Gatsby-11

このサイトは、英語で書かれた物語を一作品、最初から最後まで少しずつ読んでみようという試みです。

取り上げる作品は『The Great Gatsby』です。100年近く前に米国で出版された小説ですが、現代の日本人にも共感したり心を動かされるところが多々あると思います。

ぜひ一緒に、英語の原書を読んでみませんか。

(なお、このコンテンツはその著作者の解釈に基づくものであり、必ずしも正しいとは限らないことをご承知おきください。)

 

前回まで……トムとの再会を果たした「自分」ですが、終始トムのペースで進み、なんだかまるで「自分」が口を挟む余地などないかのようです。そうした様子からも、トムの人柄が、嫌われて当然じゃないかと誰もが納得しそうな人物だということがうかがわれます。要は、"自己中(心)"の一言に尽きる?でしょうか……。このトムと、そしてその妻のデイジーと、会ったことがきっかけで、「あの夏の出来事」が、「自分」が一年どころかわずか半年ほど?で故郷に帰るに至った出来事が、起こると第7回で言っていました……。

さて前回はお屋敷の外の様子をみましたが、今回はきっとデイジーが待っているはずのお屋敷の中に入ります。外観はずいぶん洒落た素敵な館のようでした……それでは中の様子はどうでしょうか? そのあたりに注意しながら今回の範囲をみていきましょう。

 

原文はOne More Libraryの『The Great Gatsby』を使用します。

第11回の範囲は9ページ12行目から9ページ末尾から10行目まで(We walked through 〜から slowly to the floor.まで)をみていきます。

まず、今回の考えるヒントを上げます。

  • 9ページ末尾から12行目 the caught wind died out about the room, とはどういうことを言っているのか

 

なお、特に断っていなければ、基本的に次に上げる辞書の訳語や定義・意味に基づいて説明します。

主に使用する辞書

『リーダーズ英和中辞典(第2版)』(野村恵造)(研究社 2017)

『Pocket Oxford English Dictionary (Eleventh Edition)』(Maurice Waite) (Oxford University Press 2013)

『岩波国語辞典(第七版新版)』(西尾実 岩淵悦太郎 水谷静夫)(岩波書店 2017)

 

それでは今回の範囲をみていきます。

① We walked through a high hallway into a bright rosy-colored space, fragilely bound into the house by French windows at either end.

「トムの屋敷内に入った自分とトムは歩いて、(おそらく)天井の高い廊下を通って、明るいバラ色(薄い紅色)の空間の中に入った……その空間は(屋内というよりも屋外のような印象で)ゆるく(かろうじて)館につなぎとめられて館の一部になっていた……館とつなげられていた部分は(屋外に出入りできる)フランス窓(観音開きの扉)の部分で、その窓(扉)はその空間の両端にあった」

We は前回出てきた I と Tom Buchanan を指します。

前回は、玄関ポーチで待っていたトムと「自分」はその場で少し言葉を交わし、前庭の景観を眺めてから、館の中に入っていくところで終わっていました。①はその玄関を入ったところから始まっているようです……廊下を抜けて案内されたところは、どうやらお屋敷のいわゆる通常の部屋ではないようです……屋敷内の部屋でもないけど、屋外でもない、そういういわば中間的な位置づけの…なんでしょうか…サンルーム?みたいなところ?なのでしょうか……その空間は一応屋敷内の位置づけ?らしく、屋外とは観音開きの扉でつながっている?ようです……そしてその空間を色で表すなら、薄い紅色らしい……どうも普通は居間とか客間とかに案内されるのかと思いそうなところですが、ん?なんなのでしょう…「自分」はお客(様)とみなされているのでしょうか? お客(様)の扱いを受けているといえるのでしょうか? ん?……なんだか違和感がありませんか?……それとも、そこが客間?……

 

② The windows were ajar and gleaming white against the fresh grass outside that seemed to grow a little way into the house.

