Gatsby-32
このサイトは、英語で書かれた物語を一作品、最初から最後まで少しずつ読んでみようという試みです。
取り上げる作品は『The Great Gatsby』です。100年近く前に米国で出版された小説ですが、現代の日本人にも共感したり心を動かされるところが多々あると思います。
ぜひ一緒に、英語の原書を読んでみませんか。
(なお、このコンテンツはその著作者の解釈に基づくものであり、必ずしも正しいとは限らないことをご承知おきください。)
前回まで……「自分」がどんな経緯でトムの女と会うことになったのか――その話が詳しく明かされていたようでした……「自分」にも無茶苦茶ですけど、なんというか、その女に会いに行く過程も無茶苦茶?なような……駅がないらしい?所で勝手に途中下車?……鉄道の柵を勝手に?超える?……柵を越えなくても通れるところはないから?なのでしょうか……やっぱり、不倫相手の女だから、本来の道を外れたコースを通って会いに行く?(という暗示もある?のでしょうか)……で、通称灰の谷というごみ捨て場のすぐそばにある自動車修理工場・ガソリンスタンドらしいお店に、トムと「自分」は入っていったようです……そこにトムの女が?……みていきましょう。
原文はOne More Libraryの『The Great Gatsby』を使用します。
第32回の範囲は21ページ21行目から22ページ9行目まで(The interior was unprosperous 〜から、of her body were continually smouldering.まで)をみていきます。
まず、今回の考えるヒントを上げます。
- 21ページ末尾から17-15行目 It had occurred to me that this shadow of a garage must be a blind, and that sumptuous and romantic apartments were concealed overhead, とはどういうことを言っているのか
なお、特に断っていなければ、基本的に次に上げる辞書の訳語や定義・意味に基づいて説明します。
主に使用する辞書
『リーダーズ英和中辞典(第2版)』(野村恵造)(研究社 2017)
『Pocket Oxford English Dictionary (Eleventh Edition)』(Maurice Waite) (Oxford University Press 2013)
『岩波国語辞典(第七版新版)』(西尾実 岩淵悦太郎 水谷静夫)(岩波書店 2017)
それでは今回の範囲をみていきましょう。
① The interior was unprosperous and bare; the only car visible was the dust-covered wreck of a Ford which crouched in a dim corner.
「自動車修理工場・ガソリンスタンドの内部は、繁栄しておらず、物がなかった……一つだけあった車は……目立つ(ものでは)……ちり・粉塵・ごみに覆われたこわれた車のフォード社のもので、そのフォード社の車は小さくなっていた……どこにかというと、見えにくい角に……」
unprosperous は、prosperous に、un-(否定の意味を表すもの)がついているのではないでしょうか?
which は、直前の a Ford を指して言いかえているのではないでしょうか?
前回の最後に、トムと「自分」は、通称灰の谷と呼ばれるごみ捨て場のすぐそばにあるお店の一つ、自動車修理工場・ガソリンスタンドに入っていったようでした……で、店内に入って、その中の様子を説明しているようです……たぶん、繁盛しているようには見えなかったのではないでしょうか?……そして、物がなかったようです……例外は、一台の車だけ?のようで、それだけが目立っていた?ようです……で、車といっても、ちり・粉塵・ごみに覆われていて、こわれた車だったようです……そして、フォード社の車だということはわかったようです……そのフォード社の車は、見えにくい角にあったようです……まるで小さく縮こまりでもしたように?見えたのでしょうか……ほとんど廃車?状態でしょうか?……だから肩身でも狭くて?身を小さくしていた?ようにでも見えた?のでしょうか……なんだか、灰の谷と同類?みたいな?印象?でしょうか……店内にあったものも、廃車?同然の車だけ?のようですし……本当に営業してる?もしかして、廃業同然?……で、こんなとこに、トムの女がいる?のでしょうか……大丈夫?……。
② It had occurred to me that this shadow of a garage must be a blind, and that sumptuous and romantic apartments were concealed overhead, when the proprietor himself appeared in the door of an office, wiping his hands on a piece of waste.
