Gatsby-21
このサイトは、英語で書かれた物語を一作品、最初から最後まで少しずつ読んでみようという試みです。
取り上げる作品は『The Great Gatsby』です。100年近く前に米国で出版された小説ですが、現代の日本人にも共感したり心を動かされるところが多々あると思います。
ぜひ一緒に、英語の原書を読んでみませんか。
(なお、このコンテンツはその著作者の解釈に基づくものであり、必ずしも正しいとは限らないことをご承知おきください。)
前回まで……四人で夕食の席を囲んでいたらかかってきた電話――これがきっかけで、がらっと話が展開していきました……まずトムがいなくなり、続いてデイジーもいなくなり、そして聞こえてきた二人が言い合っているらしい声……その声をひと言漏らさず聞き取ろうと必死で耳を傾けるベイカー嬢……たぶんベイカー嬢はある程度、トムとデイジーの間に何があったのか、折り合いが悪くなった理由や事情を知っている?のではないでしょうか……それもあって、放っておけない?……よほどデイジーと仲が良いようです……でも見方によっては、トムとデイジーの夫婦喧嘩にベイカー嬢もある意味かんでいる?絡んでしまっている?……で、もしかして、まさか「自分」まで、その夫婦喧嘩に巻き込まれてしまう?んじゃあないでしょうねえ……それこそとんだとばっちりです!……さあ、どうなっていくのか……続きをみていきましょう。
原文はOne More Libraryの『The Great Gatsby』を使用します。
第21回の範囲は14ページ末尾から7行目から15ページ19行目まで("Is something happening?" 〜から、subjects, vanished into air. まで)をみていきます。
まず、今回の考えるヒントを上げます。
- 15ページ18-19行目 the subject of the stables, in fact all subjects, vanished into air とはどういうことを言っているのか
なお、特に断っていなければ、基本的に次に上げる辞書の訳語や定義・意味に基づいて説明します。
主に使用する辞書
『リーダーズ英和中辞典(第2版)』(野村恵造)(研究社 2017)
『Pocket Oxford English Dictionary (Eleventh Edition)』(Maurice Waite) (Oxford University Press 2013)
『岩波国語辞典(第七版新版)』(西尾実 岩淵悦太郎 水谷静夫)(岩波書店 2017)
それでは今回の範囲をみていきましょう。
① “Is something happening?" I inquired innocently.
「『どういう状態なのか?……何かが起きている状態なのか?』と自分は質問した……何くわぬ顔で」
前回の最後にベイカー嬢が、しゃべるなと、何が起きているのか聞きたいからと、「自分」に言ったようでした……で、その言葉を受けて、「自分」は尋ねたようです……何か起きているのかと……前回トムとデイジーが言い合っているらしい声が聞こえる様子が説明されていたようなので、「自分」も何も起きていないとは思っていなかったのではないでしょうか?……ただ、礼儀として、要は聞こえなかった振りをすべきだと、そう考えての言葉?ではないでしょうか?……まあ、実際具体的には何も知らされてはいなかったのでしょうから、正確には何も知らなかったわけですが、トムとデイジー夫妻宅に到着してから夕食をともにするまでの過程で、ある程度は気づいたところだったり、いろいろあるのではないでしょうか?……だけど、良識と良心のかたまり?みたいな「自分」?ですから、久しぶりに再会した知人夫妻の聞くべきではない会話を聞くようなことはしないし、聞こえていたとしても、気づいたことがあったとしても、何も聞こえていないし、何も気づいていないし、すべて知らぬ存ぜぬでとぼけて通すのが礼儀だと、そういう判断に則った行動を取るのではないでしょうか?……だから、ベイカー嬢が何が起きているのか聞きたいからしゃべるなと言ったのに対して、何か起きてるかい?何が起きてるっていうんだい?何も起きてないだろ?何も聞こえないよ、君にも何も聞こえないはずだよ?聞こえてるっていうなら、君のほうがおかしい、間違ってると思うな……みたいな気持ちを込めて、①の言葉を口にしたのではないでしょうか?……つまり、この言葉は、単純に質問した言葉というよりは、ほとんどベイカー嬢の行いをいさめている?のに近いものではないでしょうか?……要は、とぼけたふりして、ベイカー嬢がベランダの向こうにある屋内の部屋でトムとデイジーの間で何が起きているのか聞き取ろうとするのをやめさせようとしていた?のではないでしょうか……。
② “You mean to say you don’t know?" said Miss Baker, honestly surprised. “I thought everybody knew."
「『あなたはそういうつもりか?……じゃあどういうつもりかというと、言うつもりか?……じゃあ何を言うつもりかというと、あなたは知らないと(何が起こっているのかを)……』とベイカー嬢が言った……嘘偽りなく心から本当に驚いた様子だった……『私は思っていた……(今夜の夕食の席に集まった)みんなが知っていると(何が起こっているのかを)』」
You はどちらも、ベイカー嬢が話しかけている相手、つまり「自分」を指すと思われます。
you don’t know の後には、(you don’t know) what[something] is happening が省略されているのではないでしょうか?
