Gatsby-29
このサイトは、英語で書かれた物語を一作品、最初から最後まで少しずつ読んでみようという試みです。
取り上げる作品は『The Great Gatsby』です。100年近く前に米国で出版された小説ですが、現代の日本人にも共感したり心を動かされるところが多々あると思います。
ぜひ一緒に、英語の原書を読んでみませんか。
(なお、このコンテンツはその著作者の解釈に基づくものであり、必ずしも正しいとは限らないことをご承知おきください。)
前回まで……デイジーとトムの夫妻宅を辞し、一人になった「自分」が感じたところをまず吐露し、続けて白亜の大豪邸が並んでいるらしい東島を離れ、西島に戻る道中に見えた光景――酒場のネオンサイン?やガソリンスタンドの明かり?――について説明し、そして西島の「自分」の家がどんな所にあるのか、夜に耳に入ってくる音を通して説明していたようでした……ど田舎?かと思うほど、とにかく自然豊かな所のようで……そんな「自分」には居心地の良さそうな環境にある家の庭でくつろいでいると、隣邸から出てきたらしい?人の姿が……さて、いよいよギャッツビーの登場でしょうか?……みていきましょう。
原文はOne More Libraryの『The Great Gatsby』を使用します。
第29回の範囲は19ページ10行目から20ページ9行目まで(Something in his leisurely 〜から、through the powdery air. まで)をみていきます。
まず、今回の考えるヒントを上げます。
- 20ページ7-9行目 and, finally, with a transcendent effort, of men who move dimly and already crumbling through the powdery air. とはどういうことを言っているのか
なお、特に断っていなければ、基本的に次に上げる辞書の訳語や定義・意味に基づいて説明します。
主に使用する辞書
『リーダーズ英和中辞典(第2版)』(野村恵造)(研究社 2017)
『Pocket Oxford English Dictionary (Eleventh Edition)』(Maurice Waite) (Oxford University Press 2013)
『岩波国語辞典(第七版新版)』(西尾実 岩淵悦太郎 水谷静夫)(岩波書店 2017)
それでは今回の範囲をみていきましょう。
① Something in his leisurely movements and the secure position of his feet upon the lawn suggested that it was Mr. Gatsby himself, come out to determine what share was his of our local heavens.
「何かが……隣りの邸宅の庭に現れたその人物のゆったりした動きにある何かが……そうしたその人物のゆったりした動きにある何かに加えて、安定した状態にある何かが……その人物の両足の……どこにあるかというと、芝生の上にある……そうしたその人物のゆったりした動きにある何かに加えて、その人物の芝生の上にある両足の安定した状態にある何かが、あることを示していた……それは何を示していたかというと、その人物がギャッツビー氏本人だということで……(邸宅の中から)庭に出てきていた……決定するために……どの分け前が、その人物の所有分であるかを……その人物と「自分」が今いる場所の頭上に広がる天空のうち……」
Something は、漠然と言葉で表現できないものを表しているのではないでしょうか? なお、Something in his leisurely movements and (something in) the secure position of his feet upon the lawn と解釈できるように思われます。(が、Something in his leisurely movements and the secure position of his feet upon the lawn という解釈もできるように思われます……どちらの解釈にしても、そうした動きや状態が、ギャッツビー氏本人であることを示していた、と言っていることには変わりないように思われます。)
his は、前回の最後に隣りの邸宅の庭に現れた人物 a figure(19ページ7-9行目)を指しているのではないでしょうか? 次の his も同様ではないでしょうか?
that は、「これから文が続く」ことを示し、suggested の内容を説明していると思われます。
it は、これも前回の最後に隣りの邸宅の庭に現れた人物 a figure(19ページ7-9行目)を指しているのではないでしょうか?
himself は、直前の Mr. Gatsby を指していると思われます。
come out の前には、who が省略されているのではないでしょうか? who が入らないことで、説明臭さがなくなり、目の前の情景を生き生きと感じさせる効果が出ているのではないでしょうか?
what は、「どの」「どれだけの」という意味合いで share を説明しているのではないでしょうか?
his は、Mr. Gatsby himself を指しているのではないでしょうか?
our は、今いる「自分」とMr. Gatsby の二人を指しているのではないでしょうか?
