Gatsby-1
このサイトは、英語で書かれた物語を一作品、最初から最後まで少しずつ読んでみようという試みです。
取り上げる作品は『The Great Gatsby』です。100年近く前に米国で出版された小説ですが、現代の日本人にも共感したり心を動かされるところが多々あると思います。
ぜひ一緒に、英語の原書を読んでみませんか。
(なお、このコンテンツはその著作者の解釈に基づくものであり、必ずしも正しいとは限らないことをご承知おきください。)
原文はOne More Libraryの『The Great Gatsby』を使用します。
第1回の範囲は、タイトル(1ページ)と冒頭の詩(3ページ)をみていきます。
まず、今回の考えるヒントを上げます。
- タイトルの"Great"は何を表しているのか
なお、特に断っていなければ、基本的に次に上げる辞書の訳語や定義・意味に基づいて説明します。
主に使用する辞書
『リーダーズ英和中辞典(第2版)』(野村恵造)(研究社 2017)
『Pocket Oxford English Dictionary (Eleventh Edition)』(Maurice Waite) (Oxford University Press 2013)
『岩波国語辞典(第七版新版)』(西尾実 岩淵悦太郎 水谷静夫)(岩波書店 2017)
それでは、タイトルからみていきます。
① The Great Gatsby
「great な唯一無二の Gatsby」
この The は Gatsby が唯一無二 であること を表しています。
Gatsby が great であると、作者は言っています。では、この Great が何を表しているのか……それはタイトルからはわかりません。
Gatsby は、辞書には見当たらないので、人名とか地名とか、特定のものを表しているのだろうなと推測できます。
タイトルから分かるのは…… 「great な唯一無二の Gatsby」のお話らしいということ…
では、とりあえず Great は棚上げにして、冒頭の詩をみたいと思います。
② Then wear the gold hat, if that will move her;
「金ピカの帽子を身に着ければ、誰だかわからないけれど一人の女性を動かすことになるだろうね、それならば、そういうことならば、金ピカの帽子を身に着けたらどうよ」(と促している)
最初の Then は、「そうであるならば」「それならば」と前に上げられた前提を受けて「〜となる」とつなぐ役目を果たします。でもここでは前提抜きでいきなり Then で始まっています。どうしてでしょうか? どんな前提があるのでしょう?
Then と wear の間には you が省略されていて、 (you) wear ~と命令形になっています。
gold…金といえば…日本人なら…豊臣秀吉の大阪城…黄金の茶室…「金ピカ」…かもしれない……。
the gold hat は、もしかしたら、とにかく目立って人目を引くものを読者に想像させたいと作者は思っているのかもしれません。
前提や仮定を表す if が出てきました。that はコンマの前の部分 (you) wear the gold hat を指しています。
her 誰を指しているのでしょうか。具体的な名前などはどこにも見当たりません。誰を指しているのか、どのような女性を指しているのか、読者が自ら考える必要があるかもしれません。
最後の";"(セミコロン)は、後に続く文と関わりがあることを示しています。
さて、冒頭のThen…どんな前提があるのでしょうか? その答えは、コンマの後に続くif 〜の部分ではないでしょうか?
なんだか、ニワトリが先かタマゴが先か…みたいな文に思えますけど…、たぶん、if 〜の部分を冒頭に持ってくると頭でっかちでかっこ悪い文になってしまうのでこの語順にせざるをえなかったのでは……。
③ If you can bounce high, bounce for her too,
「もし高く飛び上がれるんだったら、(金ピカ帽子を身に着けて)一人の女性の目につくように飛び上がれ」
②が “;"(セミコロン)で終わっていましたから、②の内容にプラスして付け加えているニュアンスです。
you は誰を表すのでしょうか?
二つ目の bounce の前には you が省略されていて、(you) bounce で命令形になっています。
この her も誰だかわかりませんが、ただ、さっき出てきた her と同じ女性を指すのではないでしょうか。
今度は If 〜で素直に始まっているのでわかりやすいですね。さて、her って誰? you って誰?
④ Till she cry “Lover, gold-hatted, high-bouncing lover, I must have you!"
