Gatsby-13

このサイトは、英語で書かれた物語を一作品、最初から最後まで少しずつ読んでみようという試みです。

取り上げる作品は『The Great Gatsby』です。100年近く前に米国で出版された小説ですが、現代の日本人にも共感したり心を動かされるところが多々あると思います。

ぜひ一緒に、英語の原書を読んでみませんか。

(なお、このコンテンツはその著作者の解釈に基づくものであり、必ずしも正しいとは限らないことをご承知おきください。)

 

前回まで……緑の芝生に赤と白の邸宅、バラ色の空間に白く輝くガラス窓や天井のシャンデリア、足元の鮮やかな緑にヴァイオレットの敷物、風にはためく淡い色のカーテンに白い生地をはためかせて横になっているらしい二人の若い女性――そこへあるじのトムがピシャリと窓を閉め、風がぱたりとやみます――同時にはためいていたカーテンも二人の若い女性が身に着けた白い服の生地も風船がしぼむように動かなくなりました……まるで息の根を止められたかのように……。どうやらカウチに寝そべって眠っていたらしい二人の女性……風がやめば、その変化に気づいて目を覚ましたり、夢の世界から現実世界に意識が戻ったりしたのかもしれません……「自分」にも気づいて一応挨拶らしきものを交わしたようでした……。

さあ、目覚めた二人の女性とトム、それに「自分」の間にどんな展開が繰り広げられていくのでしょうか? あの晩トムとデイジー夫妻と夕食をともにしたことが、「あの夏の出来事」が起こるきっかけになったと第7回で言っていました。「自分」はトムとデイジー夫妻、それにベイカー嬢も加わって、どんな時間を過ごすのでしょうか? 四人の間にどんな会話が交わされるのでしょうか? みていきましょう。

 

原文はOne More Libraryの『The Great Gatsby』を使用します。

第13回の範囲は10ページ17行目から11ページ2行目まで(I looked back at my cousin, 〜から、his hand on my shoulder.まで)をみていきます。

まず、今回の考えるヒントを上げます。

  • 10ページ23-24行目 a singing compulsion とはどういうことを言っているのか

 

なお、特に断っていなければ、基本的に次に上げる辞書の訳語や定義・意味に基づいて説明します。

主に使用する辞書

『リーダーズ英和中辞典(第2版)』(野村恵造)(研究社 2017)

『Pocket Oxford English Dictionary (Eleventh Edition)』(Maurice Waite) (Oxford University Press 2013)

『岩波国語辞典(第七版新版)』(西尾実 岩淵悦太郎 水谷静夫)(岩波書店 2017)

 

それでは今回の範囲をみていきましょう。

① I looked back at my cousin, who began to ask me questions in her low, thrilling voice.

「自分は目線を戻して自分の遠い親戚の方に向けた……自分が目線を自分の遠い親戚の方に向けたので、自分の遠い親戚は始めたことがある……それは自分に質問を尋ねることだった……どんなふうにかというと、自分の遠い親戚の音量を抑えたような小さい声でぞくぞくするような声だった」

my cousin は、Daisy を指しています。第7回でデイジーは my second cousin once removed と言っていました(7ページ末尾から12-13行目)。

who は直前の my cousin を指して言いかえています。

her は my cousin つまり Daisy を指しています。

前回の最後は、「自分」がなんだか初対面の女子のある意味堂々とした?姿に圧倒された?ところで終わっていました……おそらく初対面の女子はそれ以上「自分」を相手にしなかったので、仕方なく?「自分」はデイジーの方にまた目線を戻したようです……で、「自分」に目線を向けられたデイジーは、もしかしたら愛想よく?「自分」に応じる気持ちでどうやらいろいろ「自分」に尋ね始めたようです……そのときの声に、特別な特徴があったようです……音量を抑えたような小さい声で聞いている方がぞくぞくするような魅力的な?声…のようです……。そういえば、前回 Daisy’s murmur デイジーの小声でささやく癖?が原因で人から悪口を言われているらしい話が出ていました……なるほど、ここでもやっぱり、デイジーは「自分」にも小声でささやくようにいろいろ尋ねたのではないでしょうか?……。

 

② It was the kind of voice that the ear follows up and down, as if each speech is an arrangement of notes that will never be played again.