前回の最後に、隣りの邸宅の庭に人の姿が現れていました……その人物について、ここでは説明しているようです……その人物はゆったりした動きだったようです……加えて、芝生の上にあった両足が安定した状態に見えたようです……そうした動きや立っている姿から感じられる何かがあったのではないでしょうか?……その何かを感じた「自分」は、その人物こそギャッツビー氏本人だ、と思ったようです……第7回(7ページ14-19行目)で説明のあった、いかにも大邸宅の主といった趣き?雰囲気?だったのでしょうか……その人物は、おそらくその人物の邸宅である敷地と「自分」の家のある場所の上空に広がる天空のうち、どの分け前がその人物の所有分になるのかを(まるで)決定するために庭に出てきたように見えた、と言っているようです……こっからここまでが俺の所有分だな、と思いながら天空を見上げている?ように見えたのでしょうか……空まで手に入れる?……大邸宅の広大な敷地の範囲に応じた空の部分?……この空は俺のもの?……「自分」の目にはそのように見えたようです……とうとう、本当にギャッツビーが登場した?のでしょうか……。
② I decided to call to him. Miss Baker had mentioned him at dinner, and that would do for an introduction.
「「自分」は(心を)決めた……呼びかけることに……ギャッツビー氏だろうと思われるその人物に……ベイカー嬢が話に出した……ギャッツビー氏(の名前)を……夕食の席で……なおかつ、そうやってベイカー嬢がギャッツビー氏の名前を話に出したことが、間に合うだろうと……名乗り出る目的に……」
him は、①のMr. Gatsby himself、つまり、前回の最後に隣りの邸宅の庭に現れた人物 a figure(19ページ7-9行目)を指しているのではないでしょうか?
次の him は、第15回(11ページ末尾)に出てきた Gatsby を指すのではないでしょうか?(同時に①の Mr. Gatsby himself も指すのではないでしょうか?)
that は、Miss Baker had mentioned him at dinner を指すのではないでしょうか?
前回の最後に隣りの邸宅の庭に現れた人物の様子を①で観察して、どうやらこの人がギャッツビー氏じゃないかと判断した「自分」が、②でそのギャッツビー氏らしき人に呼びかけてみようと心を決めたようです……いきなり本人に話しかけるので、礼儀正しい「自分」には適切な口実?が必要だと考えたようで、それには(その晩の)夕食のときにベイカー嬢がギャッツビー氏の名前を出したことを持ち出せばいいだろうと、その話をして名乗り出ようと思ったようです……いくら隣りの邸宅とはいえ、いきなり話しかけるのは勇気がいるし、気まずいし、ずうずうしいとか変な人だとか思われるのも嫌だし、できるだけスマートに?初めてのあいさつを済ませたい?とか思ったのかもしれません……。
③ But I didn’t call to him, for he gave a sudden intimation that he was content to be alone — he stretched out his arms toward the dark water in a curious way, and, far as I was from him, I could have sworn he was trembling.
「「自分」がギャッツビー氏らしき人に呼びかけてみようと心を決めたのだから、普通に考えたら、そのギャッツビー氏らしき人に呼びかけたと思うところだけれど、実際には違って、「自分」はそのギャッツビー氏らしき人に呼びかけなかった……どうしてかというと、そのギャッツビー氏らしき人が出したものがあって……それは、突然の暗示で……具体的には、そのギャッツビー氏らしき人が満足していたことで……何に満足していたかというと、一人でいることで――そのギャッツビー氏らしき人は、思いっきり伸ばした……そのギャッツビー氏らしき人の両腕を……ある方向に向かって……それは暗い色の水(海)の方向で……その様子は奇妙な具合だった……そうやってそのギャッツビー氏らしき人が両腕を奇妙な具合に暗い色の水の方に向かって思いっきり伸ばしたことに加えて、本当に遠かったのだけれど……「自分」のいたところは……そのギャッツビー氏らしき人のいたところからは……「自分」はやろうと思えばできた(し今でもできる)ほどだったことがあって……それは、誓いを立てて言うことで……何を言うかというと、そのギャッツビー氏らしき人が身震いしていたことだ……」
him は、①のMr. Gatsby himself 、つまり、前回の最後に隣りの邸宅の庭に現れた人物 a figure(19ページ7-9行目)を指しているのではないでしょうか? 他の he も him もすべて同様ではないでしょうか?
that は、「これから文が続く」ことを示し、intimation の内容を表しているのではないでしょうか?
far は、本来 I was の後に来るはずのものが、far を強調するために前に出してあるのではないでしょうか?
