Gatsby-34
このサイトは、英語で書かれた物語を一作品、最初から最後まで少しずつ読んでみようという試みです。
取り上げる作品は『The Great Gatsby』です。100年近く前に米国で出版された小説ですが、現代の日本人にも共感したり心を動かされるところが多々あると思います。
ぜひ一緒に、英語の原書を読んでみませんか。
(なお、このコンテンツはその著作者の解釈に基づくものであり、必ずしも正しいとは限らないことをご承知おきください。)
前回まで……爆弾ボディ?の女が、あろうことか夫のウィルソンの前で(夫に見えないようにしていたかもしれないけど)、トムに色目?を使い?媚?を売る?……いつものごとく?場所を変えて落ち合う約束をして、店を出たトム――外では、驚いたことに、あのドクター(先生)と呼ばれている人物と言葉を交わしたようです……トムの勘違いな発言にもきちんと応じて、寛大にも?忠告・注意を促してくれているのに、愚かなトムは気づかないしわからないようで……というわけで、トム、女、そして「自分」の三人で、ニューヨーク(都市圏)に向かったようです……続きをみていきましょう。
原文はOne More Libraryの『The Great Gatsby』を使用します。
第34回の範囲は22ページ末尾から3行目の途中から23ページ19行目まで(– or not quite together, for 〜から、as he came to the taxi-window.まで)をみていきます。
まず、今回の考えるヒントを上げます。
- 22ページ末尾から2-1行目 Tom deferred that much to the sensibilities of those East Eggers who might be on the train. とはどういうことを言っているのか
なお、特に断っていなければ、基本的に次に上げる辞書の訳語や定義・意味に基づいて説明します。
主に使用する辞書
『リーダーズ英和中辞典(第2版)』(野村恵造)(研究社 2017)
『Pocket Oxford English Dictionary (Eleventh Edition)』(Maurice Waite) (Oxford University Press 2013)
『岩波国語辞典(第七版新版)』(西尾実 岩淵悦太郎 水谷静夫)(岩波書店 2017)
それでは今回の範囲をみていきましょう。
① — or not quite together, for Mrs. Wilson sat discreetly in another car.
「――というか、たしかに一応トムと女と「自分」の三人でニューヨーク(都市圏)に向かったのだけれども、厳密に言えば、完全に三人一緒ではなくて……どうしてかというと、ウィルソン夫人が座ったからだ……分別を見せ思慮深く慎重に慎み深く……他の車両に……」
Mrs. Wilson という表現が使われているのは、このときの行い・振る舞いは、ウィルソンの妻としてあるべき姿だったから?という意味合いが込められている?のでしょうか?……それとも、女は前回の最後(22ページ末尾から4行目)では his[Tom’s] girl と説明されていたようでしたが、本当は、ウィルソンの妻なのに……とその立場を強調する?意味合いでも?あるのでしょうか?……。
前回の最後に、トムと女、そして「自分」の三人でニューヨーク(都市圏)に行った、と説明していたようでした……ここでは、たしかに行くには行ったのだけれど、厳密に言えば三人ではなかったのだと、説明しているようです……どうしてか――ウィルソン夫人がトムと「自分」が乗った電車の車両とは異なる車両に乗ったからだと、説明しているようです……たとえば、もしトムと女が電車で並んで座っていたら、それはあまりに露骨すぎると……いくらなんでもそこまで露骨なことはできない、そこははばかられると……だから、トムの方も?女の方も?そこは遠慮したと……せめて、ニューヨーク(都市圏)に着くまでの間は、同じ電車に乗ってはいるけれど、一応別行動という形を取ったということではないでしょうか?……そうしてみると、トムは、第31回(20ページ末尾から3行目―21ページ1行目)の説明では女の存在を誇示したがっていたようでしたが、もしかしたら、トムの知り合いがいる場所で、俺様には妻以外の女がいるのだぞと、見せびらかしたがっていた?他の男にうらやましがられたかった?のでしょうか……で、電車の場合は、もしかしたら、トムがうらやましがらせたいと思う相手がいる確率が低かった?飲食店ではその確率・可能性が高かった?……だから、こうした行動の違いになって表れた?……なんでしょうねえ……女の方も、おそらくきっと?トムが女の存在を自慢したがっていることに気づいていた?のではないでしょうか?……そうすると、トムが連れ歩いて自慢したいのはトムの妻であるデイジーではなく、女の方なのだと女自身が思うようになるのが自然?な流れ?