「バラ色の空間の(屋外に出入りできる)(両端の)フランス窓(観音開きの扉)が少し開いていた……その窓(扉)のガラスがキラキラと白く輝いていた……その窓(扉)のガラスの向こうは屋外でみずみずしい草(芝生)が生えているのが見えた……その草は(まるで)少し屋外と屋内の境を越えて館の中にまで生えているように思われた」

The windows は①に出てきた French windows at either end を指しています。

that は直前の the fresh grass outside を指して言いかえています。

①で案内され通された空間の追加情報を説明しているようです……まず、両端にある観音開きの扉が開いていた……次にその扉のガラスが白っぽくキラキラと光り輝いていた……そのガラスの向こうには屋外に生えている草(芝生)が見えた……その草はまるで屋内にまで入り込んで生えているように見えた……その鮮やかな緑がきっと目に留まったのではないでしょうか?……

 

③ A breeze blew through the room, blew curtains in at one end and out the other like pale flags, twisting them up toward the frosted wedding-cake of the ceiling and then rippled over the wine-colored rug, making a shadow on it as wind does on the sea.

「そよ風が吹き込んできてその部屋(空間)の中を通り抜けていき、そのそよ風が一方の端にあるフランス窓(観音開きの扉)にかかったカーテンを屋内へと押すように吹き込み、なおかつもう一方の端にあるフランス窓(観音開きの扉)にかかったカーテンを屋外へと押し出すように吹き流れた……その様は薄い色の旗がはためいているような具合で……そのそよ風がその両端にあるカーテンを斜め上へとねじあげるように下から吹き上がり、天井にある真っ白な砂糖をまぶしたウェディングケーキ(のように見えるシャンデリア?)の方に向かってそれらのカーテンを吹き上げた……それから今度はそのそよ風がさざ波を立てて(床に敷かれた)ワイン色(ぶどう酒の色)の敷物全体に向かって吹き下ろし、その敷物の上に影を作った……その様は海の上で吹く風が海面にさざ波を立てて影を作る様子と同じだった」

the room は①に出てきた a bright rosy-colored space を指しています。

and out the other は、and (blew curtains) out (at) the other (end) と、それぞれ blew curtains、at、end が省略されていると思われます。

them は curtains at one end と curtains at the other end を指すと思われます。

it は the wine-colored rug を指しています。

does は (ripples over the sea and) makes a shadow を指して言いかえていると思われます。

①で入っていった空間の追加説明を加えているようです……観音開きの扉が開けてあるので風が入ってくるようです……その風は一方の扉から入り、その空間内を吹き抜け、もう一方の扉から屋外へと抜けているようです……どうしてそんなことがわかるのか?…扉にかけられたカーテンが屋内の方に向かって吹き入れられているものと、屋外の方に向かって吹き出されているものとあるからのようです……そんな具合で吹き込んできた風はカーテンを天井の方に向かって吹き上げた後、床の方に向かって吹き下ろしているようです……その風の吹く向きに応じて、きっとカーテンもふわっと吹き上げられたり、すとんと吹き下ろされたり、揺れ動いているのではないでしょうか?……そして風が吹き下りるときには、海面にさざ波が立ち影ができるのと同じような具合で、床の敷物が海面と同じようにゆらゆらと揺れ動き、床の敷物の上にまるでさざ波が立ち影ができているように見えているのではないでしょうか?……空間全体がバラ色で、ガラス扉がきらきらと白く輝き、屋外の芝生が屋内に生えているような錯覚を覚えるほど鮮やかな緑が目につき、屋外から屋内へと吹き込み、そしてまた屋外へと吹き出している風が、カーテンを揺らめかせ、天井からはウェディングケーキを見立てたような真っ白いシャンデリアが見下ろし、床ではヴァイオレットの敷物がさざ波を立てて影を描いている……なんだかちょっと幻想的?な雰囲気でも?かもし出しているようにも?感じられませんか……なにかまったくの別世界……現実とはかけ離れた非日常の世界にでも紛れ込んだような?そんな感じも?ありませんか……

 

④ The only completely stationary object in the room was an enormous couch on which two young women were buoyed up as though upon anchored balloon.

「唯一完全に静止している物体がその部屋(空間)にはあったのだけど、それは大きなカウチで、その上に二人の若い女性が浮かんでい(るようにみえ)た……まるで重しで飛ばないようにしてある風船の上にその二人の若い女性が浮かんでいるようだった」

the room は③と同様です。

which は an enormous couch を指して言いかえています。本当は were buoyed up の後に on と一緒に来るはずのものが、on と一緒に引っ張られて前に出ています。

as though の後に two young women were buoyed up が省略されています。

③でカーテンの揺れ動くのが目につくようでした……そうやってふわふわゆらゆら動き続けているカーテンとその影にもしかしたら最初は気を取られていた?のでしょうか……でも少し落ち着くと、あれ、なんかどっしりと構えてまったく動かないものがあるぞ…と気づいた?のでしょうか……よく見ると?…大きな大きなカウチだ……ん?…おやおや?…その上には…若い女性が二人いるじゃないか…と気づいた?ようです……その様子がまるでそのカウチの上に二人がぷわ〜んとぽわ〜んと浮かんでいるように見えたようです……重しで飛ばないように押さえてある風船の上に乗ってるように見えた…そうですから、その二人の若い女性は今にもぷわ〜んとぽわ〜んと飛んでいきそうな様子にでも?見えたりしていたのではないでしょうか?……

 

⑤ They were both in white, and their dresses were rippling and fluttering as if they had just been blown back in after a short flight around the house.