②で「自分」は、きっとギャッツビー氏だ、と判断した人物に呼びかけようと心に決めたようでした……ところが、実際には呼びかけなかったようです……どうしてでしょうか?……それは、ギャッツビー氏らしき人が何か突然示したらしいもの?こと?があったようです……ギャッツビー氏らしき人が一人でいる状態に満足していることのようです……要は、どうもギャッツビー氏らしき人が、「自分」がよし、呼びかけようとしたそのときに、突然、一人でいるのがいいという空気みたいなもの?を出したのではないでしょうか?……少なくとも、「自分」にはそう思えた、そういう空気が感じられたのではないでしょうか?……さらに続けて、どうして「自分」はそういう空気を感じたのか、その根拠を説明しているようです……そのギャッツビー氏らしき人が見せた体の動きが、一人でいるときでなければしないようなものだったのではないでしょうか?……誰にも見られていないと思っているからこそ、安心して?油断して?本心をさらけ出すような動きをしてみせた?のではないでしょうか……少なくとも、「自分」の目にはそういう姿に映ったのではないでしょうか?……そんな奇妙な動きに加えて、まだ他にも根拠があったようです……まず、「自分」のいたところと、そのギャッツビー氏らしき人がいたところの距離が本当に遠かったのだけど、と説明を加えた上で、それほど遠い距離なのに、普通ならわからない、見分けがつかない距離なのに、それなのに、そんなにも遠いにもかかわらず、そのギャッツビー氏らしき人が身震いしていたのが見えたのだと……いや、それは嘘じゃない、本当だ、誓ってもいいと……それくらい激しくそのギャッツビー氏らしき人が身震いしていたのだと……その「自分」が見た姿・様子は勘違いや見間違えじゃない、誓って本当のことだと……そう主張しているようです……「自分」が帰路についたのは少なくとも午後十時をまわっていたと思われますから(第25回17ページ11行目を参照)、「自分」が家に戻って庭に座り込んでくつろいでいたときはもう、夜中と言ってもいい時間じゃないでしょうか?……そういう時間であれば、誰でもプライベートモード?人目を気にせずのびのびと自由に好きなように過ごしても不思議はないかもしれません……だから、「自分」に見られているなど思いもせず、そのギャッツビー氏らしき人は心の赴くままに過ごしていたのかもしれません……そんな完全にプライベートモードでくつろいでいる?らしいところを邪魔するのは遠慮した?ということではないでしょうか……だから「自分」は呼びかけなかった……この人物が本当にがギャッツビーなら、いきなりギャッツビーの内面をさらけ出した姿から、読者の目に見せたことにならないでしょうか?…… 空のこの部分が俺のもの……両腕を暗い海の方へと思いっきり伸ばした奇妙な格好……激しく体を身震いさせていた様子……この三つの要素を、ギャッツビーを表すものとして、作者は読者にまず示しているようです……この三要素=ギャッツビーの本当の内面を知る三つのヒント、なのかもしれません……なんだか、読者に探偵にでもなりきって、ギャッツビーの謎を解かせようとでもしている?かのように思われませんか?……。
④ Involuntarily I glanced seaward — and distinguished nothing except a single green light, minute and far away, that might have been the end of a dock.
「無意識のうちに「自分」はちらっと目をやった……海の方向に――そうやって無意識のうちに海の方向にちらっと目をやった後、識別したものは何もなかった……ただ例外は、たった一つの青色の光で……その光は微小ではるか遠くに離れていた……その光は、あるものであったのかもしれなかった……それは、船着場の突端だ……」
green light は、日本でいえば"青信号"の色のイメージが近いのではないでしょうか? なお、英語の green は、"未熟な"とか"若さ" “元気" “活力" それに"嫉妬"というニュアンスも表すようです。
that は、a single green light を指すのではないでしょうか?