「あることが頭に浮かんだ……「自分」の……それは何かというと、このような有り様の(まるで)まぼろし・幻影・亡霊のような状態の自動車修理工場・ガソリンスタンドは、あるものであるにちがいないと……それは何かというと、おとり・ごまかし・まやかしだ……他にも頭に浮かんだことがあるのだけど、それは何かというと、豪華な、なおかつ空想の世界にありそうな情事を誘うような部屋の数々が、隠してある……頭上に……その二つ目のことが「自分」の頭に浮かんだとき、事業主本人が現れた……どこにかというと、戸口に……仕事場の……ぬぐってきれいにしながら……その事業主の両手を……あるものを使って……それは一枚のウエスだ……」
今回の考えるヒントに上げた箇所が出てきました。
It は、漠然と後から説明する事柄を表すのではないでしょうか? 具体的には that 〜の部分(二か所)を指すのではないでしょうか?
that は(どちらも)、「これから文が続く」ことを示し、It の内容を具体的に説明していると思われます。
this は、①で目にした店内の様子を指しているのではないでしょうか? 店内は廃車?同然?の車しか見あたらず、廃業?同然?のように見えた?=これが現実?事実?……にもかかわらず、「自分」は、これが偽装?だと思った?ようです……じゃあ、どうして偽装などするのか?――それは隠したいものがあるからだと……じゃあ、何を隠しているのか?――それは、豪華なこの世のものとも思えないうっとりするような?部屋が頭上にあることだと……「自分」はそう思ったようです……どうしてでしょうか?――だって、トムの情婦がいるはずなわけだから、まさか廃業?同然?にしか見えないような店にいるような女と関係を持つだろうか……いや、そんなはずはない……だったら、この目の前にある廃業?同然?の店内は偽装だ、きっと……で、本当は豪華でこの世のものとも思えないうっとりするような?部屋が隠してあるんだ、二階に……そうでなければ、トムが(というよりどの男でも?)こんな店の女を相手にするはずがない……「自分」はそんなことを思ったのでは?ないでしょうか……だけど、実際には、"死"を強く想い起こさせる場所のすぐそばにある店なら、まぼろし・幻影・亡霊を思わせるような有り様の店内の方がしっくりくる?ような気がしませんか?……そして、そういう店にいる女なら、たとえそんな女が豪華な空想の世界にありそうな情事を誘うような雰囲気を醸し出していたとしても、まさしくそんな雰囲気の方こそ、まぼろし・幻影・亡霊といってもよい?ように思われませんか?……作者は、ここで「自分」にこんなことを思わせながら、実は読者にその逆こそ真実じゃないかと思わせたい?のではないでしょうか?……要は、情婦の女こそ、まぼろし・幻影・亡霊だと、ほのめかしている?ようにも思われませんか?……所詮は妻以外の女に過ぎない……単なる?行きずりの女?程度?だということを暗に伝えようとしている?かもしれない?……本気ではない、遊び?……まあ、普通は、妻以外の女=日陰の女、表には出てこない・出てこられない?というイメージがあるでしょうか?……ただ、トムの場合は前回(20ページ末尾から3行目―21ページ1行目)みたように、妻以外に女がいることを誇示するような言動が見られたようでしたから、日陰の女状態ではない?ようにも思われる?……なんだか矛盾だらけ?……でも、案外、現実もこんなふうに矛盾だらけ?だったりする?でしょうか?……。
when は、It had occurred to me that this shadow of a garage must be a blind, and that sumptuous and romantic apartments were concealed overhead が起こったときを表すと考えた方が、わかりやすくないでしょうか?
himself は、直前の the proprietor を指すのではないでしょうか? his も the proprietor を指すのではないでしょうか?
the proprietor は、前回の最後(21ページ18行目)に出てきた a garage の事業主を指すのではないでしょうか?
前回の最後に、トムの女が(本当に?)いるらしい?自動車修理工場・ガソリンスタンドに入って、①で店内を見て、「自分」には何か頭に浮かんだことがあったようです……まず、こんなまぼろし・幻影・亡霊を思わせるような有り様の店内は、おとり・ごまかし・まやかしにちがいないと……次に、豪華で空想の世界にありそうな情事を誘うような部屋の数々が(本当は)頭上に隠してあると……目の前の、もしかしたらみすぼらしい?店内の様子を見て、いやいやこれが真実ではないぞ……本当はこの真逆の豪華でこの世のものとも思えないうっとりするような?部屋が二階に?隠してあるんだ……「自分」はどうやらそんなことを思った?ようです……やっぱり、トムの情婦がいる店だから、そんな想像をしたのでしょうか?……で、そんなことを思ったところで、廃業?同然?に見えた?自動車修理工場・ガソリンスタンドの事業主本人が現れたようです……仕事場の戸口に……ウエスで両手をぬぐってきれいにしながら……ということは、店に入ってすぐ目に入る部分は廃業?同然?に見えた?かもしれないけれど、別に仕事場がある?ようです……両手が汚れる仕事をしていた?のでしょうか……自動車の修理?とかでしょうか……で、この事業主は、男ですね……。
③ He was a blond, spiritless man, anaemic, and faintly handsome.