「大きなカウチの上に浮かんでいるように見えた二人の若い女性はどちらも白い洋服を着ていて、その二人の着ている洋服はさざ波を立ててひらひらとはためいていた……その様子はまるでその二人の若い女性が今しがた風に吹かれて戻ってきて所定の場所に落ち着いたといった印象だった……そうやって戻る前に短い時間あるいは距離だけど館の中をぐるりと一周、飛び回ってきたのではないかという趣きだった」

They は④に出てくる two young women を指します。their も同様です。最後の they もそうです。

④で二人の若い女性がカウチの上から今にも飛んでいきそうな様子がうかがわれましたが、⑤ではさらに詳しくその様子を説明しているようです……白い洋服を着ていて、そのスカート?や上着も?でしょうか…さざ波を立てるようにひらひらゆらゆらと動いているようです……その様が、ちょっと屋敷内をぐるりと飛び回ってきてさっき戻ってきたところで今のカウチに今の状態で落ち着いたばかりだと言わんばかりの様子に見えたようです……この二人の若い女性の洋服も、③でみたカーテンと同じように、バラ色の空間内を吹き渡る風に吹かれて片時も止まることなく揺らめき続けている?のかもしれません……。ところでカウチの上の二人の若い女性って、ん?座ってるの?え?もしかして、横になってたりする?ん?……いったい、どんな具合で洋服がひらひらゆらゆら揺らめいているのでしょうか?……不思議な気がしませんか?……

 

⑥ I must have stood for a few moments listening to the whip and snap of the curtains and the groan of a picture on the wall.

「自分はきっと立ったままでいたのだろうと思う……短い時間の間……何かの音を聞きながら……じゃあ、何の音かというと、(おそらく)カーテン(レール)のパチンとかピシッとかカチッとかそういう音と、壁にかけられた(額に入った一枚の)絵のギシギシうなるような音だった」

⑤まで目に入ったものの説明が続いていましたが、⑥では耳からの情報が付け加えられているようです……風が吹き込んでは吹き抜けていく空間内で何か物音が、カタカタと物音がするようです……何の音だろう?…カーテンが風に吹きあおられる度に鳴っているらしい音かな?…壁にかかった絵も風に吹きあおられては何か音がしてないか?……そんなふうに気づいたのかもしれません……。「自分」はそうやって、案内され通された空間の様子をまずは目で見て耳で聞いて観察していたようです…立ったままで……お客(様)のはずなのに、椅子を勧められるでもなく?…放ったらかし?……だったりしたのでしょうか?……

 

⑦ Then there was a boom as Tom Buchanan shut the rear windows and the caught wind died out about the room, and the curtains and the rugs and the two young women ballooned slowly to the floor.

「そうやって案内され通された空間内の様子を目で見て耳で聞いてひと通り観察した後に、ブーンとうなるような音が一回(だけ)した……そのときトム・ブキャナンがその空間内の後方にあるフランス窓(観音開きの扉)を閉めた……トムがそうやって後方にある窓(扉)を閉めた結果、その空間内に留め置かれた、つまり逃げ場を失った風がすっと(勢いを失い)消えた……その空間内全体で……そしてその空間内全体で風がすっかり消えてしまうと、風がなくなったから、それに伴って一緒に、カーテンも、敷物も、二人の若い女性(の洋服)も、最後に一度ふわりと上方向にふくらんでから、ふわっとゆっくりしぼむように下方向へと、つまり(重力に従い)床の方へと落ち着いていった」