③でギャッツビー氏らしき人が海の方へと両腕を思いっきり伸ばした格好をしていたので、それにつられて「自分」も海の方へと目をやったようです……そうやって、暗い海の方へと目をやったのだけど、当然暗くて何も見えない……ただ見えたのは、たった一つの青色の光だけだったようです……その光にしても、ごくごく小さいし、ものすごく離れているし、あれ?もしかしたらそれって、船着場の突端を示す光なのかな?……そんなことを「自分」は思ったようです……③で「自分」が見たギャッツビー氏らしき人は、そんな奇妙な格好をしただけでなく、同時に身震いしていたようですから、「自分」にしてみれば、海の方に何かあるのだろうか?と思っても不思議はないのではないでしょうか……だから「自分」も海の方を見てみた……だけど、船着場の光だろうか?とおぼしきものしか見えない……どうして両腕を伸ばしていたのだろうか?どうして身震いしていたのだろうか?あの光しか見えないけどなあ……そんなことを思ったかどうかはわかりませんが、「自分」の目を通して読者も知ることになった、この光が、ギャッツビーという人物には、もしかしたら重要?大切?なものなのかもしれません……。
⑤ When I looked once more for Gatsby he had vanished, and I was alone again in the unquiet darkness.
「あることをしたときに……「自分」が目を向けたときに……さっきギャッツビー氏らしき人を観察していたときと同じようにもう一度……ギャッツビーの(いたはずの)方向に……ギャッツビー(氏らしき人)は、消えていた……ギャッツビー(氏らしき人)が消えた後、「自分」は一人になった……先ほどと同じようにもう一度……いろんな音が耳に入ってくる暗がりの中に」
he は、Gatsby を指しているのではないでしょうか?
the unquiet darkness は、前回(19ページ2-3行目に)出てきた a loud, bright night と同じものを指すのではないでしょうか?
④で海の方を見て何があるのか確かめた「自分」は、別にこれといってないなと思って?また目線をギャッツビー氏らしき人の方に戻したのではないでしょうか?……そしたら、もういなかった……ギャッツビーは消えていた……ところで、これまでMr. と敬称をつけて呼んでいたものが、ここから敬称をつけずに、いわば呼び捨てに変わっているようです……「自分」のギャッツビーに対する意識が変わった?ということを示している?のでしょうか?……①③で「自分」が観察したギャッツビー氏らしき人の様子から、「自分」はいったいギャッツビーに対してどんな印象を持ったのでしょうか?……これがいわば「自分」にとっては初対面なわけですが、その第一印象は?……ただ、顔とかは見えなかったようですね……まあ、「自分」が一方的にギャッツビーの、いわば人には見せない内面を、秘めたものを、(そんなつまりはまったくなかったけれど成り行きで)盗み見た?(またもや)成り行きで知ってしまった?……そういう見方もできるでしょうか……ごくごく近くにいると、知ろうとしなくても知ってしまう……そんなものなのかもしれません……結局ギャッツビーは……登場したようなしてないような……作者はとにかく引っぱりますねえ……もったいつけますねえ……でもまあ、ギャッツビーには秘めた一面があるということを頭においた上で、続きを読み進めるしかないでしょうか……。
さて、これで Chapter 1 が終了です。続いて、Chapter 2 に入ります。
⑥ About half way between West Egg and New York the motor road hastily joins the railroad and runs beside it for a quarter of a mile, so as to shrink away from a certain desolate area of land.
「およそ半分の道程……どこの間かというと、西島とニューヨーク(都市圏)の間で……車道が慌ただしく交わる……線路に……そうやって車道が線路に交わった後、続いてのびている……どこのそばをかというと、その線路のそばを……その距離は、一マイルの四分の一で(約四百メートル)……そんなふうに車道が慌ただしく線路に交わり、続いてその線路のそばにのびているのは何のためかというと、縮こまって離れるためで……何から離れるかというと、とある荒涼たる区域の土地だ……」
it は the railroad を指しているのではないでしょうか?