「その自動車修理工場・ガソリンスタンドの事業主は、髪がブロンドで、元気のないしおれたような男だった……活力がなく、かすかに少しだけ美男子だった……」
He は、②に出てきた the proprietor を指すのではないでしょうか?
②で現れた、その自動車修理工場・ガソリンスタンドの事業主の様子を説明しているようです……なんとなく、①でみた店内の様子に見合った?ような事業主?でしょうか……髪からすると、典型的な白人?の見た目?でしょうか……元気がなくて活力がなくてしおれていて……栄養不足?という問題ではない?……うだつが上がらないような?という感じ?でしょうか?……頼りなさそう?ですねえ……ただ、イケメン寄り?らしい?……この男がいる店に、トムの女がいる?のでしょうか……。
④ When he saw us a damp gleam of hope sprang into his light blue eyes.
「あることが起きたとき……それは、その自動車修理工場・ガソリンスタンドの事業主の目に入ったとき……トムと「自分」の姿が……水分を含んだかすかな輝き・兆しが……希望の……突然現れた……どこの中にかというと、その事業主の淡い青い両目だ……」
he は、③と同じく、②に出てきた the proprietor を指すのではないでしょうか? his も同様ではないでしょうか?
us は、前回の最後に、この自動車修理工場・ガソリンスタンドの店内に入っていったトムと「自分」を指すのではないでしょうか?
前回の最後に、トムと「自分」が自動車修理工場・ガソリンスタンドの店に入っていったとき、おそらく、元気も活力もなくてしおれたような自動車修理工場・ガソリンスタンドの事業主は、店内に誰か入ってきたことに気づいた?のではないでしょうか?……それで、②の後半で、両手が汚れる仕事をしていたらしい仕事場から出てきた?のではないでしょうか……店内の様子を見に……で、出てきてみると、トムと「自分」の姿が目に入ったようです……すると、その事業主の淡い青い両目に、突然、かすかな希望の兆しが現れたようです……もしかしたら、涙目のような見た目だったのかも?しれません――damp とあるのは……元気も活力もなくてしおれたような事業主の男の目が、トム(と「自分」)を見た途端に、ぱっと明るく輝いた?のではないでしょうか……ということは、その事業主の男にとっては、トムは歓迎したいお客?幸運?利益?をもたらしてくれる良いお客?ということなのでしょうか?……それとも、単に、どんなお客であれ、客が来てくれたというだけで、ただそれだけで嬉しい?喜ぶべき出来事?だったりする?のでしょうか……廃業?同然?ならありうる?……大丈夫でしょうか……。
⑤ “Hello, Wilson, old man," said Tom, slapping him jovially on the shoulder. “How’s business?"
「『こんにちは・邪魔するぞ・世話になるぞ……ウィルソン……俺(様)とお前は特別な仲だよな……』と言ってトムが、ピシャリと平手でひと打ちした……その自動車修理工場・ガソリンスタンドの事業主である男、つまりウィルソンを……陽気に楽しそうに愉快そうに……その事業主の男、つまりウィルソンの肩のところを……『どんな具合か……仕事・事業は……』」
Hello は、used as a greeting (挨拶の言葉として使われるもの)とのことなので、単に、こんにちは、だけでなく、挨拶になるなら、どんな言葉の代わりにもなりうると考えられないでしょうか? たとえば、ここでは、店に入っていった客が、店の人に対して最初にかける言葉として使われているので、初めての客なら、すみません、という意味に解釈できそうですし、常連客なら、もっとくだけた挨拶の言葉が考えられるかもしれません。
old man は、old に、expressing affection or contempt という意味・使われ方があるようなので、親しい間柄の人に対して親愛の情を示すのに使ったり、あるいはバカにしている相手に対して馴れ馴れしく呼びかけながらバカにしている気持ちを伝えられるのではないでしょうか? 実際に本当に親しいかどうかは問題ではなく、声をかける側が、old man と言う側が、親しいと思っていたりすれば使える?のかもしれません。声をかける側の気持ち次第で使える?ようですが、相手にどう受け取られるか、どう思われるのかは、また別の問題かもしれません(好意として受けとめてもらえるか、それとも old man と声をかけられて不愉快に思われたりすることもあるのか……)。
him は、呼びかけている相手である Wilson、つまり③④と同じく、②に出てきた the proprietor を指すのではないでしょうか?