I は、ベイカー嬢のセリフですので、Miss Baker を指すと思われます。
①でおそらく「自分」はとぼけたふりしてベイカー嬢に聞き耳を立てるのをやめさせようとして質問したのではないかとみましたが、②でベイカー嬢は、①の「自分」の言葉を文字通りに受けとめて答えているのではないでしょうか?……「自分」が何か起きているのか?と尋ねるから、ということは「自分」は事情を知らないということかと、その点を「自分」に確かめているのではないでしょうか?……まあ、実際「自分」は事情を知っていたわけではありませんが……で、ベイカー嬢はどうやら、トムのあまりの傍若無人ぶりに翻弄されすぎてでもいたのか?、とにかく「自分」のこともまるっきりトムと同類とみなし、完全に敵視していた?のではないでしょうか……ところが「自分」と話しているとどうもそういう調子ではいかないので、もしかして本当に「自分」は何も知らないのかと、①のセリフを受けてそう思うようになったのではないでしょうか?……で、ベイカー嬢の思い込みとはまったく異なる事態に直面し、すっかり驚いたと……そういうことじゃないでしょうか?……で、その思いが最後のセリフ――四人ともみな、要は裏の事情を?全部承知の上で、夕食の席を囲んでいたと思っていたと……ベイカー嬢の思いというか感覚?としては、狸と狐の化かし合い?でもやっている?くらいの気持ちでいたのではないでしょうか……だから、まさか「自分」が純粋に食事をしに来て、食事の席を楽しみ、なんの裏心もなく会話を楽しもうとしていたとは夢にも思っていなかった……ベイカー嬢の方にそんな気がさらさらなかったから……このセリフからも、どうして第17回の前半部分(12ページ末尾から11-1行目)で冷ややかだったのか、その理由がうかがわれるように思われます……①の「自分」の本当の思い?とはずれているように思えますが、でもベイカー嬢はおそらくそこには気づかず、まともに受け答えする展開になったようです……どうして作者はそういう展開を選んだのでしょうか?……。
③ “I don’t."
「『自分は知らない(何が起こっているのかを)』」
I は、「自分」が答えたセリフですから、「自分」を指すと思われます。
(I don’t) know what[something] is happening. が省略されているのではないでしょうか?
②のベイカー嬢の言葉に対して、「自分」は、まあ①ですでにとぼけてしまっていますし、流れ的には、知らないと答える以外には選択肢はないようにも思われますが……とにかく、端的に、知らないと、答えたようです……まあ、実際、事情を知っているかといえば知りませんから……ただ、別に、事情を聞き出そうとして言ったわけではなく、単純にこれ以外に答えようがなかった、というのが本当のところじゃないでしょうか?……。
④ “Why —-" she said hesitantly, “Tom’s got some woman in New York."
「『あら、――』とベイカー嬢が言った……とまどって躊躇した様子で……『トムが得ていた……何をかというと、とある女(一人)を……(その女が)どこにいるかというとニューヨークに……』」
she は②でしゃべっていた Miss Baker を指すと思われます。
②でベイカー嬢はてっきりみんな(裏の事情を?)知ってるものと思っていたのが、③で「自分」が知らないと否定したので、まあ思い込みのせいとはいえそれまでのベイカー嬢の態度?も悪かったな?とかそんな思いも?含めて、③の「自分」の答えが意外だという思いがまずは言葉になって出てしまい、続けて、はたして言ってもいいものかどうかどうやら迷ったようですが、でも結局、とうとう裏の事情を明かしてしまったようです……その、「自分」の知らなかった事情――つまり秘密とは……トムに女がいると、その女はニューヨークにいるのだと……そういうことのようです……どうやら女の具体的な素性などは何もわからないようです……ただ、ニューヨークに住んでいるらしい、それだけは確実な情報?のようです……さて、作者がどうしてベイカー嬢に②のような反応をさせたのかということですが――きっと、この④で、ベイカー嬢に裏の事情を、トムとデイジー夫妻の秘密を、トムとデイジーの折り合いが悪い本当の理由を、「自分」に明かさせるため、しゃべらせるため、だったのではないでしょうか?……こういう夫婦の微妙な秘密を知っている――それほどベイカー嬢はデイジーと親しいし、デイジーに信頼されているし、デイジーにあてにされている?とも言えるかもしれません……しかも、よくある女同士で話を聞くだけの仲にとどまらず、なんとベイカー嬢自らがトムと直接やり合う?ほどに深入り?している?のではないでしょうか……要は、ほとんど姉妹とか家族同然に近い存在?かもしれません……こんなに親しい、しかも頼もしい?頼りがいのある?味方がデイジーには影のように付き従っている?……トムにしてみればおもしろくないでしょうねえ……しかも第14回の様子では、ベイカー嬢がしゃしゃり出て?トムが劣勢に立たされていた?ようにも見えませんでしたか?……ねえ……だから、トムは「自分」を夕食に招いた?という流れになりそう?じゃないですか……それにしても、夫婦当人以外の人間がそこまで絡んでくるなんて、よほどのことじゃないでしょうか?……相当こじれて悪化してなきゃ、ここまでになるでしょうか?……要は、それほどデイジーの辛さ苦しみがひどい、重い、深い、ということではないでしょうか?……デイジーが一人じゃとても背負いきれないから部外者の親しい人、つまりベイカー嬢に助けを求めてしまう……で、デイジーの思いに応えてベイカー嬢が加勢する……それが功を奏して、トムがおもしろくない立場に置かれる……でも、なんといっても"俺様が一番偉い"トムだし、それこそ最強の体?を誇るトムだし、こんな女二人なんぞ男一人で片付けてしまおうじゃないかと、威勢よく頑張ってきた?踏ん張ってきた?……だけど、もしかしたら?一見弱っちそうなベイカー嬢には頭がある?頭が切れる?……で、頭じゃ敵わない?トムがベイカー嬢にやり込められる?……おもしろくない……おもしろくないことばっかりだ……おもしろくないことばっかりじゃないか……なんだよ、気に入らねえな……くそっ、俺様にも味方が、加勢が欲しいぜ……それも、腕っぷしなら俺様一人で十分だけど、頭の切れる味方が、加勢がいる……誰かいねえか……おっ、そういや、最近、近くに来たとか言ってたのがいたぞ……あいつならなんでも俺様の思うがままになる……よし、あいつを呼ぼう、それがいい……で、呼ばれたのが「自分」?だったりしないでしょうか?……これでは、泥沼にハマる一方で、デイジーが救われるなど程遠い話に思えませんか?……デイジーは救われたいだけなのに、トムみたいなのが相手では話にならない?……トムを相手にするかぎり、デイジーの救われる道はない?……トムに矛先を向けるのではなく、トム以外にデイジーの救われる道を求める以外にない?……。
⑤ “Got some woman?" I repeated blankly.