でしょうか?……そうしたら、女は、トムにとって、トムの妻であるデイジーよりも、女の方が価値がある特別な存在なのだと、そんなふうに思うようになったり?しないでしょうか?……で、それで気分良かったり?したかも?しれない?優越感に?浸れたり?したかも?しれない?……だからこそ、トムの自宅にあんなこれみよがしな?電話をかけられた?……(逆にデイジーは、劣等感を味あわされる?だから傷つく?怒る?……妻であるデイジーがいるのに、どうして他の女に手を出すのか?と……デイジーだけでは不足・不満があるのか?と……)……ところで、トムは、妻のデイジーよりも女の方が価値があるから女を連れ歩いて自慢していたのでしょうか?……もし、妻がいる、しかもあんなに魅力的で素敵な女性である妻が…その上で、そんな妻がいる上で、その上になお、俺様には他にも女がいるのだぞと、どうだ、すごいだろ、モテるだろ、うらやましいだろ……というまるで?子供じみた気持ちで?女を連れ歩いていたとしたら?……どうでしょうか?……結局、トムは、トム自身のことしかない?"自己中(心)"の最たるもの?で、別に女に本気なわけではないし?かといってデイジーを大切に思っているわけでもないし?だとしたら――自らの欲望を満たし、自らの不満・不足を解消することしか興味がない?としたら――結局トム自身にしか興味がないし、女もデイジーも「自分」もウィルソンも何もかもが、俺様の欲望を満たし、俺様の不満・不足を解消する道具でしかないとしたら……女もデイジーも「自分」もウィルソンも何もかもを(勘違いさせて裏切り)傷つけ怒らせる?だけに終わらない?でしょうか?……トムみたいなのにトムのためを思ってまともに話をしてやるのは、もしかしたらドクター(先生)と呼ばれている人物のような人ぐらいしかいない?のかもしれません……でも、そういう人の言葉にも耳を貸さない?というより、その真意に気づけない、わからない……やっぱり、救いがたい?……。
② Tom deferred that much to the sensibilities of those East Eggers who might be on the train.
「トムは、譲歩した……ウィルソン夫人と同じ車両に乗らない程度には……何に対してかというと、不愉快な出来事に怒りやすい性質だ……どんな人のかというと、あの東島に住む人たちだ……その東島に住む人たちは、ある可能性があった……何かというと、そのトムとウィルソン夫人と同じ電車に乗っていることだ……」
今回の考えるヒントに上げた箇所が出てきました。
that は、①で説明のあった、ウィルソン夫人がトムと異なる車両に乗ったことを指しているのではないでしょうか?
sensibilities は、the quality of being sensitive to shocking or offensive matters (衝撃的なことや不愉快なことに対して sensitive な性質)という意味があるようで、さらに sensitive は、easily offended or upset (すぐに不機嫌になったり怒ったりする様子)という意味があるようですので、ここでは、不愉快な出来事に怒りやすい性質に対して譲歩した……つまり、既婚者であるトムが妻以外の女と外出する(あるいは既婚者である女が夫以外のトムと外出する)という行いを不愉快な出来事と解釈し、なおかつその行い(不愉快な出来事)に怒ると思われる人がいるから、そういう人を怒らせない方がいい、そこは遠慮しといた方がいい、ということで、同じ電車に乗りはするけれど、車両は違う車両に乗ったと……そういうことではないでしょうか? で、そんなふうに怒りそうな人とは?――トムが妻のデイジーと住んでいる邸宅のある東島の人たちだと……あれですね、東島には白亜の大豪邸が並ぶ高級住宅地?みたいなところがあったようですけれど(第7回 7ページ末尾から15-14行目)、そういうところに住む人でも、トムみたいにけっこう?電車に乗ったりする?ということでしょうか?……要は、トムの近所の口さがない人たちのことを考えて、あんまりあからさまに人の神経逆なでするようなことは謹んだ、やめておいた、ということではないでしょうか?……トムは、自慢して見せつけているつもりでいてもうらやましいと思うどころか、妻のいる男が何やってんだ、不届き千万!みたいな調子で?怒りそうな人が電車には乗っている確率?可能性?が高かった?のかもしれない?……そうなると、女と一緒にいる(トムの)メリットよりもデメリットの方が大きくなる?……そういう計算もあって?「自分」の目から見たら、謹んでいるように見える行動をトムは取った?のかもしれません……やっぱり、トム自身の利害しか考えてない?……決して、女のためを思い、デイジーのためを思っての行動ではない?……どこまでも"自己中(心)"……。
those は、「あの」「例の」と特定のもの(人)を指すニュアンスで使われているのではないでしょうか?