②の後半で姿を見せた自動車修理工場・ガソリンスタンドの事業主の男に、トムが声をかけたようです……前回の最後(21ページ18-19行目)にフルネームでその店の名前が表示されていたようでした……名字がウィルソンというようです……トムが old man と呼びかけているので、親しいのか?それともトムがその男をバカにしているのか?……続いて、ピシャリと平手でひと打ちしたようです……ずいぶん扱いが雑?乱暴?なような……でも、トムの方は機嫌が良さそうです……陽気に楽しそうに愉快そうに、その男の肩を思いっきり?ピシャリとやったようです……馴れ馴れしい?というか……ただ、③でみたところでは、ウィルソンという男、元気も活力もなくてしおれたような見た目だったようですが……そんな男にそんなふうに力いっぱい?ピシャリとやって、大丈夫なんでしょうか?……トムにしてみれば、軽いスキンシップ?ぐらいの気持ち?……でもねえ……トムはあくまでもお客じゃなくて?……トムはどこにいっても偉そう?ってこと?……馴れ馴れしく声をかけて、軽いスキンシップ?を済ませて、それから、仕事・事業はどんな具合・調子かと尋ねたようです……どうも、トムは誰が相手であっても、常にトムの方が主導権を握る?というか、トムの方が支配・采配する?という感じでしょうか……それがどうやら通らない?らしいのが、もしかしたら唯一?ベイカー嬢?でしょうか……だから、ベイカー嬢が気に入らないし、ベイカー嬢が張り付いているデイジーが気に入らない?のでしょうか……だから、俺様にも都合よく使える「自分」を俺様の味方に引き込みたい?……ところで、このウィルソンという男、弱っちそうですよねえ……絶対、トムが負けるなんてありえない感じがしませんか?……もしかしたら「自分」以上に、何でもトムの思うがままに事を運べる?便利で好都合な相手?だったりする?……だから、トムは機嫌が良い?のでしょうか……トムが好きなもの=トムより弱くて(実際にはトムより強くてもトムより弱いとトムが思っていて)何でもトムの思いどおりにできる相手……でしょうか?……またまた、トムの嫌な面が出てきた?ような……トムって本当に残念?な人?……ねえ……どうなんでしょう……。
⑥ “I can’t complain," answered Wilson unconvincingly. “When are you going to sell me that car?"
「『私はできない……不満を言うことが……』と答えたのはウィルソンだった……本当とは思えないような疑問のあるような様子で……『いつのことか……あなたがするのは……何をかというと、売ることだ……私に……あの例の車を……』」
I は、Wilson のセリフなので、ウィルソンを指すと思われます。 me も同様です。
you は、Wilson が話している相手なので、⑤でウィルソンに声をかけた Tom を指すのではないでしょうか?
that は、ウィルソンとトムの間で何を指すのかがわかっている、「例の」「あの」というニュアンスで使われているのではないでしょうか?
⑤の最後で、仕事・事業はどんな具合・調子かと訊かれたので、不満は言えないと答えたようです……不満を言うほどではない?ということでしょうか?……ただ、口ではそう言っていても、そう言いながら、不満を言うほどではないというのは本当だろうか?疑問があるなあ……とでもいうような様子だったようです……ということは、本当は不満があったのでは?……むしろ、その方が自然な気がしませんか?……だって、①でみた店の様子は廃業?同然?かと思うような有り様で……それで不満がないなんて……ねえ……社交辞令的?決まり文句?みたいな感じで、そんな答え方をしたのでしょうか?……で、この自動車修理工場・ガソリンスタンドの事業主である男のウィルソンは、次に、トムに向かって、いつあの例の車を売ってもらえるのかと、尋ねたようです……あれあれ?……やっぱり、仕事・事業は、不満を言うほどではないというのは嘘?ではないでしょうか?……前回の最後にみた表示には、フルネームの他に、車の売買も扱うとあったようでした……ということは、車を売ってもらって、転売?でもして利益を得たい?のではないでしょうか?……ウィルソンが、トムに向かって、早く車を売ってもらいたいと、催促しているように聞こえませんか?……そうしてみると、前々からトムは、ウィルソンに車を売ってやるという話をウィルソンにしていた?ということになるでしょうか……だから、ウィルソンは、トムの姿を見たときに、目がパッと輝いた?のでしょうか……おっ、あの車、とうとう売ってもらえるのか?……などと思ったのかも?しれません……ところで、トムはこの店に車を売りに来たのでしょうか?……たしか、「自分」も一緒に来ていて……そう、トムの女を「自分」に紹介するために?来ていたのではないでしょうか?……あららら……気の毒に……ウィルソンは空振り?……ねえ……またもや、トム、どうなんでしょう……つくづく罪作り?……。
⑦ “Next week; I’ve got my man working on it now."