「『得ていた……とある女(一人を)?』と自分は繰り返した……(言葉の意味を)理解していない状態で……」
④でベイカー嬢が明かした秘密を、⑤で「自分」は無意識に?上っ面の言葉だけを機械的に?繰り返したようです……女がいる?と……きっとあまりに思いがけない話というか言葉で、いったいベイカー嬢が何を言っているのか、すぐにはその意味を理解できなかったのではないでしょうか?……トムに女がいる……きっと「自分」は初耳だったのではないでしょうか?……そもそも大学時代から親しかったわけでもないし、第9回(8ページ12-13行目)ではほとんど何も知らない旧知の二人に会いに行くと言っていましたから、トムがそういうことをする男だということすらも、おそらく知らなかったのではないでしょうか?……まさか、ほとんど連絡を取らずにきた人の家に会いに行って、いきなり夕食の席でその主が妻の他に女がいるという話を聞かされるなど、まったく思いもよらなかったのではないでしょうか?……いったいなんの話をしているんだか……そんな話を聞かされるなど、到底考えられない……良識と良心のかたまり?みたいな「自分」には考えられない、ありえない話だったりしないでしょうか?……地元に帰れば良家の子息?みたいな「自分」には、家族や親戚すらも、そういった話とは縁遠かった?可能性も?あったかも?しれません……。
⑥ Miss Baker nodded.
「ベイカー嬢がうなづいた」
⑤で「自分」が無意識に繰り返した言葉……女がいる……その言葉が事実に相違ない、ということを、ベイカー嬢はうなづくことで伝えたのではないでしょうか?……ところで、①からの流れを見ると、「自分」にはトムとデイジー夫妻の秘密など、二人が揉めている原因など、毛頭知る気はないのに、なぜか成り行きで二人の秘密を知ってしまった……その様子がよくわかると思いませんか?……第2回(第1章4ページ第3段落)で、知りたくもないのに人の秘密を知ることになるのにうんざりしているようなことが書かれていましたが、「自分」はあくまでも礼を尽くし、良心と良識に則り振る舞って受け答えしているだけなのに、なぜか気づいたら人の秘密を知ってしまっている……ちょうど、こんな感じでいつも、巻き込まれたくないものに?巻き込まれてしまっていたのではないか?……そんな想像ができませんか?……ベイカー嬢の方にしても、たぶん「自分」に教えたくて教えたとか、教えようと思って教えたとかではなくて、単純になんとなく成り行きで教えてしまった……そんなところじゃないでしょうか?……別に「自分」も巻き込もうと思ったわけではなく、ここまできたら?こんな状況なので?もういいや、教えてしまえと……いうことでしゃべってしまった……そんなところじゃないでしょうか?……案外、秘密が漏れるというか広がるというか、こんなものなのかもしれません……人が集まって関わってしまっていると、そしてその関わる時間が長くなるほど、どうしてもこんなことが起きてしまったりしがち?なのかもしれません……。
⑦ “She might have the decency not to telephone him at dinner time. Don’t you think?"
「『ニューヨークにいるとある女は、ある可能性が考えられる……どんな可能性かというと、ある性質がある可能性が……じゃあどんな性質かというと、節度があるところ……具体的にはどんな節度かというと、電話をかけない節度で……じゃあ誰に電話かけないかというと、トムで……その時間帯は、夕食時で……あなたは思わないか?(ニューヨークにいるとある女は夕食時にトムに電話をかけない節度がある可能性があると)』」
このセリフは、⑥でうなづいたベイカー嬢が続けて言った言葉ではないでしょうか?
She は、④でベイカー嬢が説明した some woman in New York を指すのではないでしょうか?
him は④でベイカー嬢が説明した Tom を指すのではないでしょうか?
you は、ベイカー嬢が話している相手ですから、「自分」を指すのではないでしょうか?
Don’t you think? は後に (Don’t you think) she might have the decency not to telephone him at dinner time が省略されているのではないでしょうか?
ベイカー嬢が⑥でうなづいて、トムに女がいるという事実を「自分」に認識させた上で、⑦で続けて、その女についてベイカー嬢の考え?を説明しているのではないでしょうか?……電話の話が出ているので、おそらく第19回(13ページ末尾から9行目)でかかってきた電話のことを指しているのではないでしょうか?……やはりどうやらトムにかかってきた電話だった?ようです……で、誰がかけてきた電話かというと……ニューヨークにいるとある女に違いないと、ベイカー嬢はにらんでいるようです……で、その電話をかけてきたタイミングが、四人で夕食の席を囲んでいたときのことではあったけれど、どうやら食事自体は済んでいたタイミング?だったのではないでしょうか?……食事の最中に電話をかけてくるようなデリカシーのないことはさすがにしなかったようだと、ベイカー嬢はその女を評している?のではないでしょうか……で、そのベイカー嬢の考えに対して、「自分」に同意を求めているようです……そう思わないかと……この段階では、ベイカー嬢はもう、「自分」を敵視するのはやめているように思われませんか?……まあ、デイジーとベイカー嬢の仲間とまで認めていたかどうかはともかく、少なくともトムの味方とかトム側の人間とか、そういう見方はしなくなっていた?のではないでしょうか?……だからこそ、ベイカー嬢の考えを「自分」に話す気になったし、そのベイカー嬢の考えに同意を求めたのではないでしょうか?……。
⑧ Almost before I had grasped her meaning there was the flutter of a dress and the crunch of leather boots, and Tom and Daisy were back at the table.
「ほとんど何かをしかけたけどできなかったことがあったのだけど、それは自分が理解することで……何を理解するかというと、ベイカー嬢の考えで……そうやってベイカー嬢の考えを自分がほとんど理解しかけたけど理解はしていなかったタイミングで、ある音がしたのだけど……じゃあどんな音かというと、ひるがえる音で……何がひるがえるのかというと、女性の洋服(スカートなど)で……その女性の洋服(スカートなど)がひるがえる音に加えて、他にも何かがきしむ音がして……じゃあ何がきしむのかというと、革のブーツで……そうやって女性の洋服(スカートなど)がひるがえる音に加えて他にも革のブーツがきしむ音がして、それらの音が聞こえてきた後に、トムとデイジーが戻った……(ベランダの)テーブル席に……」
her は⑦でしゃべったベイカー嬢を指すのではないでしょうか?