who は、直前の (those) East Eggers を指して言いかえているのではないでしょうか?
トムが、譲歩した、とありますから、①でウィルソン夫人がトムとは異なる車両に乗ったのは、やっぱりトムの意向に従ってのこと?なのでしょうね……なんでもトムの言いなり状態?……そういう意味では、夫のウィルソンも、その妻である女も、一緒のような?……だからこそ、トムは相手にしている?……なんだか、本っ当!トムって嫌な奴 ⁉……。
③ She had changed her dress to a brown figured muslin, which stretched tight over her rather wide hips as Tom helped her to the platform in New York.
「ウィルソン夫人は、変えていた……ウィルソン夫人の衣服を……何に変えていたかというと、茶色の(意匠)模様のある柔らかい綿織物(の衣服)に……その茶色の(意匠)模様のある柔らかい綿織物の衣服は、伸びていた……ぴったりぴっちりと……あるものを覆った状態で……それは何かというと、ウィルソン夫人のかなり相当幅の広いヒップだ……そんなふうに、その衣服がウィルソン夫人のかなり相当幅の広いヒップをぴったりぴっちりと覆った状態で伸びていたのは、ちょうどトムがあることをしたときだった……それは何かというと、トムが助けた……ウィルソン夫人を……あるところに到達するのを……それは(駅の)プラットフォームで……どこにあるかというと、ニューヨーク(都市圏)だ……」
She は、①で出てきた Mrs. Wilson を指すのではないでしょうか? her も(すべて)同様ではないでしょうか?
which は、直前の a brown figured muslin を指して言いかえていると思われます。
トムと「自分」と一緒に電車に乗った(車両は違うけど)ウィルソン夫人の様子を説明しているようです……衣服を着替えていたようです……たしか、灰の谷のすぐそばにある自動車修理工場・ガソリンスタンドの店で会ったときには、斑点のあるまだらの濃い暗い青色の柔らかい薄地のデシンでできた衣服を着ていたようでした(第32回 22ページ6-7行目)……今度は、茶色の(意匠)模様のある柔らかい綿織物の衣服に着替えていたようです……なんでしょうねえ……家着・部屋着から、トムと出かけるための衣服に着替えたのでしょうか?……衣服の色自体は、どちらも落ち着いた感じ?印象?でしょうか……地味で目立たない?ようにしている?のでしょうか?もしかしたら……一応、日陰の女?だから?……そういう暗示?があるのでしょうか?……で、その衣服を着た姿が、ウィルソン夫人の大きく?横に広がった?ヒップをぴったりぴっちりと覆った状態で伸びていたと……それが(「自分」の)目についたのが、どうやらトムがウィルソン夫人を助けて駅のプラットフォームに下りさせた?ときではないでしょうか?……なんでしょうねえ……違う車両に乗っていたはずですけど、もしかしたらトムと「自分」がさっさと電車の車両から駅のプラットフォームに下りて、そしてウィルソン夫人が乗っていた車両の前まで移動し、そしてまだ車両に乗った状態でいたウィルソン夫人が車両から駅のプラットフォームに下りるのを助けてやった?のでしょうか?……で、そのときに、トムがウィルソン夫人を助けている間、そばにいた?と推測される「自分」は、ウィルソン夫人の衣服の生地が、ヒップのところでピターッとピチーっと伸び切っている?のを見た?そこが目についた?のではないでしょうか?……爆弾ボディにぴっちぴちの衣服を身に着けていた?のでしょうか?……なんだか、やっぱり身体中の活力・生気が今にも爆発しそうな?……ぱっと見は地味だけど、内に秘めたものがすごい?……そんな暗示が?ある?かも?……。
④ At the news-stand she bought a copy of TOWN TATTLE and a moving-picture magazine, and in the station drug-store some cold cream and a small flask of perfume.