certain は、どこだか、何だかはっきりしているのだけれど、あえて言葉にしない、というニュアンスで使われているのではないでしょうか? ここの場合は、直後にその説明がありますが、まあもったいつけているというか、あえて言葉にしないことで触れてはならないような、触れにくいようなニュアンスを醸し出している?でしょうか……もしかしたら、イニシャルトークのイメージが近いかも?しれません……大っぴらに名前を出すのは差し障りがあるような気が引けるような……でも話のネタにしたい……みたいな?……。
desolate は、住む人がいないとか人気がないという意味もあるようです。
Chapter 1 とはがらっと場面が変わっているようです……まず、西島からニューヨーク(都市圏)に向かう中間くらいの位置で、たぶんそれまで離れていた車道が突然?線路と交わる箇所があるようです……で、そうやって交わった後、約四百メートル線路のそばを車道がのびているようです……どうしてそんなふうになっているのか――とある荒涼たる区域の土地を身を縮めて避けるためだと……要は、まるで人にたとえたら、身を縮めて避けるようにして、車道がよけている区域があると言っているようです……その区域は荒涼とした所のようです……車道ですら身を縮めてまで避けるような区域とは、いったいどんなところなのでしょうか?どんなふうに荒涼としているのでしょうか?……。
⑦ This is a valley of ashes — a fantastic farm where ashes grow like wheat into ridges and hills and grotesque gardens; where ashes take the forms of houses and chimneys and rising smoke and, finally, with a transcendent effort, of men who move dimly and already crumbling through the powdery air.
「そのとある荒涼たる区域の土地は、谷である……灰の――風変わりな農場(みたいなもの)で……その風変わりな農場(みたいなところ)では、灰が育つ……まるで小麦のように……そうやって小麦が育つとあるものに変わるのだけど……それはまずこんもりと土が盛り上がって積もったような状態になり、それから次にもっと高く土が盛られて高く山積みされたような状態になり、それからさらに進むと奇怪な庭園・畑がいくつもできたような状態になる……その風変わりな農場(みたいなところ)では、灰が取る形があるのだけど……それは、家屋や煙突や上にのぼっていく煙の形で……そのような家屋や煙突や上にのぼっていく煙の形を取った後に、最後に……ある手段で……それは何かというと、通常の経験の範囲を超えた宇宙や人間の存在を越えた超越的な努力・骨折り・奮闘で……(灰が)人の形を取る……その(灰の)人は、動く……ぼんやりとかすかにどことなく……その後、早くも、ぼろぼろにくだける……あるものの間を……それは粉だらけの空気の間だ……」
This は、⑥に出てきた(直前の) a certain desolate area of land を指すのではないでしょうか?
where は、直前の a fantastic farm を指すのではないでしょうか? 次の where も同様ではないでしょうか?
今回の考えるヒントに上げた箇所が出てきました。
of men の前には、ashes take the forms が省略されているのではないでしょうか?
who は、直前の men を指しているのではないでしょうか?
⑥でとある荒涼たる区域の土地があると説明していたようでした……⑦では、まず、その土地が「灰の谷」であると説明しているようです……文字どおり、灰が谷を形成しているような土地のようです……ダッシュ(–)の後に詳しい説明が続いているようです……灰が谷を形成しているような土地は、たとえて言えば風変わりな農場みたいなところだと……灰が小麦のように育っていると……育ったら、まず少し土が盛り上がったような状態になり、次にもっと高く土が山のように積もった状態になり、それがさらに進むと奇怪な庭園・畑がいくつもできたような状態になると……さらにそれだけではなく、その風変わりな農場みたいなところでは、灰の家に灰の煙突に灰のけむりがのぼっていると……そして最後に――神のお働きでもあるのではないか――まさかありえないとしか思えないことだけれど、灰の人まで出てきて動いていると……ただ、動いているといってもぼんやりとしか見えない?かすかにどことなく動いているように見えるだけ?……そうやって動いた後は、早くもぼろぼろにくだけると……粉だらけの空気の間に……どうやら、何もかも灰だらけの土地のようです……単に灰が谷を形成しているだけじゃなくて、灰が形成した家とか煙突とか煙とか、果ては灰が形成した人間までいるようだと……そう言っているのではないでしょうか?