⑦でベイカー嬢に、トムの女について、ベイカー嬢の考えを聞かされ、同意まで求められた「自分」ですが……⑤でもいったい何の話をしているのか要領を得ず、で、⑧でもまだやっぱり、ベイカー嬢がいったい何の話をしているのか、どうもついていけていないのではないでしょうか?……まあ、第17回(13ページ1-2行目)に出ていたように、けっこうお酒を飲んでいるらしい様子もうかがわれたので、しらふでないのは確かで、もしかしたら頭がよく働いてない?動いてない?可能性も?あるでしょうか……まあ、まったく馴染みのない話をいきなり聞かされても、すぐにはついていけない方が普通のような気もします……ですから、ベイカー嬢が⑦で話したベイカー嬢の考えを理解しようと四苦八苦?努力?していた最中に?どこからか聞こえてきたらしい音があったようです……その音は二つあって、一つは女性の洋服(スカートなど)がひるがえる音だったようで、もう一つは革のブーツがきしむ音だったようです……この二つの音はそれぞれ、きっとデイジーとトムを表しているのではないでしょうか?……そして案の定、その二つの音に続いて、トムとデイジーの二人が姿を表したようです……そして、ベイカー嬢と「自分」が待っていたテーブルに戻ってきたと……前回(14ページ末尾から10行目)、言い合っていたらしい二人の声が同時に聞こえなくなったと説明がありましたので、おそらくそのタイミングで、言い合うのをやめた二人は屋内からまた屋外へと向かい、ベランダのテーブルに戻ろうとしたのではないでしょうか?……ということは、その二人が言い合うのをやめてから、ベランダのテーブルに戻ってくるまでの(おそらく短い)時間で、ベイカー嬢と「自分」は、前回の最後、そして今回の最初に出てきた会話を交わし、「自分」はトムとデイジーの秘密を、二人が揉めている原因を、ベイカー嬢から知らされた……ということにならないでしょうか?……そんな短時間で驚きの真実を知らされても、知らされた方はただただ戸惑うばかりじゃないでしょうか?……頭がこんがらがったりしないでしょうか?……はっ?いったい何の話だか……なんだ?……訳がわからない……勘弁してくれよ……「自分」だったら、そう思った?かもしれません……。
⑨ “It couldn’t be helped!" cried Daisy with tense gaiety.
「『仕方がなかった、どうしようもできなかった!』と大きな声で言った……デイジーが……どんなふうにかというと、緊張した張り詰めた不自然な陽気で快活な様子で……」
It は漠然と何らかの状況を指すのではないでしょうか? どんな状況か?……トムの女の件?……それだけ?……トムとの夫婦仲全般?……。
⑧でトムとデイジーが戻ってきたようです……どうも、⑧で聞こえてきた音からすると、まずデイジーのスカート?がひるがえる音が聞こえて、その次にトムの革のブーツがきしむ音が聞こえたようです……だとすると、なんとなく、デイジーの存在感の方がもしかしたら?目立つ?強い?というか、もしかしたら?デイジーの感情が爆発?している度合いが強い?かもしれない?……いらつき感がデイジーの方が強い?からこそ、デイジーのスカート?がひるがえる音の方が先に耳についた?……デイジーの感情がそのままスカート?のひるがえる音に表れた?……で、テーブルに戻ってきたトムとデイジーのうち、⑨でどうやら先に口を開いたのは、デイジーのよう?ではないでしょうか……で、そのデイジーが口にした言葉というのが、仕方がない、どうしようもない、手の打ちようが、手の施しようがない……そういう趣旨の言葉だったようです……しかも、ただ普通に口にしたのではない……大きな声を上げて言ったようです……その声とか顔の様子?は、緊張したような張り詰めたような不自然な陽気で快活な声や表情?だった……要は、無理に明るく振る舞っている?……お客(様)である「自分」と、一応部外者であるベイカー嬢がいるから?……前回どうやらトムとデイジーは言い合いになっていたようでした……どう考えても夫婦の折り合いが良くなさそうだったし、前回の言い合いの終わり方もどうも穏やかではなさそう……で、戻ってきて第一声が、仕方がない、どうしようもない、手の打ちようが、手の施しようがない……事態が打開する見込みも目処も立たない、絶望的だ……そんな言葉とは裏腹に、声や話し方は無理に明るく陽気にはしゃぐような気配すら?……もうやけくそ?自暴自棄?……泣き言を口にせずにはいられない……でも、同時に人前では毅然と振る舞う自制心も働いている?……もし人前でなかったら、安心しきって心を許せる人の前だったら、本当はデイジーはどうしたかったでしょうか?……いったいどうしたらいいのかわからない、いったいどうしたらいいのか誰か教えてほしい、大声でそう叫んで、人目をはばからず思いっきり泣きたかった?のではないでしょうか?……つらくてたまらない思いを口にせずにはいられないけど、本心をさらけ出すような振る舞いに及ぶわけにはいかない……本音と?建前で?引き裂かれるような思い?……。
⑩ She sat down, glanced searchingly at Miss Baker and then at me, and continued: “I looked outdoors for a minute, and it’s very romantic outdoors.
「デイジーは(椅子に)腰を下ろした……そして目をやった……調べるようにじろじろと見ながら……ベイカー嬢(の顔)を……そして次に自分(の顔)を……それから続けて言った……『私は目線を向けた……屋外に……どれくらいの時間かというと、一分ほどの間……そうやって一分ほど屋外に目線を向けてみたら、その様子がとても現実離れした夢のような光景で……その光景はどこかというと、屋外だ……」
She は⑨で口を開いた Daisy を指すのではないでしょうか?