「『来週に……俺は今させている……俺の雇った人に……手を加えることを……あの例の車に……現在・目下……』」
⑤で Wilson に声をかけ、⑥で逆に訊かれた Tom が答えているセリフのようです。そうすると……、
I は、トムを指すのではないでしょうか? my も同様ではないでしょうか?
it は、⑥でウィルソンが問いかけた、that car を指すのではないでしょうか?
⑥でウィルソンに、いつあの例の車を売ってもらえるのか、と訊かれたトムが、来週になる、と答えているようです……続けて、どうして今すぐではないのか、来週になるのか、その理由を説明しているようです……トムがトムの雇った人に今させていることがあると……それは、あの例の車に手を加えることだと……すぐに売れる状態にはない?ということでしょうか……修理なのかなんなのか……ウィルソンの方は早く売ってほしそう?なのに、トムの方はその思いに応えようとはしない?応える気がない?……なんだか、またもや罪作り?なトム?……。
⑧ “Works pretty slow, don’t he?"
「『(そのトムの雇った人が)手を加えるのが、ずいぶん遅い……そうじゃないか?……そのトムの雇った人(男)は……』」
Works の前には、⑦で出ていた my[Tom’s] man(トムの雇った人)が省略されているのではないでしょうか?
he は、同じく⑦で出ていたmy man を指すのではないでしょうか?
本来、don’t he ではなく doesn’t he となるのが正しいように思われますが、たぶん、この Wilson という男が、学がないこと(正しい言葉の使い方を知らないこと)を don’t he という物言いを通して表しているのではないでしょうか?
⑦でトムが、例の車を売るのが来週になると答えたのに対して、ウィルソンがどうも不満をあらわにしているようです……⑦でトムの雇った人(男)に手を加えさせているというけれど、その人(男)は手を加えるのがずいぶん遅い、時間がかかっているのじゃないかと、トムに同意を求めて確かめている?ようです……いつになったら売ってもらえるのかと、今か今かと、ウィルソンはずっと?待っている?のでしょうか……だから、遅く、時間がかかっているように感じる?……一方、トムの方は、本気で売る気があるのかないのか?ウィルソンを待たせていることに何も?悪いとか申し訳ないとか、そういった類いのことは思っていない?から、⑦でも平然と、来週になるとか、今手を加えさせているとか、答えていられる?……ウィルソンとトムの思いに行き違い?が見られるようです……やっぱり、トムが罪作り?……。
⑨ “No, he doesn’t," said Tom coldly. “And if you feel that way about it, maybe I’d better sell it somewhere else after all."
「『いや、そうではない……トムの雇った人は、手を加えるのがずいぶん遅くはない……』と言ったトムは、冷淡だった……『お前は俺の雇った人が手を加えるのがずいぶん遅いと言ったが、そういうことをいうのであれば、お前が感じているのであれば……俺の雇った人が手を加えるのがずいぶん遅いというふうに……例のあの車の件で……もしかしたら俺(様)はこうした方がいいのではないかと思うことがあるのだけど……それは売ることだ……あの例の車を……どこか他の所で……(お前のところで売るよりも)……やっぱり……』」
he は、⑧と同じく、⑦に出てきた my man(トムの雇った人)を指すのではないでしょうか?
you は、トムが話している相手で、⑥に出てきた Wilson を指すのではないでしょうか?
that は、⑧の言葉 “(my[Tom’s] man) Works pretty slow, don’t he?" を指すのではないでしょうか?
I’d better は、I would better か I had better の省略形?ではないでしょうか……どちらも同じ意味を表すようで、脅迫のようなニュアンスにもなるようです。
it は(すべて)、⑥で出てきてから話題の中心になっている、that car を指すのではないでしょうか?