【One More Library の原書データでは、TATTLE.(ピリオドあり)となっていますが、Scribner の書籍によれば、TATTLE(ピリオドなし)が正しいようですので、訂正しておきます。】
「(駅)の新聞雑誌の売店で、ウィルソン夫人は、買った……一部……『街のゴシップ』という雑誌?と、一冊の映画雑誌を……そうやって(駅の)新聞雑誌の売店で『街のゴシップ』という雑誌を一部と一冊の映画雑誌を買った後、今度は、ある場所で……どこかというと、駅の医薬品化粧品雑貨店で、(買った)……何をかというと、いくらか・多少の化粧用油性クリームと、小さい瓶の香水だ……」
she は、③と同じく、①で出てきた Mrs. Wilson を指しているのではないでしょうか?
in the station drug-store と some cold cream の間には、she bought が省略されているのではないでしょうか?(つまり、(in the station drug-store) she bought (some cold cream and a small flask of perfume.)となる。)
flask は、a conical or round bottle with a narrow neck (円錐形または丸い形をした瓶で、一部が細くくびれた形をしているもの)を表すようです。
③でトムと「自分」とウィルソン夫人は電車の車両から駅のプラットフォームに下り、そしておそらく?そのプラットフォームにある?売店に寄った?のでしょうか?……で、ウィルソン夫人が、『街のゴシップ』という雑誌と映画雑誌を一部ずつ買ったようです……それから、もしかしたら改札を出た?でしょうか?……そして、ホームの外だけど駅の中にある?医薬品化粧品雑貨を売る店で、ウィルソン夫人が、化粧用油性クリームをいくらかと、小さい瓶の香水を買ったようです……ところで、ニューヨーク(都市圏)の駅に着いたらしいトムと「自分」とウィルソン夫人は、これからどこに行くのでしょうねえ……どうやら駅についてすぐ、ウィルソン夫人はまず雑誌を二冊買ったようです……続いて、化粧用クリームと香水……うーーーん……どこかに食事に行くとか、遊びに行くとかではないのでしょうか?……雑誌を読んでくつろぐの?……化粧用クリーム?香水?……んーーー?……なんでしょうねえ……cold cream というのは、メイク落としやマッサージに使うようですが……まるで、日常の?買い物でも?しているみたい?……なんだか不思議ですねえ……。
⑤ Up-stairs, in the solemn echoing drive she let four taxicabs drive away before she selected a new one, lavender-colored with gray upholstery, and in this we slid out from the mass of the station into the glowing sunshine.
「階上で……その階上のある場所で……どこかというと、くすんだ陰気な様子の、何か音が鳴り響く車道・通り・車乗り場で……ウィルソン夫人は、そのままの状態にした……四台のタクシーが走り去っていくのを……あることの前に……それは、ウィルソン夫人が選んだことで……何をかというと、新しいタクシーを……(そのタクシーは)ラベンダー・藤色で……同時に灰色の座席(の布)で……そうやって階上の通りでウィルソン夫人が四台のタクシーが走り去っていくままの状態にした後で、外観がラベンダー・藤色で座席の布地が灰色の新しいタクシーを選んだ後で、そのウィルソン夫人が選んだ外観がラベンダー・藤色で座席の布地が灰色の新しいタクシー(の中にいる状態)で、トムと「自分」とウィルソン夫人の三人が、すべるように移動した・立ち去った……あるものの中から外に出る方向へ……それはどこから出たかというと、大勢の人(がいるところ)の中からで……どこのかというと、(さっきトムと「自分」とウィルソン夫人の三人が電車を下りた)駅で……それからあるところに入っていったのだけど、それは、照り輝く燃えるような太陽の光の中だった……」
Up-stairs は、上の階を表し、そして drive と車が通ったりする場所が出てきているので、どうやら、電車を下りたプラットフォームは地下?にあった?のでしょうか?