I は、デイジーのセリフのようなので、デイジーを指すのではないでしょうか?
it は漠然とその場の状況を表すのではないでしょうか?
⑧でテーブルに戻ってきたデイジーが、⑨でとりあえず口を開き、そして⑩でおもむろに?元の席に?腰を下ろしたようです……椅子に腰かけると、まずは、デイジーが屋内にいた間テーブル席に残してきたベイカー嬢と「自分」の様子が気になったのではないでしょうか?……その二人に目をやったようです……それも二人の様子を調べるようにじろじろと見て……で、何を思ったのか?感じたのか?はわかりませんが、とにかくまた口を開いたようです……その言葉が……デイジーは一分ほど屋外に目線を向け、外の様子を見たと……そうしてみたら、デイジーの目に見えたものは、屋外の様子からデイジーの受けた印象は、とても現実離れした夢のような光景だったようです……ところで、デイジーの今の現実って、どんなものでしょうか?……たぶん、デイジーの心の大部分を占めているのは、トムとの不仲……というより、トムに対する不満?でしょうか……トムがこうしてくれさえすれば解決するのだけど……どうしてトムはそんなことをするの、こうしてくれればいいのに……夫とうまくいってない妻の現実とは?……もし本当にトムに女がいるのであれば、そういう夫を持った妻の現実とは?……⑨でも見たように、相当つらいものがあるのではないでしょうか?……では、そんな相当つらい現実に直面している人に見える現実離れした夢のような光景とは?……たとえば、夫婦仲がうまくいっていて夫に何の不満もなく満足している幸せそのものの妻が、夫の浮気?という相当つらい現実に直面している妻に見えた現実離れした夢のような光景を見たとしても、つらい思いに苦しんでいる妻と同じように、その光景を現実離れした夢のような光景だとはたして思うでしょうか?……あまりにつらい思いに悩まされている人には、幸せな人が見ればなんでもない光景ですら、現実離れした夢のような光景だと思うこともあるかもしれない?……たしかに、トムとデイジー夫妻の邸宅はとても瀟洒なお屋敷で、広大な庭も美しいようでした……が、そのお屋敷に住んでいて、美しい庭もいつも目にして見慣れていれば、普通はそれがあたりまえに、つまりいつもの現実になりませんか?……ところが、デイジーは、デイジー自身が住んでいていつも見慣れているはずの屋外の景色を見て、現実離れした夢のような光景を見たと、そう言っているようです……デイジーの現実=トムと不毛な言い合いばかりで先が見えない、解決の糸口すらつかめず絶望している……屋外の光景=現実離れした夢のような光景……屋内にいるデイジーには絶望的な現実しかないけれど、屋外には現実離れした夢のような光景が広がっている……デイジーはどんな思いで屋外の光景を見ていたのでしょうか?……屋内の今の現実から逃れたい?……屋外の現実離れした夢のような世界に出ていきたい?……トムと二人で住む邸宅の中は非情な?現実……トム以外に救いを求めて踏み出していくトムのいない邸宅の外は夢と希望あふれる未来が待っている?……どう思われますか?……。
⑪ There’s a bird on the lawn that I think must be a nightingale come over on the Cunard or White Star Line. He’s singing away —-"
「何かがいるのだけど……それは一羽の鳥で……どこにいるかというと、芝生の上で……その一羽の鳥は……私が思うに……きっとこうに違いないと思うことがあるのだけど……それは、きっとナイチンゲールに違いないと……(その芝生に)来ている……はるばる……あるものに乗って……それは何かというと、キュナード汽船の船か、あるいはホワイトスターラインの船に乗って……その一羽の鳥は(雄で)、さえずっている状態で、去っていった――』」
⑩のセリフの続きです。デイジーが現実離れした夢のような光景を、具体的に説明しているようです。
I は、デイジーのセリフですから、デイジーを指していると思われます。
that は直前の a bird on the lawn を指して言いかえているのではないでしょうか?
a nightingale と come over の間には、本来 that(か which か)があるはずなのが、まあおしゃべりですし、それが抜けているのではないでしょうか?
Cunard というのは、英国と米国東部の間(大西洋)を横断する船を運行する会社のようです。
White Star Line も、同様に英国と米国東部の間(大西洋)を横断する船を運航する会社のようです。
He は a bird on the lawn を指すのではないでしょうか?
⑨でデイジーが言った、屋外に見える現実離れした夢のような光景を、具体的に説明しているセリフのようです……芝生に鳥が一羽いたと……その鳥は、デイジーが思うに、きっとナイチンゲールだろうと……どこから来たのかしら?……ああ、きっと、はるばる大西洋の向こうから、英国からこの米国東部まで渡ってきたんじゃないかしら?……遠すぎるですって?……あら、大丈夫よ、キュナード汽船の船かホワイトスターラインの船に乗ってきてれば問題ないでしょ?……きれいな声でさえずっていたわ……どこかへ行ってしまったけれど……と、そこで言葉を区切った?のか、続きは口にしなかった?ようです……ところで、この物語の時代の作曲家ストラヴィンスキーの作品に『夜鳴きうぐいす』(ナイチンゲール)というオペラの作品があるようです……ナイチンゲールという鳥は繁殖期に雄が夜にきれいな声で鳴くそうです……で、そのオペラの作品はもともと、アンデルセンの童話が原作だそうです……童話のポイント?になるのは?、ナイチンゲールが遠くではなくごく近くにいたこと?、ナイチンゲールの鳴き声はお偉い人たちの耳には入ってこないこと?、ナイチンゲールは見た目じゃない、中身つまり鳴き声が本物だということ?、ナイチンゲールにふさわしい居場所があること?、ナイチンゲールは見返りを求めなかったこと?、偽物と本物を見きわめること?、たとえ裏切られても、五年もの月日が経っていても、ナイチンゲールは必要とされればその気持ちに応えたこと?……デイジーは、屋内から見た屋外の芝生にいた一羽の鳥が、英国から渡ってきたナイチンゲールに違いないと、言っているようです……で、そのナイチンゲールが鳴いている光景を、デイジーは現実離れした夢のような光景だと、そう言っているようです……作者は、どうしてデイジーにこんなことを言わせたのでしょうか?……その意図は?そこにどんな思いが?込められているのでしょうか?……デイジーの夢は、英国からナイチンゲールが渡ってくること?そして繁殖期の雄のようにデイジーに向かって鳴いてくれること?……そういうふうにも解釈できる?かもしれない?……デイジーは言葉を区切ったとき、続きを口にしなかったとき、何を思っていたのでしょうか?……。
⑫ Her voice sang: “It’s romantic, isn’t it, Tom?"
