の流れを把握できそうなほど大きな声で話すのが聞こえた……けれど、それからその声が低く弱くなった……つまり、聞こえにくくなった……でもまた、その声が高く大きくなった……しかも、その大きな声は興奮しているようだった……けれどまたもや、聞こえなくなった……今度はまったく……しかも、どうやら二人の人間が話していたらしいのが、その二人の人間の声が同時に聞こえなくなった……どうやら、たぶんトムとデイジーの二人が、ベランダにいる「自分」とベイカー嬢に聞こえてはまずい?ので、声を押し殺して話すようにはしていたけれど、なにぶんどう考えても穏やかならぬ話?のようなので、二人とも感情的になって衝突してしまう?のではないでしょうか……声が高ぶって、あわてて声を抑え、でもやっぱり思わず声が高くなり、で、とうとう結局決裂?……仲直りなら、もう少し違う展開になりそうな気がしませんか?……この場合は、やっぱりどう話し合っても衝突してしまう?……二人が話し合う声の様子からは、二人の仲が行き詰まっている?打開の気配は見受けられない?……まったく折れる気など毛頭ない?"俺様が一番偉い"トム……夫に対する不満でいっぱい?その気持ちを伝えても何も変えてくれない夫に困り果てるばかりで他に救いを見いだせていない?デイジー……トムがデイジーの思いを汲んでくれないかぎり、デイジーとしてはトムに要求しない…つまり、あきらめる以外にない?ような……そうすると、デイジーがどうにもならないトムをあきらめるのであれば、他に救いを見いだす以外にない?ような……⑩で間接的に描かれたトムとデイジーの二人の様子は、絶対に折れようとせず何も変えようとしない夫に、それでも今のところまだ他に手立てが見つからなくて無駄だとわかっていても、そのどうにもならない夫に必死でつらい思いを訴え、なんとか現状を変えたくて夫に気持ちを伝える以外にすべがない無力な妻が、不毛な努力をしている……そんな姿が浮かび上がってきたり?しないでしょうか……。

 

⑪ “This Mr. Gatsby you spoke of is my neighbor —-" I said.

「『さっき話に出たギャッツビーさん……あなたが話の中で触れた……その人は、自分の隣人だ――』と自分は言った」

This は第15回(11ページ末尾から1行目)でベイカー嬢がギャツビーの名前を持ち出したときのことを指しているのではないでしょうか?

Mr. Gatsby は本来 you spoke of の後に来るものが、ギャッツビーを指す This に引っ張られて前に出ています。

my は、 I「自分」のセリフなので、「自分」を指すと思われます。

⑩の最後で、「自分」とベイカー嬢が二人残されたベランダの向こうにある(屋内の)部屋から聞こえてくるらしい、おそらくトムとデイジーの話し声が、どちらの声も同時に聞こえなくなったようでした……ということは……たぶん、辺りが静まり返った?かもしれません……で、「自分」は口を開いてみたのではないでしょうか?……ベランダの向こうにある部屋から声が聞こえてくる間は、ベイカー嬢に声を出さないようにと指図?されてしまったので、言われたとおりにしていた?……でも、今、その声がしなくなったようなので、じゃあ、声を出してもいいだろうと……そう、「自分」は思った?のではないでしょうか……で、何を言い出したのかというと……ベイカー嬢と共通の話題といえば、第15回では言いそびれたというか、言わずじまいになってしまっていたこと……ギャッツビーの話ですね……もともとベイカー嬢から言い出した話ですし、ちょうどいいと思ったのではないでしょうか?……「自分」としても、ベイカー嬢から、まだ見知らぬギャッツビーという立派な紳士?(と「自分」が思っている)の情報を何か聞き出せるかもしれない……そんな思いもあった?かもしれません……で、そうやってギャッツビーの名前を出して話しかけたところ、どうやら「自分」が言いたいことを最後まで言わせてもらえなかった?ようです……「自分」としては、初対面の、デイジーより若く見えると、二人だけで残されて、沈黙状態がいたたまれない?何か話した方が気が楽?だったのでは?ないでしょうか……それなのに、どうもそうはさせてもらえない?のでしょうか……いったい、どうしてでしょう?……。

 

⑫ “Don’t talk. I want to hear what happens."