「自分の遠い親戚の音量を抑えたような小さい声でぞくぞくするような声は、ある性質の声だったのだけど、それはどんな性質かというと、その声を耳にし聞く人がその声の後を耳で追いかけて(声の上がり下がりに合わせて)追いかける方も上がったり下がったりするような性質だった……その声の様をたとえていうならば、まるで発せられる一つ一つの言葉が音符を並べたような、それもただ並べたのではなくて全体で一つの曲になっていて、しかもその曲は以後二度と再び演奏されないもののようだった」

It は①に出てきたher low, thrilling voice を指しています。

that は直前の the kind of voice を指して言いかえています。本来は follows の後に来るはずのものが、前に引っ張られて出ています。

最後の that は直前の an arrangement of notes を指して言いかえています。

①の最後で説明したデイジーの声について、追加情報を説明しているようです……ずいぶん声に特徴があったのですね……思わず耳でその声の後を追いかけてしまうと……声が高くなれば高くなった声の跡を、低くなれば低くなった跡を……そしてその声を一つ一つ追いかけていって並べてみると、まるで一つの曲が成立する……つまり、デイジーは普通に話しているだけでもまるで歌っているように聞こえるのではないでしょうか?……しかもその曲、つまり歌は、そのとき限りで二度と聞けない……そりゃあ、同じことを何度も話すことの方が普通はないでしょうから、いつも違う言葉を口にするのですから、いつも違う歌になるのは当然で……そういうことではないでしょうか?……。

 

③ Her face was sad and lovely with bright things in it, bright eyes and a bright passionate mouth, but there was an excitement in her voice that men who had cared for her found difficult to forget: a singing compulsion, a whispered “Listen," a promise that she had done gay, exciting things just a while since and that there were gay, exciting things hovering in the next hour.

「デイジーの顔は悲しそうだった、と同時に美しかった……快活な印象を受けるところもその顔の中にはあった……具体例をあげると、ぱっちりとした目や美しく人目を引く存在感のある官能的な印象も感じさせる唇があった……そうした目や唇など見た目の顔に快活な印象を受けるところがあって美しかったから、当然顔が一番人(特に男性)の心を引いたのだろうと思いそうなところだけれど、実は違って、じゃあ、実際にはどうだったのかというと、ぞくぞくとそそられるような思いをかきたてるところがあったのは、デイジーの声にあった……その声は、デイジーに好意を持った男性が忘れることが難しいことに気付かされてきた声だった……歌うこと(歌になってしまうこと)を抑えられない力が働いていて、ささやき声で『聞いて』と(相手に)呼びかけるものがあり、必ずそうすると約束していることがあって、じゃあ何を必ず実現すると約束しているかというと、デイジーがウキウキドキドキワクワクするような楽しいことをすると、で、それはその後(デイジーがその声を発した後)まあしばらくの間やると、しかもそのウキウキドキドキワクワクするような楽しいことがそのまま残ると、で、それはそれから(デイジーがそのウキウキドキドキワクワクするような楽しいことをやってから)一時間残ると、約束していた」

Her は①で出てきた my cousin つまり Daisy を指しています。

it は Her face を指しています。

次の her は上記と同じ、①で出てきた my cousin つまり Daisy を指しています。

who は直前の men を指して言いかえています。who had cared for her が直前の men と直後の found の間に入って、どんな men が found したのかを説明しています。

次の her も上記と同様です。

さて、今回の考えるヒントに上げた箇所が出てきました。

a singing compulsion の前には、there was が省略されており、そしてその後には in her voice が省略されていると推測されます。その前の部分で but there was an excitement in her voice とありましたが、その an excitement の部分が今度は a singing compulsion にかわっているのではないでしょうか? ②でデイジーの話し声はまるで歌っているようだとありました……ここの singing は、その歌っているような話し声を指しているのではないでしょうか?……しかも、デイジーは決して歌を歌うように話そうとしているわけではなさそうでした……本人が意識しなくても自然に、普通に話しているだけなのに聞く人には、特に男性には?まるで歌っているように聞こえたようです……その、何も(意識)してないのに、ただ話しているだけなのに、どういうわけかどうしても歌っているような調子になってしまう……そのことを、compulsion という言葉で表しているのではないでしょうか?……歌うような調子になってしまうのを抑えられない……なんなのかわからないけれど、何か歌うような調子に変えてしまう抑えがたい力でも働いているかのようだ……デイジーの声にはそういうところがあると……そう言いたいのではないでしょうか?