⑧でどうやらウィルソンが車を早く売ってくれない不満をあらわにしたのに対して、トムが反論?しているようです……まず、トムの雇った人(男)があの例の車に手を加えるのが遅くはない、時間はかかっていないと……その言い方も、冷淡だったようです……続いて、⑧でウィルソンが不満をトムに向けて言ったのに対して、どうやらそんな不満をいうのであれば、そんなふうに不満に思うのなら、俺様はあの例の車をどこか他の所で売ったほうがいいだろうな、やっぱり……と、お前のところでは売らないぞと、ほとんど脅している?のではないでしょうか……なんだか居丈高?というか、明らかにトムの方が立場が強い?上?……売るかどうかは俺様次第だ、お前は文句言うな……とでも言っているような……なんだか、見方によっては、弱い者いじめ?みたいにも?見えなくもない?ような……もしかしたら、喉から手が出るほど欲しくてたまらない?車を売ってほしいウィルソンに対して、その弱みにつけこんで?…場合によっては、⑤の様子からしたら、もしかしたらそんなウィルソンをからかって?もてあそんで?楽しんで?喜んで?いるかも?……トムってどこまでも性質悪?……ねえ……どうなんでしょう……。
⑩ “I don’t mean that," explained Wilson quickly. “I just meant —-“
「『私は、そうではない……そういう意志・気持ち・つもりでは……どこか他の所であの例の車を売ること……』と釈明・弁解・言い訳したウィルソンは、急いでいた……『私は、単に、どういう意志・気持ち・つもりだったかというと――』」
I は(どちらも)、このセリフを言っている Wilson を指すのではないでしょうか?
that は、⑨で出てきた sell it (that car) somewhere else を指すのではないでしょうか?
⑨で、売るのやめるぞと、ほとんど脅されたも同然のウィルソンが、急いで言い訳・弁解をした?ようです……そういうつもりではないと……どこか他の所であの例の車を売らないでほしいと頼んだようなもの?でしょうか……で、続けて、単に、何が言いたかったかというと…と言いかけたところで、続きを口にするのをやめたようです……なんだか、トムみたいなのに、こんなふうに応じる必要あるでしょうか?……トムみたいなのは、相手にしないほうがよくない?でしょうか……だけど、ウィルソンにしてみれば、トムみたいなのでも、それでもしがみつくしかない?しがみつかざるをえない?それでもかまわない?車さえ手に入れば?ということなのでしょうか?……「自分」も辛抱強かったですけど、ウィルソンも……ねえ……ただ、「自分」は別に、利害関係とか上下関係とか弱みを握られていたとかそういうことではなかったようでしたけれど、ウィルソンの場合は違うような……あまりに立場が弱すぎる?……それでますますトムが図に乗る?……どうなんでしょう……ウィルソンの対応は、見方によっては、賢明?でしょうか……トムみたいな性質の悪いのには下手に逆らわない方がいい?……無難に丸く収めておくのが一番?……ウィルソンも辛いところ?でしょうか……。
⑪ His voice faded off and Tom glanced impatiently around the garage.
「ウィルソンの声が、次第に小さくなり、消えた……そうやってウィルソンの声が次第に小さくなり消えた状況を受けて、トムは、ちらっと見た……いらいらして落ち着かない様子で……ぐるりと……自動車修理工場・ガソリンスタンド(の中)を……」
His は、⑩でしゃべっていた、Wilson を指すのではないでしょうか?
⑩で最後の言葉が切れたようになっていたのは、どうもしゃべるのをやめたというよりは、ウィルソンの声が次第に小さくなって聞こえなくなったので、それで何を言ったのかが書かれていなかった?ようです……で、ウィルソンが何を言っているのかわからなくなったので?トムはウィルソンと話すのをやめた?のでしょうか……で、自動車修理工場・ガソリンスタンドの中をぐるりと見た?ようです……じろじろとかじーっとではなく、ちらっと軽く?……なんでしょうねえ?……しかもいらいらして落ち着かない様子だったようです……なんでしょうねえ?……何か他に気になる?探している?……何なんでしょう?……それに、ウィルソンにはもう用はない?……というより、そもそも最初からウィルソンに用はない?というのが本当のところ?でしょうか……そもそも、「自分」にトムの女を紹介するのが目的で、「自分」を同行・随行?させていたようでしたから……ということは、本命は……いよいよ、その(妻以外の)女?でしょうか……つくづくトムって、本当にどうしようもない?というか、しようがない?というか……ねえ……どうなんでしょう……。
⑫ Then I heard footsteps on a stairs, and in a moment the thickish figure of a woman blocked out the light from the office door.
「そのあと、「自分」は聞いた……足音を……(連なった)階段の一段で(聞こえる)……そうやって階段の一段でした(らしい)足音を「自分」が聞いた後に、少し間をおいて、やや太い体型の女が、さえぎった……完全に……明かりを……どこからのかというと、仕事場の戸口からの……」
stairs は、必ず “s" がついた状態で、a set of fixed steps leading from one floor of a building to another (建物のある階から同じ建物の別の階につづく固定された足段が集まってひとかたまりになったもの)を表すようです。 ここでは、stairs に “a" がついていますが、そのように建物のある階から同じ建物の別の階につづく固定された足段が集まってひとかたまりになったものを形成する一つ一つの足段のうちの一つ?またはそのような一つ一つの足段それぞれ?を指すつもりで使われている?のでしょうか?