「デイジーの声が歌うように言った……『その様子は、現実離れした夢のような光景で……そのとおりよね、トム』」
Her は⑩⑪でしゃべっていた Daisy を指しているのではないでしょうか?
It も it も、⑩に出てきた it と同じものを指すのではないでしょうか?
⑪で最後に口をつぐんだらしいデイジーが、また口を開いたようです……それも歌うように……⑪の夢のような光景を想っていたら、気持ちが明るくなった?のでしょうか?……夢見る乙女?……で、⑩の最後に口にした言葉を繰り返したようです……夢のようだと……そしてなぜか、そう思わないかと、トムに同意を求めたようです……なんでしょうねえ……複雑な女心なのか……あてつけもあるのか……まあ、屋内でトムとデイジーが二人で話をしていたのだろうと、ベイカー嬢にも「自分」にも推測はついているだろうから、トムとデイジーは屋内で、屋外の様子を見ていただけなのだと、そう言い訳している?そう言ってごまかしている?つもりなのかもしれません……だから、トムに同意を求めたと……トムとデイジーの仲が深刻な危機?にあるからこそ、逆にその現実とはかけ離れた夢のような情景でごまかさずにはいられなかった?……目の前のうんざりするような非情な現実を象徴するトムがそばにいる状態で、屋外の夢のような光景に目を向け未来への希望を見出さずにはいられない?……現実から目を背けて夢でも見てなきゃやってられない、とても正気でなんていられない?……そんな精神状態なのに、それなのに、トムと合わせて目の前の現実に向き合わなきゃいけない……またもや本音と?建前で?引き裂かれるような思い?……。
⑬ “Very romantic," he said, and then miserably to me: “If it’s light enough after dinner, I want to take you down to the stables."
「『とても夢のようだ』とトムが言った……それから今度は、憂鬱な表情を見せて……自分に向かって(言った)……『もし辺りの状況が、明るければ……どの程度かというと、十分に(明るければ)……いつかというと、夕食の後で……俺はやりたいことがある……それは何かというと、連れて行くことだ……お前を……どこにかというと、厩舎に……』」
he は、⑫で呼びかけられた Tom ではないでしょうか?
it は漠然と状況を表すのではないでしょうか?
I は、トムのセリフなので、トムを指すと思われます。
you は、トムが話しかけている相手なので、「自分」を指すのではないでしょうか?
⑫で妻のデイジーに同意を求められて、どうやら夫のトムは口だけは?妻に合わせておいた?ようです……⑩のデイジーの言葉を繰り返す形で応じているようです……ですが……そう言うはしから、憂鬱そうな表情で「自分」に話しかけているようです……何を言ったか……食事を終えて辺りがまだ明るければ、(トムの)厩舎に「自分」を連れて行きたいと……おそらく、前回トムにかかってきたであろう電話に出るためにベランダから屋内へと移動し、そのトムの後を追うようにデイジーもベランダから屋内へと移動し、そして屋内でトムとデイジーは言い合っていたようだった……その原因は?……④でベイカー嬢が「自分」に明かした話――トムに女がいる……その話が本当であれば、もしかしたらそのトムにかかってきた電話というのは、その女がかけてきたもの?という可能性がある?……だからデイジーはいても立ってもいられず?トムの後を追った?……そしておおかた、その女の話で揉めた?……で、デイジーの辛さや苦しみなどトムにはまるで興味などないのでは?……トムにしてみれば、ガミガミ?がたがた?うるさいばっかり?……デイジーの言葉などまるで耳に入ってない?聞いてない?……やれやれもう勘弁してくれよ……で、面倒だからテキトーにあしらって、「自分」呼んでんだし、「自分」と消えよう?みたいな?……うるさい女連中なんかほっといて?……そんなトムの思いが見えてくる?でしょうか……見方によっては、いい気なもん?……少なくとも、デイジーのように苦しんでいるようにはとても思えない?……"俺様が一番偉い""自己中(心)"のトムなら、こんな無神経な身勝手も、さもありなん?……ところで、④で衝撃的?な話を聞かされて、頭がついていかない「自分」は、はたして⑨〜⑫のデイジーの言葉と、⑬のトムの言葉を、どんな気持ちで聞いていたでしょうか?……どういう目で、トムを見ていたでしょうか?……まあ、「自分」も含めて、トムは誰も、他の人が何をどう思おうが、まるでお構いなし、トムの思いどおりにできれば、トムの思いどおりになりさえすれば、それで満足、後は知らない……そういう類いの人間?のようですが……。
⑭ The telephone rang inside, startlingly, and as Daisy shook her head decisively at Tom the subject of the stables, in fact all subjects, vanished into air.