……まあ、灰が山のように集まれば、低い灰の山とか高い灰の山とかもちろんできても不思議はないし、さらに規模が大きくなれば灰の家とか灰の煙突や煙だってあるかもしれない……ただ、灰の人までいくとどうかなあ……まさか、いくらなんでもそこまでは、果たしてありうるだろうか?……普通ならそう思って当然だ……だから、きっと宇宙や人間の存在を越えた超越的な努力・骨折り・奮闘が――神様のお働き?があったにちがいない……それで、灰の人まで出てきて動いたのが見えるようになったのだけど、ただ見えるといっても、あくまでもぼんやりとかすかにどことなくでしかないけどね……で、動いたのが見えたと思ったら早くも、(たぶん灰で)粉だらけの空気の間にぼろぼろにくだけていったように見えたと……そういうことではないでしょうか?……この灰だらけの場所って、いったいなんなんでしょう?……この風変わりな灰の谷を避けたものが車道だと……車だけじゃなくて、当然人も寄り付きもしないような気がしませんか?……Chapter 2 は、この人も車も寄り付きもしないような風変わりな灰の谷から、物語が始まっていくようです……なんだか、Chapter 1 の豪邸だったり、気持ちの良さそうな自然の多い環境だったりとは真逆の、対照的な?場所だと思いませんか?……それに、火葬の習慣のある日本では特に、灰といえば死を連想させますが、英語でも ashes は、the remains of a human body after it has been cremated (人体を焼却したあとに残るもの)を表すようです……ですから、何もかもが灰だらけというのは、強く死を思わせるような、気持ちが良いとはどう考えても言えないような場所を想い起こさせる?ような……そういう場所が、どうやら西島とニューヨーク(都市圏)の中間くらいの位置にあるようです……。
おつかれさまでした。どうでしたか?
結局ギャッツビーは謎に包まれたまま……というより、謎がさらに深まったようにも?思えなくもないような……。そしてギャッツビーの話はまたもやそのまま棚上げで、Chapter 2 は、もしかしたら"死"を暗示する?ような場所からお話が展開していくようです……Chapter 1 で出てきたデイジーにトムにベイカー嬢、それにもちろんギャッツビーがいったいどんなふうに絡んでくるのか、想像もつきませんが、いろんな仕掛けを通じて作者が見せようとしている世界を、作者が伝えようとしているメッセージを、物語の展開を追いながら、ぜひ一緒に確かめてみてください。
さて、今回の考えるヒントに上げたお題 「20ページ7-9行目 and, finally, with a transcendent effort, of men who move dimly and already crumbling through the powdery air. とはどういうことを言っているのか」 ですが……⑦で説明したとおりです。その灰の谷では、人も、西島やニューヨーク(都市圏)とは違って、灰の人…つまり、死んだも同然?だと言っているようにも受け取れる?でしょうか……。
次回はまた、新たな登場人物が現れるようです……ぜひ一緒にみていってください。
第30回の範囲は20ページ9行目から20ページ末尾から4行目まで(Occasionally a line of gray cars 〜から、Tom Buchanan’s mistress.まで)をみていきます。
次回の考えるヒントは……
- 20ページ17-19行目 They look out of no face, but, instead, from a pair of enormous yellow spectacles which pass over a nonexistent nose. とはどういうことを言っているのか
次回もまた、灰の谷の説明が続きます……もう少し具体的にどんなところなのかが分かってくると思います……ぜひまた一緒に読んでみてください。
最後に、物語を読むときに心にとめたいポイントをまとめます。
・どうして作者はその言葉を使用したのか
・それぞれの登場人物に作者はどんな役割を割り当てているのか
・それぞれの登場人物のセリフや物語の展開を通じて作者は何を言おうとしているのか
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なお、今回の範囲の訳文を有料(700円)で掲載いたします。この連載はだいたい250回くらいになる予定なので、毎回訳文を購読いただいた場合には30回で2万円を超え、トータルでは18万円近くになることをご承知おきください。またいかなる場合も返金には応じられません。また購読いただいた訳文にご満足いただけるとは限らないことをあらかじめご承知おきください。なお、問い合わせなどはご遠慮ください。お断りいたします。