今回の考えるヒントに上げた箇所が出てきました。

⑥までみたところでは、案内され通された空間には屋外から吹き渡ってくる風がずっと吹き抜けているようでした……どうしてそういう風の通り道ができていたのか?…それは、その空間の両端にそれぞれ観音開きの扉があり、その扉がどちらも開けてあったので、一方から風が入って、もう一方から風が出ていくという流れができていたようです……ところが、その空間に案内したトムが、その空間内の後方にある扉をどうも閉めたようです……一方でも扉を締めて風の通り道をふさいでしまえば、風の流れは当然止まってしまうのではないでしょうか……だから、トムが後方の扉を締めた瞬間にブーンと風のうなる音がして途端に空間内の風がやみ、同時にふわふわひらひらゆらゆら動いていたものが何もかもすべてその動きを止めてしまった……風がなければ動かないはずですから……

ということで、問題の箇所は、空間内で行き場を失った風が、いわば失速して、その空間内で消えてしまった……要は風がやんだ…ということではないでしょうか?

⑥までは「自分」の観察したところが説明されていましたが、⑦ではトムの一方の扉を閉めるという行為により、空間内の風がやむ、という変化が起こっているようです……風がやむと…同時に風に吹かれてふわふわひらひらゆらゆら動いていたものもすべて、止まってしまったようです……。

 

おつかれさまでした。捉えにくいところやわかりにくいところが結構あったかもしれません……が、「自分」が案内され通された屋内の空間の様子がイメージしていただけたでしょうか?

何より!(素通りしてましたけど)新たな登場人物が出ていました!若い二人の女性…という情報しかまだありませんが……このうち一人は、きっとトムの妻デイジーではないでしょうか? では、もう一人は?……(とにかくこの作者は、もったいつけて引っぱりますねえ……)

大金持ちの豪邸にある非日常的な空間?…そこにふわふわとまるで浮かんでいるかのような若い二人の女性……「自分」はどんな気持ちになったのでしょうねえ……辛抱強くて、地に足のついた?「自分」の目には、その光景はどんなふうに映ったのでしょうか?……もしかしたら、目くらましにでもあったような気分にでもなったりとかしていたり?するかもしれない?……そんな可能性も考えられなくはない?のではないでしょうか……。もし読者が「自分」の立場だったら…どうですか?

今回の考えるヒントに上げたお題 「9ページ末尾から12行目 the caught wind died out about the room, とはどういうことを言っているのか」 ですが…… ⑦で説明したとおりです。

バラ色の空間、白くキラキラ輝くガラス扉、鮮やかな緑、真っ白なウェディングケーキに見立てたようなシャンデリア、ヴァイオレットの軽やかな敷物、ふわふわゆらゆらとひらめく淡い色のカーテン、ひらひらゆらゆら揺れ動く白い軽やかな生地の洋服……どれもとても女性的なフェミニンな印象を受けませんか?……これらがすべてトムの妻であるデイジーを象徴しているものだとしたら……そしてそのふわふわひらひらゆらゆらと軽やかな動きを、デイジーを象徴する動きを止めたのが、夫であるトム……もしかしたら、こうしたところにも、何か作者の思いが込められていたり?するかもしれない?……。

 

さあ、今回登場した二人の若い女性、どんな人なのでしょうか? デイジーにしても、トムの妻という情報以外ほとんど何も手がかりがないも同然ですし、もう一人にいたっては、名前すらもまだわかりません……。

そのあたりを次回みていきましょう。

 

第12回の範囲は9ページ末尾から9行目から10ページ16行目まで(The younger of the two 〜から、a stunned tribute from me.まで)をみていきます。

次回の考えるヒントは……

  • 10ページ9-10行目 an irrelevant criticism that made it no less charming. とはどういうことを言っているのか

次回も二人の若い女性の様子を説明する描写の部分が多いですが……ぜひ一緒に読んでみてください。

 

最後に、物語を読むときに心にとめたいポイントをまとめます。

Point

・どうして作者はその言葉を使用したのか

・それぞれの登場人物に作者はどんな役割を割り当てているのか

・それぞれの登場人物のセリフや物語の展開を通じて作者は何を言おうとしているのか

 

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なお、今回の範囲の訳文を有料(700円)で掲載いたします。この連載はだいたい250回くらいになる予定なので、毎回訳文を購読いただいた場合には30回で2万円を超え、トータルでは18万円近くになることをご承知おきください。またいかなる場合も返金には応じられません。また購読いただいた訳文にご満足いただけるとは限らないことをあらかじめご承知おきください。なお、問い合わせなどはご遠慮ください。お断りいたします。

今回の範囲の訳文を有料(700円)で掲載いたします。

Posted by preciousgraceful-hm