「(屋内のさっきも鳴ったと思われる)電話が鳴った……屋内で……その音はベランダにいた四人がはっとして驚くような音だった……それからあることがあったとき……それはどんなことかというと、デイジーが横に振って動かしたことで……何を横に振って動かしたかというと、デイジーの頭で……その様子は、もうこれでおしまいだ、と言わんばかりで……じゃあ誰に向かってもうこれでおしまいだと言わんばかりに頭を横に振って動かしたかというと、トムに向かってだった……そうやってデイジーがトムに向かってもうこれでおしまいだと言わんばかりに頭を横に振って動かしたときに、その瞬間に、ある話題が……何の話題かというと、厩舎の話題が……いやそれどころか実際には、何もかもすべての話題が……消えた……(無色透明の)空気の中に(つまり見えなくなった)……」
her は Daisy を指します。
今回の考えるヒントに上げた箇所が出てきました。the subject of the stables というのは、⑬でトムが「自分」に話しかけたときに触れた the stables を指しているのではないでしょうか? ⑭でまた電話の音が聞こえる前は、厩舎に連れて行くとか言ってたわけですが、またトラブルの元になる電話がかかってきて、それどころじゃなくなったから、厩舎の話は消えた――それどころか、厩舎の話だけじゃなくて、どんな話もできなくなった、と言っているのではないでしょうか?……そんな空気じゃなくなった……その様子を、そうした話題が目に見えない無色透明の空気の中に消えてなくなってしまった(ようだ)という例えを使って表現しているのではないでしょうか?……本当なら夕食の席を囲んで、お客(様)を招いての席ですから、おそらくそれなりにご馳走が?用意されていたのではないでしょうか?……で、普通であれば、そうした美味しいご馳走を堪能しながら、いろいろ楽しい話題に興じるのではないでしょうか?……そして、この四人で囲んだ席でも、やっぱり同じようにそうなるはずだったのではないでしょうか?……ところが邪魔が入った……で、たった一回?の呼び出し音で、ご馳走を美味しくいただき、おしゃべりを楽しむ雰囲気は一気に消し飛んだ?のではないでしょうか……どんな話題もすべて消えたということは、しゃべらなくなったということではないでしょうか?……しゃべらなくなったということは、みんなが無言になったということ?で……その場が静まり返った?ような状態?……誰も口を開かず、冷え冷えとした空気?……怖いですねえ……。
前回、おそらくトムの女のことで?言い合っていたトムとデイジーが、ひと区切りつけて?今回⑧でやっと?戻ってきたようでした……で、⑫と⑬のやりとりにより、曲がりなりにも?それなりに何もなかったような風を装い?収まったような体裁を取って?ひとまず落ち着いた?……と思ったところへ、まるで寝た子を起こすように?またもや電話が鳴ったようです……おそらくトムの女がまたかけてきた?……のかどうかわかりませんが、デイジーはおそらく、またかと…思ったのではないでしょうか?……で、もうこれ以上無理?耐えられない?我慢できない?おしまい?堪忍袋の緒が切れた?……ということで、デイジーのそんな思いが態度に、仕草に表れ、それでその場の空気が決まってしまった?……とてもじゃないけど、⑬でトムが「自分」に持ちかけた厩舎に行くなど考えられない?ありえない?空気……それどころか、そもそも話をするような空気じゃない?というか、話ができるような空気ではない?……要は、デイジーが完全にきれてしまった?……怒りもあらわに何か言いたてたり責め立てたりするならまだしも?何より怖い無言?……怒ってるはずなのに、何も言わなくなったらおしまい?限界超えた?取り付く島もない?……修羅場と言っていいんじゃないでしょうか?……ろくに知りもしない久しぶりにあった知人夫婦の修羅場にいきなり立ち会う「自分」……招いた主は単に都合よく利用しようと呼んだだけで、招かれざる客として冷遇を受け、知りたくもない秘密を知らされ、立ち会いたくもない修羅場に立ち会わされ、なんなんでしょう、いったい「自分」……踏んだり蹴ったりじゃないですか?……それもこれもみーんな、トムのせい?みたいに思えませんか?……こういうやからはほんっとに、厄介ですねえ……トラブルメーカー?でしょうか……"俺様が一番偉い"から"自己中(心)"になり、周りや他の人の思いなどお構いなし…となるのでしょうか?……。
おつかれさまでした。今回は長かったでしょうか?
とうとうトムとデイジーの不仲の原因が明かされました……なるほどと……夫の浮気に妻がひたすら耐える、という状態だとしたら、それはストレスがたまって当然?……なんだかトムは相当性質が悪そうですねえ……浮気をとがめられても気にしてない?のでしょうか……それじゃあ、デイジーがトム以外に救いを求めたくなっても当然という気がしませんか?……夫が妻以外の女と別れようとしないなら、妻の方は夫以外の男に救いを求めるようになっても不思議ではない?ごく自然?……我慢の限界を越えてしまうと、そういう選択をしてしまうかもしれない?のかもしれません……それにしても、デイジーは相当煮詰まってる?でしょうか?……トムはどうもなにか高をくくっているような印象を受けますが、いいんですかねえ、それで……あんまりデイジーをなめてると、あれでも痛い目に遭ったり?しませんかねえ……大丈夫でしょうか?……。
さて、今回の考えるヒントに上げたお題 「15ページ18-19行目 the subject of the stables, in fact all subjects, vanished into air とはどういうことを言っているのか」 ですが……⑭で説明したとおりです。話題というものはもともと目に見えないものですが、その目に見えないものをまるで目に見えるもののように捉えて、ありありとした生き生きとしたようなイメージを湧かせた上で、空気に消えて見えなくなったと、例えているのではないでしょうか?……冷ややかな微妙な空気が流れてはいたけれども、それでもそれなりにお客(様)を迎えての夕食の席という体裁?というか雰囲気?が一応あったことを、いろんな話が取り上げられてそこから会話が展開していきそうな気配を、話題を目に見えるもののように捉えることで表現しているのではないでしょうか?……そしてそうした気配が完全にすっかりまったく消えてしまったことを、空気に消えて見えなくなったという表現で表しているのではないでしょうか?……。と同時に、⑨〜⑫でデイジーが今にも、このつらい現実から逃げてしまいたいと、そこまで追い詰められているような気配が?