そして次の a whispered “Listen" も、a promise that 〜も、同様に、それぞれその前には there was が省略されており、そしてその後には in her voice が省略されているのではないでしょうか? (なお、二つの that はどちらも、「これから文が続く」ことを示していて、promise の内容を説明しています。) つまりすべてデイジーの声の特徴を列挙しているのではないでしょうか? まず excitement(ぞくぞくとそそられるような思いをかきたてるところ)、次に singing compulsion(歌うような調子に変えてしまう抑えがたい力が働いているところ)、そして whispered “Listen"(『聞いてほしいの』とささやきかけるように呼びかけるところ)、最後に promise that 〜 and that 〜(私これからちょっとウキウキドキドキワクワクするような楽しいことするからね、でもって、そのウキウキドキドキワクワクするような楽しいことはそのまま消えずに残るのよ、そうね、一時間くらいかしら、と聞く人(男性)に約束しているように思わせるところ)――これら四つの特徴がデイジーの声にはあると言っているのではないでしょうか?

②でデイジーの声について追加情報を説明していました……そして③では、デイジーの他の特徴――顔の見た目の印象などを上げながら、でも何より声がきわだって印象に残る部分なのだと、色んな言葉を尽くして説明しているようです……その特徴は四つも上げられています――デイジーの声って聞いてるとぞくぞくそそられるんだよね……何をどうしゃべっても、歌でも歌っているようにしか聞こえないんだよね……"私の話を聞いて"って小声でせがまれてるみたいでさ……きわめつけが"ウキウキドキドキワクワク楽しいことしてあげる"って、"一時間ぐらいそうやって楽しませてあげる"って言ってるみたいに聞こえるんだよね……。よほど魅力的な声なのでしょうか……顔も可愛らしいようですけど……ただ、注意してください――③の一番最初に上げられているのは、(Her face was) sad です……まず"悲しそうな顔をしている"と言っているのです……要は、幸せそうには見えない、と言っているのではないでしょうか?……そう言った上で、可愛いとか声に魅力があるとかいろいろ付け加えているようにも聞こえます……。

 

④ I told her how I had stopped off in Chicago for a day on my way East, and how a dozen people had sent their love through me.

「自分はデイジーに伝えたことがあるのだけど……それはあることをした時の様子で……じゃあ、何をしたのかというと、自分が足を止めて(旅程から)それてシカゴに一日間、自分が東部に行く途中に、滞在した時の様子で……その時の様子と合わせて、また別の様子も伝えたのだけど、じゃあ、それはどんな様子かというと、(シカゴで)多くの人たちが(デイジーに)親愛の情を(今も変わらず)持っているという気持ちを(離れたところにいるデイジーに向かって)自分を通じて伝えていた様子だった」

her は①で出てきた my cousin つまり Daisy を指しています。

their は a dozen people を指しています。

①②③とデイジーの声がいかに魅力的なのかをくどくどと?説明した上で、④でやっと、再会して交わした会話の内容が明かされているようです……①でデイジーが「自分」にいろいろ尋ねたと言っていたので、もしかしたらデイジーの方から、「自分」が故郷を離れて東部に来るときにシカゴに立ち寄ったのか?とか、デイジーも東部に来る前にはシカゴにいたわけですから、もしかしたら共通の友人知人とかいて、そうした人たちがどうしているか?とか、そういったことをいたのかもしれません……で、「自分」はシカゴに一日だけ立ち寄った時の話をデイジーに聞かせて、その上で、デイジーによろしくって言ってたよ、とかデイジーに会いたがってたよ、とかいろんな人から受けたそういう伝言をデイジーに伝えたようです……。

 

⑤ “Do they miss me?" she cried ecstatically.