結局、トムは⑤〜⑩で、ウィルソンと話をしたようでいて、何もまともに話してはいない(少なくとも心はうわの空?)のでしょうねえ……で、そんなあったようななかったも同然?の時間を経て、階段から何やら足音が聞こえてきたようです……で、足音が聞こえてから少し間をおいて、やや太い体型の女が現れた?ようです……その現れ方が……どうやらウィルソンが、トムと「自分」が入っていった店に現れる前にいたらしい仕事場の戸口から入ってくる?明かりを完全にさえぎった状態で、その女は現れたようです……要は、太ってるから、戸口に立つと、戸口の向こうにあるらしい仕事場の明かりをさえぎることになる?ようです……しかも、完全に……なんだか……どうなんでしょう?……すごい?というか迫力?を感じる?でしょうか……その女が仕事場の戸口に立つと、明かりがさえぎられる……明かりが入ってこなくなる……なんというか、妻のいる男と関係を持つような女ですから、明かりをさえぎり、暗闇を生じさせる?というのは、幸福をさえぎって、不幸をもたらす?みたいなイメージにぴったりくる?でしょうか……なんだか、厄病神?みたい……しかも、この店、"死"を強く想い起こさせる場所のすぐそばにあるようです……店のイメージにも、周囲のイメージにも、妻のいる男と関係を持つというこの女のやっていることも、すべてぴったりくる?というか、しっくりなじむ?というか……"死" “灰(色)" “まぼろし・幻影・亡霊" “元気も活力もなくてしおれたような男" “妻のいる男と関係を持つ女" “明かりをさえぎり暗闇を生じさせる"……すべて負・不幸のイメージで一致?しませんか?……この女=トムの女には、"死"と"不幸"にまつわるイメージがつきまとう?ような……やっぱり、妻のいる男と関係を持つような女には、プラスのイメージはしっくりこない?のでしょうねえ……少なくとも、妻のデイジーの立場から見れば、間違いなくこの女は"不幸"の源泉?みたいな存在じゃないでしょうか?……。
⑬ She was in the middle thirties, and faintly stout, but she carried her surplus flesh sensuously as some women can.
「そのやや太い体型の女は、年齢が、半ば……三十代の……なおかつ、わずかに少しでっぷりしたかっぷくのよい(体型で)……年齢は三十代半ばだし、(体型は)わずかに少しであってもでっぷりしたかっぷくのよい印象だと説明したので、普通に考えたら、これから言うことはあてはまらないように思われそうだけど、実際には違って、そのやや太い体型の女は、所有し支え担い運んでいた……そのやや太い体型の女の余った余分なぜい肉を……なまめかしく……ある場合と同じように……それは、一部の女性が(そういう)余分なぜい肉をなまめかしく所有し支え担い運ぶことができる場合だ……」
She は(すべて)、⑫で現れた、the thickish figure of a woman を指すのではないでしょうか? her も同様ではないでしょうか?
最後の can の後には、carry her (their) surplus flesh sensuously が省略されているのではないでしょうか?
⑫で現れた、やや太い体型の女=トムの女について、見た目の印象を説明しているようです……まず、年齢は三十代半ばではないかと……次に、わずかに少しだけれどもでっぷりしていると……ぽっちゃり体型?ということでしょうか?……なんでしょうねえ……そんなふうに太っているし、年齢も高め?だから、なまめかしかったりしそうなイメージはない?のでしょうか……だけど、実際には違って、その女は、太っているからこそ身についている余分なぜい肉を身につけた状態でなまめかしかった?ようです……余分なぜい肉がついていて太っていても、年齢が明らかに若いと言える二十代ではなくても、見た感じの印象がなまめかしかったと……そう言っているようです……なまめかしい……だから、トムが手を出した?……なまめかしい魅力がある?……いかにも妻のいる男と関係を持ちそうな女のイメージに当てはまる?でしょうか……まあ、「自分」もおそらく、トムの情婦という前提で見ているはずですから、そういう視点からどういう女なのだろうと、この女を見ていたかも?しれません……。
⑭ Her face, above a spotted dress of dark blue crepe-de-chine, contained no facet or gleam of beauty, but there was an immediately perceptible vitality about her as if the nerves of her body were continually smouldering.