she は(すべて)、③④と同じく、①で出てきた Mrs. Wilson を指しているのではないでしょうか?
one は、taxicab を指して言いかえているのではないでしょうか?
this は、a new one[taxicab], lavender-colored with gray upholstery を指しているのではないでしょうか?
we は、前回の最後(22ページ末尾から4行目)に出てきたトムとその女、つまりウィルソン夫人と「自分」の三人を指すのではないでしょうか?
たぶん電車を下りたプラットフォームは地下にあり、そのプラットフォームでも一度買い物をし、そして改札を抜けてからもまた買い物をし、その後階上に出た?のではないでしょうか?……で、階上に出ると、車が通ったりする場所があったと……ニューヨーク(都市圏)といえば大都会?……車だらけ?……だから、辺りは車の騒音とか大気汚染に近いような状態だった?……そこでタクシーをつかまえたようです……ウィルソン夫人が選んだタクシーを……そのタクシーを選ぶまでに四台見送って……そのウィルソン夫人が選んだものは、中の色が灰色で、外の色がラベンダー・藤色だったと……なんでしょうねえ……結局中身は、夫のウィルソンと一緒、やっぱりあの灰の谷の住人でしかない?みたいなことを暗示?している?のでしょうか?……新車?だったんですかねえ……ぱっと見にはそんな中身とは思えない?そんなところの住人とは思えない?みたいな暗示?でしょうか?……で、そのウィルソン夫人の選んだタクシーの中にトムと「自分」とウィルソン夫人の三人がいる状態で、この三人が電車を下りた駅に大勢の人がいるところから、トムと「自分」とウィルソン夫人の三人がすべるように移動して去ったと……照り輝く燃えるような太陽の光の中へと……要は、タクシーをつかまえて、三人はタクシーで移動したということじゃないでしょうか?……電車を下りた駅には大勢の人がいたのだけど、その大勢の人がいる駅から素早く?去ったと……で、次に照り輝く燃えるような太陽の光の中に包まれたような感じ?感覚?でしょうか?……要は、駅を出たタクシーは、直射日光?でも浴びながら走っていった?ということでしょうか?……なるほど、電車の次はタクシーを使ったと……ただ、どこに行こうと、何をしようと、ウィルソン夫人はやっぱりどこまでいっても?ウィルソンという男の妻でしかない?……その中身は、どんなに外見を飾っても?変えても?同じまま?……ウィルソン夫人が選んだタクシーの中が “灰"色にしてあるのは、そういう意味合い?でもある?のでしょうか?……。
⑥ But immediately she turned sharply from the window and, leaning forward, tapped on the front grass.
「電車を下りた後タクシーに乗ったのであれば、そのまま目的地まで寄り道などせず直行したのだろうと普通なら考えるところだけれど、実際には違って、じゃあどうだったかというと……タクシーに乗ってすぐに、ウィルソン夫人が向きを変えた……突然はっきりと……どちらの方向からかというと、(タクシーの)窓の方向から……そうやってウィルソン夫人が突然はっきりと窓の方向から(逆方向に)向きを変えた後で、(身体を)傾けて……前方に……そしてトントン・コツコツ・コンコンとたたいた……何(の表面)をかというと、ウィルソン夫人が座っている座席の前にあるガラスだ……」
she は、③④⑤と同じく、①で出てきた Mrs. Wilson を指しているのではないでしょうか?
the front grass は、車の運転席と助手席の前にあるガラスのことではなく、おそらくタクシー後部座席と前部との間にとりつけてある間仕切り?のガラスのことを指すのではないでしょうか?