「『みんな私に会いたがってる?』デイジーが大声で尋ねた……ものすごく楽しそうで興奮しているように見えた」

they は④に出てきた a dozen people (in Chicago) を指しています。

me は she つまりDaisy のセリフなので、デイジーを指します。

④で「自分」からシカゴでの話を聞いたデイジーが尋ねた言葉のようです……シカゴの旧知の友人知人にデイジーは会いたいのではないでしょうか?……だからこんなことを聞いているのではないでしょうか?……それも大声を上げて、シカゴの話を聞くのが嬉しくてたまらないようです……懐かしい?のでしょうか……。

 

⑥ “The whole town is desolate. All the cars have the left rear wheel painted black as a mourning wreath, and there’s a persistent wail all night along the north shore."

「『(シカゴの)街全体がとても寂しそうな様子だ。(シカゴの街を走っている)すべての車が、左の後輪タイヤを黒色に塗って、喪に服していることを表す花輪に見立てていた……その他にも、しつこく延々と風の泣く音が一晩中北部の湖岸沿いに響いている』」

The whole town = Chicago と推測されます。

同様に All the cars (in Chicago) と推測されます。

shore は、シカゴの話なので、ミシガン湖の岸を指すのではないでしょうか? (ただ、湖とはいっても、ものすごく大きくて広大なようです……日本の湖とは全然規模が違うようです……。)

⑤のデイジーの質問に「自分」が答えているようです……それにしても、"粋な"返し?……街中が悲しみに打ち沈んでいる…まるで魂の抜け殻にでもなったようだ……どの車も左の後輪タイヤを黒くして喪に服しているし……北部の湖岸沿いでは一晩中風までもしつこく延々と泣き止まない……それくらいみんな寂しがってる、会いたがってるよ、といわば「自分」からデイジーへのリップサービス?に近い?返答でしょうか……。

 

⑦ “How gorgeous! Let’s go back, Tom, To-morrow!"

「『なんて素晴らしいの! (東部を離れて)(東部に来る前にいたシカゴに)戻りましょうよ、トム、あ〜した(明日)!』」

go は話の中心になっているところから離れていく動きを表します。

⑥の「自分」の"粋な"返し?にデイジーは大喜びのようです……やはり、シカゴが懐かしいのでしょうか……トムにシカゴに戻ろうと呼びかけています……それも、ハイテンションで?……最後の To-morrow! などはしゃいでいるようにも聞こえそうです……。さて、声をかけられたトムの反応は?……

 

⑧ Then she added irrelevantly: “You ought to see the baby."

「シカゴの話ではしゃいでワイワイ言った後で、デイジーは付け加えた……(シカゴの話とは)関係のないことだった……『あなたにぜひともしてもらわなくてはいけないことがあるのだけど、それは(私の)子どもに会うことよ』」

she は Daisy を指しています。

You はデイジーのセリフの中で使われているのでデイジーの話し相手、つまり「自分」を指します。

the baby は特定の小さな子どもに限定されています……誰なのでしょうか?……デイジーのセリフの中で限定されていることから、おそらくデイジーの子どもだろうと推測されます。

⑤と⑦で大はしゃぎしたかと思ったら、どうもシカゴの話は突然終わってしまい(デイジーが終わらせた?)、なんだか全然別の話になっているようです……子どものことを思い出したのでしょうか?……「自分」にデイジーの子どもに会ってほしいと思っているようです……。ところで、⑦でデイジーに呼びかけられたトム、いったいどうしたのでしょうか?……無反応?……何も書かれていませんが……。

 

⑨ “I’d like to."

「『自分はぜひそうしたい』」

このセリフは⑧のデイジーの呼びかけに対する「自分」の返答なので、I は「自分」を指します。

to の後に see the baby が省略されているようです。

⑧でデイジーの子どもに会ってほしいと言われて、「自分」はもちろんいいよという気持ちを⑨で伝えているようです……。デイジーの気持ち一つでいきなり話題が変わっても、「自分」はあくまでも相手に合わせて応じているようです……本当になんて好青年?なんでしょう……。

 

⑩ “She’s asleep. She’s three years old. Haven’t you ever seen her?"