感じられていた?ようでしたが、⑫でトムに同意を求めたデイジーは、もしかしたら……私、あなたに見切りをつけて、他の男と本気で考えようかしら…ねえ、いいかしら、それでも……そう問いかけていた?のかもしれない?……で、トムはデイジーのそこまで深刻に思い詰めているデイジーの思いにまったく気づかず、⑬で適当に……はいはい、そのとおり……ぐらいのいいかげんな返事をして軽くあしらって片付けて済ましてしまっていますけど、⑭の電話のベルがなった瞬間に、もしかしたらデイジーの気持ちは、心は、決まった?固まった?……もう嫌だ、我慢できない――トムに見切りをつける覚悟を決めた?……もう何も話し合う余地はないと……そうした状況も、この the subject of the stables, in fact all subjects, vanished into air という表現で、比喩的に表されている?でしょうか……つまり、この夕食の席での会話も完全に消えたけれど、同時にトムとデイジーの夫婦間の話し合いや会話、夫婦仲を修復する意思の疎通を図る可能性も、完全に消えた…ことも暗示している?でしょうか……(まあ、ただ、これまでだって、トムの方はまったくデイジーに取り合っていなかったようですから、どっちにしろトムはこれまでもデイジーと話し合いも会話も意思の疎通も図っていなかったので、トムにしてみれば何も変わっていなくて、これまでどおりの通常運転?平常運転?……だけど、デイジーは違います……デイジーがこれで本気でトムに愛想を尽かしたのなら、大きな大きな変化が?これから起こる?……それも、トムとは比較にならない、人生を賭けた?並々ならぬ覚悟を定めた?変化が……夫は浮気を軽く考えていても、妻は違う……そんなところでしょうか?……)。
それにしても、夫の浮気に悩む妻……どうやらそこからこの物語は展開していくようです……ところで、この物語は100年近く前に、米国で出版されたものですが、内容自体は、現代日本の読者の方々にも、なんの違和感もなく、むしろ身近に感じられるくらい?馴染みのあるテーマだったりしませんか?……時代が変わっても、国が変わっても、一緒?……あるいは、第二次大戦後の日本で急速に西欧化?米国化?が進んだことで、現代日本の状況が、100年近く前の米国の状況に酷似したものに変わってきた?……以前少し触れましたが、この物語の時代は、ちょうど日本のバブル景気の時代に似ていて、拝金主義といってもいいような風潮がはびこっていた?ようです……それもあってか、「自分」までが “(大)金"がらみの仕事(職業)を選んでいたようでした……そういう社会全体が “金の力"がすべてといった空気に染まり、"金の力"を過信し、"金=幸せ"といった安易な価値観がもしかしたら当たり前のごとくに通ってはびこっていたかもしれない?……実際"金の力"には確かに強力なものがあり、だからこそ、大金持ちだったトムは、安易に"俺様が一番偉い"となんの疑問も持たずに思い込めた?のでしょうか……でも、"俺様が一番偉い"はずのトムも、冴えない人生を送っている自覚があり?そこから生まれる不安にさいなまれ?何をどう突破口を開いていったらいいのか分からず?ただ途方に暮れていた?……大金持ってても、"俺様が一番偉く"ても、自らの不安をどう解消したらいいのか、肝心なことがわからないし、心の平安平穏を得られないでいる?……おかしいなあ…アメフト誰よりも強いし、腕力じゃ誰にも負けないし、金だっていくらでもある…大邸宅も、美人で魅力的な妻も、かわいい娘(幼子)もいるし、俺は何もかも手にしている…ついでに言えば、女もいる…申し分ない…これ以上望みようがない…それなのに、なんでだ?…今人生冴えない?…そんなの大したことじゃない…そもそもずっと若くして頂点極めたからな…じゃあ、なんでだ?…なんだこの気持ちは?…なにか物足りない…なんでだ?…どうしてそうなる?……トムに足りないものって何でしょう?……どうしたら、トムは満ち足りた気持ちに?なるのでしょうか?……アメフトに戻れば解決する?……そんな単純な話でしょうか?……永遠にアメフトやってれば満ち足りた気持ちになれる?……はたしてそうでしょうか?……もしかしたら、お金持ってても、"俺様が一番偉く"ても、何もかも持ってても、心が満たされていない?……つまり、心が貧しい?……どう思われますか?
次回は、セリフがありません……今回の最後に、誰も口を開かないという展開で終わっていましたから、無理もないといえばそうですが……話ができるような空気ではない修羅場……いったいどう決着がつくのでしょうか?……重苦しい場面展開ですが、ぜひまた一緒にみていってください。
第22回の範囲は15ページ19行目途中から15ページ末尾まで(Among the broken fragments of 〜から、questions about her little girl.まで)をみていきます。
次回の考えるヒントは……
- 15ページ末尾から16-17行目 Miss Baker, who seemed to have mastered a certain hardy scepticism とはどういうことを言っているのか
「自分」は本っ当に!好青年のかたまり⁉……なんていい人!お人好しすぎない?かと心配になるくらいですが……「自分」の無事を祈りつつ? ぜひまた一緒に読んでみてください。
最後に、物語を読むときに心にとめたいポイントをまとめます。
・どうして作者はその言葉を使用したのか
・それぞれの登場人物に作者はどんな役割を割り当てているのか
・それぞれの登場人物のセリフや物語の展開を通じて作者は何を言おうとしているのか
このコンテンツはこのサイトでのみ公開いたします。
このコンテンツの著作権はすべて著作者が保有いたします。
このコンテンツは閲覧以外の利用をすべて禁止いたします。
【お願い】
このコンテンツは無料で閲覧いただけますが、このページ末尾にある"お心付け"ボタンからぜひお心付けをいただけませんでしょうか。100円からお願いしております。ご検討いただけましたらありがたく存じます。
なお、今回の範囲の訳文を有料(700円)で掲載いたします。この連載はだいたい250回くらいになる予定なので、毎回訳文を購読いただいた場合には30回で2万円を超え、トータルでは18万円近くになることをご承知おきください。またいかなる場合も返金には応じられません。また購読いただいた訳文にご満足いただけるとは限らないことをあらかじめご承知おきください。なお、問い合わせなどはご遠慮ください。お断りいたします。