「『やめてくれ……話すことを……私はしたいことがある……何をしたいかというと、聞くことを……じゃあ何を聞くかというと、何が起きているのかということを……』」

I は、ベイカー嬢のセリフらしいので、ベイカー嬢を指すと思われます。

⑪で「自分」がベイカー嬢に話しかけたところ、まだ話の途中なのに最後まで言わせてもらえなかったようでした……で、⑫のセリフ……⑪で「自分」がまだ話しているのに――それもきっと紳士的に礼儀正しく――ベイカー嬢が容赦なく?口をはさんで止めた?ようです……しゃべるなと、何が起きているのかをベイカー嬢が聞きたいからと……やはりベイカー嬢は、トムとデイジーの間に何が起こっているのか、というより、トムとデイジーの間で起きる何もかもすべてを、把握しておきたい、その上でデイジーのために?何ができるのか対策を?考えようという腹積もり?のように思われませんか?……③のセリフをみると、デイジーの方はもうすっかり?と言っていいほど、「自分」に心を許すように?なっているようにも思えますが、一方ベイカー嬢の方はそうでもない?かもしれません……相変わらず?厳しい?……それとも「自分」はまるっきり問題外?度外視?……ただただ頭にあるのは、デイジーを守ること?デイジーの力になること?ただそれだけ?なのかもしれません……そうしてみると、デイジーを守るというベイカー嬢の使命?に不要なもの?はすべて無視?相手にしない?のかもしれません……見方によっては、気持ちいいくらいはっきりしている?徹底している?ともいえる?かもしれません……。

 

おつかれさまでした。どうでしたか? 盛りだくさんではなかったでしょうか?

なんだかいきなりばたばたと慌ただしく話が展開しているような印象を受けませんでしたか? とうとうトムとデイジーが二人っきりで正面衝突?したようで……その様子を逐一逃さず把握しようと必死?なベイカー嬢が、礼を尽くそうと努めている?「自分」をまるで相手にしていない?ほぼ無視も同然?のようでした……。

さて今回の考えるヒントに上げたお題 「14ページ16-17行目 I love to see you at my table, Nick. You remind of a — of a rose, an absolute rose. とはどういうことを言っているのか?」 ですが……③で説明したとおりです。デイジーの「自分」(ニック)に対する思いは、⑤の説明をみると、ちゃんと「自分」に伝わっているのではないでしょうか?……この物語で初めて(「自分」と父親の仲以外では)、登場人物の間で心が通った箇所が現れた?ように思えませんか?……③のセリフや⑤の説明をみると、デイジーって本当は素敵な女性ではないか?――そう思わせるところもあるように思われます……でも、今相当つらそうですねえ……トムがねえ……一方、③で声をかけられても無視した?らしいベイカー嬢、その後の⑧や⑫のセリフをみても、冷たくない?とも思えそうですが、ひとえにデイジーのことしか頭にない?のだとすれば、そういう態度も納得がいく?……"俺様が一番偉い""自己中(心)"のトムの馬鹿野郎に、(ベイカー嬢にとって)大事なデイジーが泣かされている……そんな不届きをこのまま捨て置くなど到底できっこない、ありえない、考えられない……それがもしかしたらベイカー嬢の本音?だったりする?のかもしれません……。

なんだか夫婦喧嘩がエスカレートしていく様でも見せられているような気もしますが、次回もそんな折り合いが悪くてにっちもさっちもいかなくなっている?ようにすら思える夫婦の姿を、いろんな角度から?見せられる?かもしれません……。人の振り見て――なんて言いますが……ところで肝心のギャッツビーはまだ出てきていません……作者がこの物語を通して読者の方々に訴えたいことは、そんなありきたりなことでしょうか?……そのあたりも少し意識しながら、ぜひまた続きを一緒にみていってください。

 

第21回の範囲は14ページ末尾から7行目から15ページ19行目まで("Is something happening?" 〜から、subjects, vanished into air. まで)をみていきます。

次回の考えるヒントは……

  • 15ページ18-19行目 the subject of the stables, in fact all subjects, vanished into air とはどういうことを言っているのか。

次回は、ひとつ秘密が明かされます――それで……納得がいった、となるかもしれません……。楽しみにしていてください。

ぜひまた一緒に読んでみてください。

 

最後に、物語を読むときに心にとめたいポイントをまとめます。

Point

・どうして作者はその言葉を使用したのか

・それぞれの登場人物に作者はどんな役割を割り当てているのか

・それぞれの登場人物のセリフや物語の展開を通じて作者は何を言おうとしているのか

 

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Posted by preciousgraceful-hm