どうもタクシーに乗ったと思ったらすぐに、ウィルソン夫人が、たぶん窓の外を見ていた?のが、くるりと向きを変えて?後部座席の?背もたれに?沈めていた?身体を起こして?前方に身体を傾けて?目の前にある?ガラスをたたいた?ようです……いったい、どうしたのでしょうか?何用?……何か見つけた?……。
⑦ “I want to get one of those dogs," she said earnestly. “I want to get one for the apartment. They’re nice to have — a dog."
「『私はしたいことがある……それは何かというと、手に入れることだ……一つを……何のかというと、あれらの犬だ……』ウィルソン夫人が言った……熱烈・熱心に……『私はしたいことがる……それは、手に入れることだ……あれらの犬のうち一匹を……どこに置くかというと、例の部屋だ……あれらの犬は、よい・けっこう・すてきだ……飼うのに……一匹の犬(だけ)を……』」
I は(すべて)、ウィルソン夫人のセリフのようなので、ウィルソン夫人を指すのではないでしょうか?
those は、「あの」と、おそらくタクシーの窓から遠くに見えたものを指す意味で使われているのではないでしょうか?
she は、③④⑤⑥と同じく、①で出てきた Mrs. Wilson を指すのではないでしょうか?
最初の one は、「(複数あるもののうちの)一つ」という意味で使われているのではないでしょうか? そして次の one は、those dogs のうちの不特定の一つを指している――つまり、実質的には、one of those dogs と同じ意味を表しているのではないでしょうか?
They は、those dogs を指すのではないでしょうか?
⑥で何か見つけたらしいウィルソン夫人が、タクシー運転手?なのか前部の座席にいるトム?なのか、間仕切り?のガラスをたたいて注意を引き、どうやら⑦のセリフを言ったようです……あそこの犬が欲しいと……その様子がずいぶん熱心だった?ようです……続けてさらに、あの犬が一匹欲しいと……例の部屋に置くためにと……ん?……例の部屋?……なんだ?……ウィルソン夫人とトムの間では何をどこを指しているのかわかっている"部屋"があるようです……で、その部屋に置くから、あの犬が欲しいと……要は、おねだり?……あの犬飼ったら絶対いいと思う……みたいな感じ?でしょうか?……一匹だけだから?お願い?と……犬飼う部屋……④の買い物――まるで日常の?買い物?みたいでしたよね……もしかして、これからいくところって……例の部屋?なの?……雑誌とクリームと香水のついでに、あらステキ!犬も一匹買っていきましょ?みたいなノリ?なの?……思い出してください――トムは超がつくほどの?お金持ちでした……情婦と過ごすための部屋?妻に内緒の部屋?トムのもう一つの家?別宅?……トム、まさかの二重生活 ⁉……帰る家が二つある ⁉……えーーーっ!……そこまでやってるの ⁉……絶句 ⁉……。
⑧ We backed up to a gray old man who bore an absurd resemblance to John D. Rockefeller.
「トムと「自分」とウィルソン夫人の三人(が乗ったタクシー)が、逆方向に戻った(バックした?)……(駅から離れる方向へと進んできたものが)駅に近づく方向へと……どこまで行ったかというと、白髪交じりの老年の年寄りの男(がいるところ)だ……その白髪交じりの老年の年寄りの男は、あるものを持っていた……それは、途方もない類似性だ……何にかというと、ジョン・D・ロックフェラーだ……」
We は、⑤と同じく、前回の最後(22ページ末尾から4行目)に出てきたトムとその女、つまりウィルソン夫人と「自分」の三人を指すのではないでしょうか?
who は、直前の a gray old man を指して言いかえているのではないでしょうか?
John D. Rockefeller というのは、1925年当時、大財閥を築いた実業家であり、慈善活動に大変熱心だったようです。なお、ロックフェラーセンターというのは、この頃はまだないようです。
ウィルソン夫人が犬が欲しいというので、どうやら通り過ぎたところをタクシーでそのまま戻った?ようです……で、戻ってどこに行ったか?――白髪交じりの老年の年寄りの男のところのようです……その男性が、途方もなくジョン・D・ロックフェラーに似ていたと……途方もない?資産家?で途方もない?慈善活動?を展開していた?らしい(大?)人物と?……なんでしょうねえ……作者はどうして、そんなすごい?人物に似た高齢の男性を登場させたのでしょうか?……おそらく1925年当時、米国にジョン・D・ロックフェラーを知らない人など誰もいないぐらいの有名人ではないかと……。
⑨ In a basket swung from his neck cowered a dozen very recent puppies of an indeterminate breed.