「そのやや太い体型の女の顔は……あるものの上部にあった……それは何かというと、斑点のある・まだらの衣服で……色が濃い暗い青色の柔らかい薄地のデシンの生地で……その顔にあったものは……皆無だったのがある一面あるいは輝き・兆しなのだけど……それは何のかというと、美しさだ……その女の顔には美しさを感じさせる一面あるいは輝き・兆しが皆無だったから、普通に考えると、何も魅力がなかったのかと思われそうだけど、実際には違って、(別の)あるものがあった……それは、目にするやいなや気づくことのできる活力・活気・元気・生気だ……その女の身辺(全体)に……その様子をたとえて言うならば……すべての神経・活動などの根源・気力・体力が……どこにあるものかというと、その女の身体で……引き続いてしきりに頻繁にくすぶっている・燃えている状態だ……」
Her は(すべて)、⑬と同じく、⑫で現れた、the thickish figure of a woman を指すのではないでしょうか?
⑫で現れたトムの女について、⑬で体型を観察し、続いて⑭で、まず顔の説明をしているようです……が、その前に、その顔の下に見える、着ている衣服の話をしているようです……斑点かまだらか、柄のある衣服のようで、色は濃い暗い青色で、素材は柔らかい薄地のデシンの生地のようです……で、衣服からまた顔の話に戻って、美しさを感じさせるものが何もなかった?と言っているようです……美しくはないと……だけど、だからといって、魅力がないわけではないと……じゃあ、どんな魅力があるのか?――目にするやいなや気づくことのできる活力・活気・元気・生気だと……それもその女の身辺(全体)にあると……なんだか、③でみたウィルソンの真逆?みたいな印象?のような……で、そんな魅力がその女の身辺(全体)にある様子をたとえていえば、その女の身体にあるすべての神経・活動などの根源・気力・体力が、引き続いてしきりに頻繁にくすぶっている・燃えているような状態だと……なんでしょうねえ……身体全体に活力が満ちていて、元気いっぱい?強い生気を感じさせる?身体の中でくすぶって燃えている?活動などの根源になる力?みたいなものが爆発寸前?身体の中に収めきれないほどの生気?活力?みたいなものが暴発して身体の外にこぼれそう?なくらい?なのでしょうか?……なんだかパワフルな感じ?印象?でしょうか……圧倒されるような?……でもなんだか、押して押して押しまくるトムにぴったり?な感じも?する?……ところで、この女、ウィルソンの店の二階から下りてきた?のでしょうか?……ということは、ウィルソンの店にいるらしい……どういう関係?……ウィルソンとは……ん?……えっ?……そんな……まさか⁉……えーっ⁉……‼
おつかれさまでした。どうでしたか?
とうとうトムの女が現れましたねえ……それにしても、トムもよりによってなんでそんな女を……なんだか縁起でもない?場所にある?縁起でもない?店にいる女をなんでわざわざ……ただ、どうやらトムは本っ当に、弱い者いじめが好きそう?……でも不思議ですねえ……アメフトで全米最強といってもいいくらいの選手だったはずなのに、それほど強い人がわざわざ弱い者を見つけてはいじめるなんて、なんだか違和感があるというか、ふさわしくないような気がしませんか?……それとも、アメフトやめて冴えない人生になってから、そんな悪趣味?な癖?でもついた?のでしょうか?……イメージに合わない?というか、らしくない?というか……残念ですねえ……あるいは、アメフトはたまたま?強くて結果もついてきたけど、心・メンタルの方は、もともとそういう奴だった?のでしょうか……。
さて、今回の考えるヒントに上げたお題 「21ページ末尾から17-15行目 It had occurred to me that this shadow of a garage must be a blind, and that sumptuous and romantic apartments were concealed overhead, とはどういうことを言っているのか」 ですが……②で説明したとおりです。
次回は、トムと女が言葉を交わすようです……ぜひ一緒にみていってください。
第33回の範囲は22ページ9行目から22ページ末尾から3行目の途中まで(She smiled slowly and, 〜から、I went up together to New Yorkまで)をみていきます。
次回の考えるヒントは……
- 22ページ17-18行目 A white ashen dust veiled his dark suit and his pale hair as it veiled everything in the vicinity とはどういうことを言っているのか
次回は、あの人物も、しゃべるようです……ぜひ一緒に読んでみてください。
最後に、物語を読むときに心にとめたいポイントをまとめます。
・どうして作者はその言葉を使用したのか
・それぞれの登場人物に作者はどんな役割を割り当てているのか
・それぞれの登場人物のセリフや物語の展開を通じて作者は何を言おうとしているのか
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