「『デイジーの子どもは(今)眠っている。デイジーの子どもは三歳だ。前にあなたは一度でもデイジーの子どもに会ってないか?』」

She と her はすべて、⑧に出てきた the baby つまりデイジーの子どもを指します。女の子のようです……。

you は、デイジーのセリフで話し相手を表すので、⑧の場合と同じく、「自分」を指します。

⑨で「自分」は快くデイジーの子どもに会おうと応じたのに、なぜか⑩でデイジーは、その子どもが今は寝ているのだと説明しています……話に持ち出したのならすぐに会わせるのかと思いきや……どうも、なんだか釈然としないような……(気まぐれと思いつきでしゃべっているだけだったりする?)……とにかく、続いてその子どもは今三歳になるのだと説明しているようです……そして最後に、「自分」がその子どもに前に会ったことがあるか?と訊いているようです……デイジーは子どもを「自分」に会わせたことがあるかどうか覚えていないらしい……まあ、そんなものなのでしょうか……それとも、ずっとカウチで寝てたので、まだ頭がボーッとしてまともに動いていないのでしょうか?……

 

⑪ “Never."

「『一度もない』」

⑩の最後の質問に「自分」が律儀に答えたセリフのようです……デイジーみたいなのを相手に真面目に受け答えするのがバカバカしくなったりしないのでしょうか……本当になんて好青年……。ところで、さっきからずっと、デイジーと「自分」の二人しか口を開いていない?ように思えますが……もう一人の年下の女性は大方いまだに寝ているのだろうと想像がつきますが、トムはいったい何をやっているのでしょう?……妻のデイジーに頭でも上がらない?のでしょうか……ただだまーって、妻がしゃべるのを聞いているだけ?なのでしょうか……。

 

⑫ “Well, you ought to see her. She’s —-“

「あら、そうだった……あなたにぜひともしてもらわなくてはいけない……デイジーの子どもに会うことを。デイジーの子どもは――」

you は⑨と⑪同様、デイジーのセリフの中で話し相手を指すので、「自分」を指します。

her と She は⑩同様、デイジーの子どもを指します。

⑩でデイジーの子どもに会ったか、と聞かれた「自分」が⑪で一度もないと答えると、デイジーは「あら、そうだった……」と意外だったのか?てっきり「自分」はデイジーの子どもに会わせたものと思い込んでいたのか……まあなんにせよ、一度も会ってないならなおさら、是が非でも会わせなくては……そう思ったのでしょうか?……そしてデイジーの子どもに会わせたいという強い気持ちを「自分」に伝えた上で、またもや思いつき?でデイジーの子どもの話を続けようとしたところへ、どうも何か横やりでも入ったようです……デイジーのセリフが途切れているようです……。

 

⑬ Tom Buchanan, who had been hovering restlessly about the room, stopped and rested his hand on my shoulder.

「トム・ブキャナンが――トム・ブキャナンはずっと(身の置き所がないような様子で)立ったまま落ち着きなくうろうろとそのバラ色の空間内を歩き回っていたのが――落ち着きなくうろうろと歩き回るのをぴたりと止めて立ち止まり、そして置いたものがあるのだけど、それはトムの片手で、どこに置いたかというと自分の肩の上だった」

who は直前のTom Buchanan を指して言いかえています。どうしてわざわざ名字までつけたのでしょう?……まるで存在感が消えていたので、久々に登場したトムのことを読者に思い出させるため?なのでしょうか……。⑬で一番言いたいことは、Tom Buchanan が stopped and rested 〜したことなのだけど、でもずっとその場にいたはずなのにまるで消えたようになっていたトムがそれまでずっと何をしていたのか読者が気になるだろうから、who had 〜 the room の説明を付け加えているのではないでしょうか……。

the room は第11回の9ページ21行目に出てきたものと同じで、9ページ12-13行目のa bright rosy-colored space を指します。