「バスケット・吊りかごの中に……ぶらぶら揺れていた……どこからかというと、その白髪交じりの老年の年寄りの男の首で……身をすくめて小さくしていた……十二匹・多数のまったく本当に新しい犬の子が……どんなものかというと、不定の漠然としたあいまいな犬種だ……」
his は、⑧で出てきた a gray old man (who bore an absurd resemblance to John D. Rockefeller) を指すのではないでしょうか?
In a basket swung from his neck (バスケット・吊りかごの中)という場所が最初に持って来られて、強調されているようです……そのため、普通は a dozen very recent puppies of an indeterminate breed cowered in a basket swung from his neck となるところが、最後にあるはずの In a basket swung from his neck が最初に出たのにつられて、一緒に引っ張られて、cowered が先に出て、最後に a dozen very recent puppies of an indeterminate breed という順序になっているのではないでしょうか? 作者は、最初に持ってきた In a basket swung from his neck という場所にまず読者の注目を集めようとしている?ようです。
⑧でタクシーが引き返して、John D. Rockefeller に途方もなく似た白髪交じりの老年の年寄りの男の姿が目に入り、それから、そのジョン・D・ロックフェラーに途方もなく似た顔の下でぶらぶら揺れていたらしい?バスケット・吊りかごに目が移り、何か生き物が?身をすくめて小さくしている様子に気づいて、最後に十二匹・多数のまったく本当に新しい(最近生まれた?)犬の子の姿が――見たところ不定の漠然としたあいまいな犬種だなと――目に入るという順序で、読者に「自分」の見たもの(映像)を見せている?感じ?でしょうか?……で、この犬をどうやらウィルソン夫人は欲しがった?……。
⑩ “What kind are they?" asked Mrs. Wilson eagerly, as he came to the taxi-window.
「『何の種類か……それらの犬は……』と尋ねたウィルソン夫人の様子は、熱望していた……そのとき同時に、その白髪交じりの老年の年寄りの男が、(ウィルソン夫人に近づく方向へと)やって来た……どこへかというと、タクシーの窓(のところ)だ……」
they は、⑨で出てきた a dozen recent puppies を指すのではないでしょうか? of an indeterminate breed (不定の漠然としたあいまいな犬種だ)と説明していたようでしたから、それで、ここで種類を訊いているのではないでしょうか?
he は、⑨と同じく、⑧で出てきた a gray old man (who bore an absurd resemblance to John D. Rockefeller) を指すのではなないでしょうか?
⑨で犬の姿が目に入り、犬種がわからない……だから、種類は何か?と……そう尋ねるウィルソン夫人の様子は、⑦で earnestly (earnest = very serious) だったものが、⑩で eagerly (eager = strongly wanting to do or have something) になっているようです……近くで見て、ますます欲しくなった?何としても手に入れたい?……そんなウィルソン夫人の様子に気づいた?のでしょうか……犬の子が十二匹・多数入ったバスケット・吊りかごを首にかけた白髪交じりの老年の年寄りの男が、おそらくタクシーのウィルソン夫人のいる座席の窓のところにやって来たのではないでしょうか?……ウィルソン夫人が興味を持っているから……欲しがっているから……なんでしょうねえ……この年寄りの男は、道路脇?にでもいたんですかね?……犬の子を入れたバスケット・吊りかごを首にかけた状態で……なんでしょうねえ……野球場とかで?飲み物とか売り歩いていたりする?のと似た感じ?ですかねえ?……。
おつかれさまでした。どうでしたか?