「一人の女性が大声で叫ぶまで――『恋人よ、金ピカの帽子を身に着け、高く飛び上がっている恋人よ、絶対あなたを手に入れなくちゃ!』と」
she は誰を指すのでしょうか? おそらく 前の文のher と同じ女性を表すと考えられます。ここでは現実にはなっていない仮定の、いわば条件を表しています。
gold-hatted で high-bouncing な恋人……ん? これって、②と③に出てきた条件に当てはまる you のことを指していませんか?
I は誰を表すのでしょうか? she が口にしている言葉なので、結局 she(つまりher)です。
最後の you は ③ にも出てきました。さて、この you は gold-hatted, high-bouncing lover を指していませんか?
さて、her って誰? you って誰? ということですが…… you って gold-hatted, high-bouncing lover じゃないか……とすると、you は she (her) の恋人…しかも金ピカ帽子を身に着け、高く飛び上がっている恋人……金ピカ帽子で高く飛び上がって目立ってる恋人 (you) だったら、she (her) は絶対 you を手にしなくっちゃ……と大声で叫ぶはず……だから、そう叫ばせるまで you は金ピカ帽子を身に着け高く飛び上がれ……そう促しているように読めませんか?
そうすると、この詩に出てくる you と her (she) は、特定の誰かを指しているのではなく、漠然と、そういう派手で目立つ男に飛びつくような女と、そういう女の気を引きたい男を指しているのではないでしょうか。
なお、THOMAS PARKE D’INVILLIERS というのは、半ば作者自身であり、半ば作者の創作した架空の人物のようです。
作者以外に実在する特定の詩人ではないようです。
さて、冒頭の詩をみたところでは、どうも派手に目立つ金持ちの男に飛びつく女とそういう女の気を引きたい男が出てくる話なのだろうか…と思われますが……
ではタイトルの Great は何を表しているのか、ということですが……冒頭の詩だけをみてそれを判断するのは早まってしまうのではないかと……それはこのお話の最後まで読まなければ、作者が何を表そうとしたのか、作者の思いはわからないのではないかと……。ですから、「タイトルの Great は何を表しているのか」ということを常に頭の片隅におきながら読んでいただきたいのですが……
その上であえて申し上げますと、タイトルの Great は「偉大な」「立派な」という意味で使われているのではないかと……。
その根拠はおいおい作者の思いがうかがわれる箇所を指摘して説明していきたいと思います。
そして Gatsby とは特定の「何」を指すのか、これも本文をみていく中で明らかになります。(Chapter 1 の比較的早い段階で出てきます。)
さて、第2回では Chapter 1 の最初から第4段落第1文まで(In my younger and 〜から admission that it has a limit. まで)をみていきます。
第2回の考えるヒントは……
- 第3段落第3文前半 The abnormal mind is quick to detect and attach itself to this quality when it appears in a normal person, とは、具体的にはどういうことを言っているのか
なお、この作品は、とてもむずかしい、わかりにくい文章がたびたび出てきます。特に Chapter 1 の第2回の範囲は何を言っているのかさっぱり意味がわからず途方に暮れそうになってもちっとも不思議ではないくらい……
でも、それほどむずかしくもないし、何を言っているのかちゃんと分かる、話の展開を追っていける比較的簡単な文章も必ず合間合間に出てきます。
だから、必ず読みやすい文章も出てくると信じて、読み続けてみてください。
最後に、物語を読むときに心にとめたいポイントをまとめます。
・どうして作者はその言葉を使用したのか
・それぞれの登場人物に作者はどんな役割を割り当てているのか
・それぞれの登場人物のセリフや物語の展開を通じて作者は何を言おうとしているのか
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なお、今回の範囲の訳文を有料(700円)で掲載いたします。この連載はだいたい250回くらいになる予定なので、毎回訳文を購読いただいた場合には30回で2万円を超え、トータルでは18万円近くになることをご承知おきください。またいかなる場合も返金には応じられません。また購読いただいた訳文にご満足いただけるとは限らないことをあらかじめご承知おきください。なお、問い合わせなどはご遠慮ください。お断りいたします。