his はTom Buchanan を指しています。

⑫までずっとデイジーのセリフが続いてきたのに、突然トムが出てきました……しかも、どうやらデイジーがしゃべり続けている間、バラ色の空間内を落ち着きなくうろうろと歩き回っていたようです……見方によっては、挙動不審?……デイジーはたしか、シカゴの話で大はしゃぎと言ってもいいほど大喜びしていました……一方、夫のトムは黙り込んだまま一言も発することなく、ただうろうろしていた?一度はデイジーに声をかけられていたのに…「シカゴに戻りましょう、トム、明日」と……要は、トムはデイジーをずっと無視していた?という見方もできなくもないような……どうして?変じゃない?……で、その様子のおかしいトムが、⑫でまだデイジーが子どもの話を続けているのに、横から割って入った?のではないでしょうか……もしかしたら、デイジーと「自分」の間に邪魔するような格好で入り込んできて「自分」の肩にトムが片手をかけた?のではないでしょうか……そういえば、考えてみたら、第7回で「自分」はトムとデイジー夫妻に会いに行ったと説明していましたが、「自分」の方は"夫婦"そろった二人一組に会いに行った意識というか感覚だったような?気がしますが、第9回で玄関先まで「自分」を出迎えに出ていたのはトム一人でした……そして今回の範囲で「自分」がずっと話をしてきたのはほぼデイジー一人で、なぜかトムはその会話に加わろうとしていないようでした(デイジーに呼びかけられても返事もしない……)……普通、夫と妻が二人そろって、どちらともそれぞれに縁のある(妻は親戚で、夫は大学で一緒)お客(様)の「自分」を出迎えたり、応対したりするものじゃない?でしょうか……これまた、なんだか不自然?おかしくない?でしょうか……もしかして、トムとデイジーの二人、喧嘩でもしてる?仲違なかたがいしてる?夫婦仲がうまくいってない?大丈夫?……

 

おつかれさまでした。初めて!た〜くさん、セリフが出てきました!嬉しいですねえ。楽しんでいただけましたか?

しゃべっていたのは、ほぼデイジーと「自分」だけでした……トムはだんまり?……もう一人の年下の女子はきっと相変わらず寝たままなのでしょう……。それしても、何か様子がおかしい、普通の常識とは外れたようなことばかり?に思えませんか……。ところで、第6回で最後に(7ページ10-11行目)、「自分」の住む"西島"と「自分」が訪ねていったトムとデイジー夫妻の住む"東島"には、the bizarre and not a little sinister contrast があると、西島と東島の対照的な違いは奇妙な上に少なからず不吉なものがあると言っていました。なんだか何もかもがあべこべに思えるトムとデイジー夫妻の有り様……"東島"を象徴している?のでしょうか……たしかに奇妙だし、二人の様子(もう一人の年下の女子も?)はなんとなく相手を不安にさせるものがある?ような……。本当にこの上なく好青年?らしい「自分」……こんな人たちと関わってて大丈夫?なんでしょうか……。

さて、今回の考えるヒントに上げたお題 「10ページ23-24行目 a singing compulsion とはどういうことを言っているのか」 ですが……③で説明したとおりです。それにしてもデイジーの声――作者はよほど印象づけたいのか、大事なポイントなのか……。読者の方々は身近にこんな声に思い当たる人がいますか?

次回はトムもしゃべります。デイジーもしゃべります。そして、寝てばっかり?いたベイカー嬢もしゃべります。楽しみにしていてください。

 

第14回の範囲は11ページ3行目から11ページ末尾から11行目まで("What you doing, 〜から、it was she “got done."まで)をみていきます。

次回の考えるヒントは……

  • 11ページ12-13行目 as if he were alert for something more とはどういうことを言っているのか

次回は会話が繰り広げられます……意味深いみしんなやりとりも?……ぜひまた一緒にみていってください。

 

最後に、物語を読むときに心にとめたいポイントをまとめます。

Point

・どうして作者はその言葉を使用したのか

・それぞれの登場人物に作者はどんな役割を割り当てているのか

・それぞれの登場人物のセリフや物語の展開を通じて作者は何を言おうとしているのか

 

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なお、今回の範囲の訳文を有料(700円)で掲載いたします。この連載はだいたい250回くらいになる予定なので、毎回訳文を購読いただいた場合には30回で2万円を超え、トータルでは18万円近くになることをご承知おきください。またいかなる場合も返金には応じられません。また購読いただいた訳文にご満足いただけるとは限らないことをあらかじめご承知おきください。なお、問い合わせなどはご遠慮ください。お断りいたします。

今回の範囲の訳文を有料(700円)で掲載いたします。

Posted by preciousgraceful-hm