やっぱり、驚きの新事実は、トムの別宅?ウィルソン夫人と過ごすための、デイジーの知らない?部屋の存在?……そこまでどっぷり?ハマってるの?……なんでしょうねえ……金と時間があり余ってると、そうやって妻以外の女に手を出すものなんでしょうかねえ?……それとも単に、トムの女癖が悪いだけ?……これでは、デイジーがつらいはず?……ベイカー嬢がデイジーの味方になり力になるのも当然?……そして、逆にいえば、トムが孤立して当然?……「自分」にしろドクター(先生)と呼ばれている人物にしろ、トムの味方になってもらおうなんて(甘い?)考えは到底通りっこない?……味方どころか、まともに相手にすらしてもらえないのでは?……トムって、本っ当に底が浅い?というか人の気持ちだったり物の道理だったりが何もわかってない?……これじゃあ、でくのぼう扱いとかされても無理ない?……本っ当に愚かで?救いがたい?……ねえ……。
さて、今回の考えるヒントに上げたお題 「22ページ末尾から2-1行目 Tom deferred that much to the sensibilities of those East Eggers who might be on the train. とはどういうことを言っているのか」 ですが……②で説明したとおりです。「自分」の目線で見れば、その程度の遠慮はしたんだな、という見方になっているようですが、実際には、トムなりの計算で、単にトムの得にならない、損にしかならないという判断が働いたからこそ、そうしただけじゃないかっていう気がするような?……ここでもやっぱり、どこまでいっても、トムは救いがたい?……トム自身がそんなだから、周囲の人も、利害が一致していたり利益になっている間はトムを相手にするかもしれないけれど、いざ利害が一致しなくなったり利益にならなかったり不都合や負担、迷惑ばかりを被るようなことになれば、途端に離れてしまうような人しか集まらない?のでは?……ところで、Chapter 1 でもそうでしたけど、この物語はギャッツビーの話のはずなのに、そのギャッツビーがほとんど一向に出てこないも同然?で、いったいどうなっているの?と思う方も?……仰るとおりです……ただ、ギャッツビーという男がどういう人間なのかをみていく?上で、「自分」の人柄だったり、トムの人としてのあり方だったり、そういったものをみた上で?比較して捉えたり考えていくことを通して、作者が読者に訴えたいことがあるのではないでしょうか?……だから、なんだかやたら作者がもったいつけて引っぱっている感もたしかにあるように思われますが、でもそれだけでもなくて、やっぱりまずはそうした一見ギャッツビーに関係なさそうな話を伝えてからでなければ、本題に入れない?作者が何よりも読者に訴えたいことを読者にわかってもらえない?からこそ、一見遠回りな話に終始している?のではないでしょうか?……ということで、いったいいつになったら主役(のはず)のギャッツビーが出てくるのか、後のお楽しみに取っておく?ぐらいの気持ちでゆったりのんびり構えていただき、無駄な話は何一つないのだという気持ちで、一緒に物語の展開を追っていき、みていただけたらと思います。
次回は、犬をめぐってあれこれと会話が展開されるようです……ぜひまた一緒に読んでみてください。
第35回の範囲は23ページ20行目から24ページ6行目まで("All kinds. What kind do you 〜から、white sheep turn the corner. まで)をみていきます。
次回の考えるヒントは……
- 23ページ末尾から6-5行目 The Airedale — undoubtedly there was an Airedale concerned in it somewhere, though its feet were startlingly white とはどういうことを言っているのか?
次回は、犬の他にも動物が出てくる?……本当に?……ぜひまた一緒にみていってください。
最後に、物語を読むときに心にとめたいポイントをまとめます。
・どうして作者はその言葉を使用したのか
・それぞれの登場人物に作者はどんな役割を割り当てているのか
・それぞれの登場人物のセリフや物語の展開を通じて作者は何を言おうとしているのか
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なお、今回の範囲の訳文を有料(700円)で掲載いたします。この連載はだいたい250回くらいになる予定なので、毎回訳文を購読いただいた場合には30回で2万円を超え、トータルでは18万円近くになることをご承知おきください。またいかなる場合も返金には応じられません。また購読いただいた訳文にご満足いただけるとは限らないことをあらかじめご承知おきください。なお、問い合わせなどはご遠慮ください。お断りいたします。